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ソニー、'16年度は黒字を維持。PS4は2,000万台、スマホは絞り込みで黒字化

 ソニーは28日、2016年度(2016年4月1日~2017年3月31日)の連結業績を発表した。売上高は、前年同期比6.2%減の7兆6,033億円。営業利益は同1.9%減の2,887億円。税引前利益は同17.4%減の2,516億円。純利益は733億円(前年は1,478億円)で、減益ながら黒字を維持した。

 売上高減少の要因としては、主に為替の影響を挙げている。前年度の為替レートを適用した場合、モバイル・コミュニケーション(MC)分野の大幅な減収があったが、ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野、半導体分野の大幅な増収などで、売上高はほぼ横ばいとなる。

'16年度連結業績

 前年度比55億円減少した営業利益については、MC分野における改善、G&NS分野などにおける増益があったものの、主に映画分野で営業権の減損962百万米ドル(1,121億円)を計上したことによるもの。この減損は、ソニーが映画分野のうち映画製作事業の将来の収益見通しを下方修正した結果、同事業が含まれる営業権の報告単位のプロダクション・アンド・ディストリビューションに属する営業権の全額を減損し、映画分野の営業損失として計上したもの。

 '16年度の営業利益には、今後実施予定の電池事業の譲渡にともなう減損423億円がコンポーネント分野に、外販向けの一部の高機能カメラモジュールの開発/製造中止にともなう長期性資産の減損239億円、2016年の熊本地震に関連する費用154億円(純額)が半導体分野に計上されている。

第4四半期の連結業績

 テレビなどを含む、ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野の売上高は、前年度比10.4%減少し、1兆390億円。減収の理由は主に為替の影響としており、前年度の為替レートを適用した場合は1%の減収となる。

 営業利益は、前年度比79億円増加の585億円。為替の悪影響や、事業の分社化、本社機能再編の一環として負担する本社費用、ブランド/特許権使用によるロイヤリティなどの算出方法変更による費用の増加などがあった。その一方で、主に高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善により、分野全体では増益となった。'16年度の為替の悪影響は134億円。

 テレビの販売台数は1,210万台(前年度は1,220万台)。'17年度の見通しは1,200万台としている。

ホームエンタテインメント&サウンド(HE&S)分野

 PlayStation 4(PS4)などを含むG&NS分野の売上高は、1兆6,498億円で、前年度比6.3%増加。前年度の為替レートを適用した場合は16%の増収となる。為替の影響やPS4のハードウェア価格改定などがあったものの、主にネットワークを通じた販売などPS4ソフトウェアの増収とハードウェアの増収により、分野全体では増収だった。

 営業利益は前年度比469億円増加となる1,356億円。PS4価格改定や、PS3ソフトの減収などがあったものの、PS4ハードウェアのコスト削減や、PS4ソフトウェア増収などによって分野全体では大幅な増益。なお、為替の悪影響は22億円だった。

 PS4の'16年度販売台数は2,000万台。'17年度見通しは1,800万台としている。

ゲーム&ネットワークサービス(G&NS)分野

 デジタルカメラなどIP&S分野は5,796億円で、前年度比15.3%減少。前年度の為替レートを適用した場合は7%の減収となる。為替の影響や熊本地震の影響などによる販売台数減少を要因として挙げている。

 営業利益は前年度比221億円減少の473億円。静止画/動画カメラにおける高付加価値モデルへのシフトによる製品ミックスの改善や費用削減で、販売減などの影響を一部補ったものの、全体では大幅な減益となった。為替の悪影響は265億円。

IP&S分野

 モバイル・コミュニケーション(MC)分野の売上高は7,591億円(前年度比32.7%減)。前年度の為替レートを適用した場合は29%の減収)。欧州/中近東/中南米におけるスマートフォンの販売台数減少や、不採算地域での販売台数を大幅に絞り込んだことなどを理由としている。

 営業損益は、前年度の614億円の損失に対し、102億円の利益に回復。構造改革の効果を含むオペレーション費用削減、販売地域の絞り込みや高付加価値モデルへの集中による収益性の改善、為替の好影響、構造改革費用の減少などなどで改善した。為替の好影響は261億円(為替ヘッジの影響を含む)。

 '16年度のスマートフォン販売台数は1,460万台で、前年度から1,000万台以上減少('15年度は2,490万台)。'17年度は1,650万台を見込んでいる。

MC分野

 半導体分野の売上高は、前年度比 4.6%増加の7,731億円となりました。為替の影響、事業規模を縮小したカメラモジュール事業の大幅な減収、熊本地震の影響による生産の減少があったものの、モバイル機器向けイメージセンサーの販売数量が大幅に増加したことなどを要因としている。外部顧客に対する売上高は、前年度比10.1%増加した。

 営業損益は、前年度の145億円の利益に対し、'16年度は78億円の損失となった。増収の一方で、為替の悪影響、前述の熊本地震に関連する費用の計上、モバイル機器向けの一部イメージセンサーの在庫に関する評価減65億円計上などにより、損益が大幅に悪化した。

半導体分野

 エレクトロニクス6分野の2017年3月末の棚卸資産合計は、前年度末比469億円(7.8%)減少の5,532億円。2016年12月末比では327億円(5.6%)の減少となる。

セグメント別業績

'17年度は営業利益5,000億円へ。ゲームや映画、半導体増収見込む

 映画の売上高は、円高の影響で前年度比3.7%減の9,031億円。米ドルベースでは5%増収で、主にテレビ番組制作及びメディアネットワークが増収となった。テレビ番組制作の増収は、会員制ビデオ・オン・デマンドからのライセンス収入増などによるもの。メディアネットワークは、主に、インド、中南米、米国での広告収入、視聴料収入の増加により増収となった。

 営業損益は前年度の385億円の利益に対し、'16年度は805億円の損失。主に前述の営業権の減損を1,121億円計上したほか、メディアネットワークにおける番組費用、広告宣伝費の増加、映画製作における広告宣伝費増加の影響もあった。

映画分野

 音楽分野は、前年度比4.6%増加の6,477億円。映像メディア・プラットフォームの増収は、日本でのモバイル機器向けゲームアプリケーション「Fate/Grand Order」の好調によるもの。

 音楽制作は、ストリーミング配信の増加により増収となった。'16年度にヒットした音楽作品には、ビヨンセの「レモネード」、ザ・チェインスモーカーズの作品、シーアの「ディス・イズ・アクティング」などがあった。

 営業利益は前年度比107億円減少の758億円。前年度にSMEが既に保有していたThe Orchardの持分51%を公正価値により再評価したことによる利益181億円の計上などによるもの。

音楽分野

 '16年度連結業績の通期見通しは、売上高が8兆円、営業利益5,000億円、当期純利益2,550億円。前年度比で5.2%の増収、営業利益73.2%の増益を見込む。主にG&NS分野、映画分野、半導体分野で増収を見込んでいる。

'17年度連結業績見通し

 連結営業利益は、為替の悪影響などがある一方、半導体分野や映画分野などでの損益改善などにより、大幅な増益を見込む。2017年度の営業利益には、カメラモジュール事業の製造子会社である索尼電子華南有限公司(Sony Electronics Huanan/SEH)の持分の売却益約270億円が半導体分野に計上される見込み。

 熊本地震にかかわる逸失利益などに対する保険金の受取67億円が半導体分野に、26億円がIP&S分野に計上される見込み。

 2017年度の構造改革費用は、グループ全体で約150億円を見込む(2016年度実績は602億円)。

セグメント別見通し