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“スマホ最高音質”を目指す。オンキヨー世界初フルバランス出力スマートフォン

 オンキヨー&パイオニアイノベーションズは、オンキヨーブランドのハイレゾ再生対応スマートフォン「GRANBEAT DP-CMX1」を2月下旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は84,800円前後。オンキヨー製品の取扱店やONKYO DIRECTのほか、MVNO事業者でも販売。26日時点では楽天モバイルが取扱を告知している。

GRANBEAT DP-CMX1

 オンキヨーはDP-X1Aなどのポータブルハイレゾオーディオプレーヤーを販売中だが、GRANBEAT DP-CMX1は、ハイレゾ再生対応のスマートフォンとして展開。スマートフォンでは世界初の、フルバランス駆動回路とバランス出力端子搭載製品として、高音質をアピールする。

2.5mmバランス出力も装備する

 GRANBEATの開発を主導した、オンキヨー&パイオニアイノベーションズ ネットワークサービス事業本部 土田秀章本部長は、「ポータブルオーディオのマニアのなかではバランス対応のプレーヤーやヘッドフォンがブームになっている。これを初めてスマホに搭載。スマートフォン史上最高音質を目指した」と語る。

目指したのはスマホ史上最高音質

 Android 6.0を搭載したSIMロックフリーのスマートフォンで、デュアルSIMスロットを装備。5型/1,080×1,920ドットのフルHD IPS液晶ディスプレイで、タッチ操作が行なえるほか、側面にはロータリーエンコーダ式のボリュームダイヤルや再生操作用のボタンを備えている。

側面に再生、スキップなどの操作ボタン
ボリュームダイヤル

 背面に1,600万画素(ソニーIMX298 Exmor RS)、前面に800万画素のカメラを搭載し、背面カメラはフラッシュ機能付きで、4K動画撮影にも対応する。内蔵ストレージは128GB。microSDカードスロットも装備し、最大256GBのmicroSD(SDXC)が追加可能、384GBまで拡張できる。

背面にカメラなど

 音質にこだわり、スマートフォン初のフルバランス駆動回路と2.5mmの4極バランス出力端子を搭載し、A.C.GとBTLの2種類のバランス出力に対応。DACはESSの「ES9018C2M」、ヘッドフォンアンプは「9601K」で、セット2基をシンメトリーに配置する。

 Androidやオーディオ関連の主要機能や部品は、オーディオプレーヤーの「DP-X1A」と共通のものが多いが、筐体や基板などはスマートフォンとして新規設計。DP-X1Aのノウハウを活かすことで、厚みはDP-X1Aより1mm薄くなっている。

 音質優先のため、Android基板と、オーディオ専用基板を完全セパレートし、基板内でも役割ごとにブロック化することでクリーンな信号伝達を行なう。無線機能から発生するノイズからのシールド力を高める高周波設計技術とオーディオ設計技術を融合させた「シールド技術(特許出願中)」を、オーディオ基板に用いているという。詳細は明らかにできないが、グラウンドの取り方や形状などに独自の工夫が行なわれているとのこと。

オーディオ専用設計
DP-X1Aのノウハウを導入

 ハイレゾ音源は、DSD 11.2MHzまで(PCM変換再生)と最高384kHz/24bitまでのFLAC、WAV、DSD、MQAに対応。MP3やOGG Vorbis、AACの再生も行なえる。S/Nは115dB以上、全高調波歪率は0.01%以下、再生周波数帯域は20Hz~80kHz。

 土田部長によれば、スペック上の公称値は115dB以上だが、試作機での測定では121dB以上とのこと。さらに重要な点として、無線をON/OFF切り替えた際の測定値にほとんど違いがないことなど、オーディオ専用設計の効果を強調した。

無線ON時でもオーディオパフォーマンスへの影響はほとんど無い

 ヘッドフォン出力は2.5mmバランスのほか、3.5mmのシングルエンド(アンバランス)を装備する。最大出力は150mW×2ch(バランス)、75mW×2ch(アンバランス)。対応ヘッドフォンインピーダンスは32~600Ω(バランス)、16~300Ω(アンバランス)。

バランス出力設定
バランス出力は、A.C.GとBTLが選択できる

 DP-X1Aとの音質差については、「回路個性や使用部品は基本的にDP-X1Aと同等で、同じサウンドマイスターが音を決めている。完全に同じとはならないが、オンキヨーの70年の歴史に沿った音」(土田本部長)とコメントしている。

 無垢のアルミニウムブロック材から削り出した、堅牢なアルミ筐体を採用。右側面に再生(Play)、曲送り(FF)/戻し(FR)ボタンを装備するほか、61ステップのロータリーエンコーダ式ボリュームダイヤルを採用。HOLDスイッチも備えている。

基本UIはDP-X1Aと同じだが、ボリューム操作のデザインが一新されている
ボリューム操作

 IEEE 802.11a/b/g/n/ac無線LANやBluetooth Ver.4.1を搭載。Bluetoothは高音質かつ低遅延のaptX HDコーデックをサポートし、Bluetoothでも48kHz/24bitの伝送が可能。CPUはQualcommのMSM8956、RAMは3GB。デュアルSIM(SIM)を備えており、同時待ち受けが可能。通信用と通話用で使い分けできる。楽天モバイルSIMなどのAPN(Access Point Name)に対応しており、SIM1は4G LTE、3G対応、SIM2は3G、2G対応となる。なお、楽天モバイル以外のMVNO事業者とも「話し合いは進めている」とのこと。

aptX-HDにも対応
e-onkyo musicからのダウンロードも

 USB端子はUSB-OTGによるデジタルオーディオ出力に対応。フルレンジのスピーカーも内蔵する。バッテリ容量は3,000mAhで、ハイレゾ再生時間は25時間(96kHz/24it FLAC、アンバランス出力時)、通話時間は22時間。外形寸法は142.3×72×11.9mm、重量は234g。

 e-onkyo musicからのハイレゾ音源直接ダウンロードも可能。240万曲以上のデータベースを持ち、歌詞同期しながら楽曲再生できる「プチリリ」に対応する。また、Windows/Macからは、ドラッグ&ドロップのほか、楽曲管理アプリ「X-DAP Link」で楽曲転送が行なえる。

スマートフォンで最高の音質を。Music Loverのためのスマホ

 オンキヨー&パイオニアイノベーションズの宮城謙二社長は、「'15年にオーディオプレーヤーDP-X1を発売した後に、『SIMが必要、スマートフォンとして発売しよう』という意見が社内から出ていた。なぜ、音質に特化したスマートフォンをやるのか? 我々は'05年からe-onkyo musicを手がけており、オーディオ市場の主流はポータブルになってきている」とスマホ参入の意義を説明。「世界のオーディオ市場は3兆円規模だが、そのうち最大の26%がデジタルオーディオプレーヤー、26%がヘッドフォン/イヤフォン。この2つの領域が伸びている。最も使われている『オーディオプレーヤー』は圧倒的にスマートフォン(72%)だが、音質という点では利便性とのトレードオフになっている。そこで我々はこの音質にこだわったスマートフォンを開発した」とする。

オンキヨー&パイオニアイノベーションズの宮城謙二社長(中央左)とネットワークサービス事業本部 土田秀章本部長(中央右)
GRANBEAT

 新ブランド「GRANDBEAT」は、GRANDとBEAT(鼓動、ビート)を組み合わせた造語で、心揺さぶられる音をイメージ。宮城社長は「ハイレゾだけでなく、AWAなどのストリーミングサービスも格段に音が良くなる。音楽プレーヤの最高傑作として、皆様にお届けしたい」とアピールした。

 ネットワークサービス事業本部の土田秀章本部長は、「'17年3月度で国内SIMフリースマホの市場サイズは300万台に迫るだろう。'18年は400万台、さらに超えていくと見ている。成長中のSIMフリースマホ市場で、Music Loverをターゲットに訴求していく。オンキヨーとしてお客様にできることは“音”。スマートフォンで最高の音質をお楽しみいただきたい」とターゲット市場と製品コンセプトを説明した。

Music Loverがターゲット

 MVNO事業者としてGRANBEATを販売する楽天モバイルからは、楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサーの黒住吉郎氏が登壇した。

楽天モバイル事業 チーフプロダクトオフィサー 黒住氏

 黒住氏は、GRANBEATのコンセプト立案の時期から相談を受けており、2016年のCESでオンキヨーのメンバーと会談。その中で「ハイレゾプレーヤーを発売しているが、これをスマートフォンにしたい」と相談されたという。黒住氏は、「オンキヨーさんにお願いしたのは、音楽を中心にしましょう。そこがブレると意味がないですよね。ということだけです」と語る。

 楽天モバイル以前に、ソニーでグローバルの製品企画を担当していた黒住氏は、「私も音楽には関わって、ソニー・エリクソン時代にはウォークマンケータイなども手掛け、飛躍のきっかけになった。また、Xperia Z2は世界初のハイレゾ対応スマホだった。しかし、ポタアンが必要とか、96kHzまでの対応など、私自身も、中途半端で妥協の部分があった。私がやってきたのは『スマートフォンに何かをつける』ことでした。そういう経験から、オンキヨーさんにお願いしたのは、『音楽を中心にしましょう。音には妥協せずにやりましょう。そうじゃないとターゲットにしているお客様には響きません』ということ」と、オンキヨーへのアドバイス内容を明かし、「このシャープなデザインはスマホとして使うには、ギリギリ。でも音には必要。いまのスマホの重量は170gぐらいで、GRANBEATの234gは“重い”です。でも、音を軸にして考えると、この重さにも意味がある。1週間ほど使って聞いていますが、臨場感、空気感が素晴らしい。こういうスマホが出てくると、スマホで音で勝負するのはなかなか難しくなるかもしれない。ただ、皆が切磋琢磨していいものを作っていくことに意味があるし、そこにユーザーのニーズがあれば、製品やサービスとして届けるのが我々の使命。GRANBEATはオーディオで豊かな生活をもたらす製品。楽天モバイルでも全面的に応援したい」と語った。

 GRANBEATの発売を記念して、1月27日から2月28日まで東京 日本橋茅場町のCAFE SALVADOR BUSINESS SALONに「ONKYO GRANDBEAT CAFE」をオープン。GRANBEATの製品展示やタッチ&トライが行なえるほか、ホットドリンク注文で、ONKYOロゴ入りスリーブがもらえる。

カバーなどのアクセサリもサードパーティから発売予定