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Noble Audioのユニバーサルイヤフォンがケーブルも刷新して再登場。各モデルのサウンドは?

 米Noble Audioのユニバーサルイヤフォンの輸入総代理店業務が、7月1日より、宮地商会M.I.D.からエミライに移管された。これを機に、エミライは改めてNoble Audioの特徴やラインナップを紹介するメディア向けの説明会を14日に開催。創立者のジョン・モールトン博士が各製品を紹介したほか、従来との製品仕様の変更点も説明した。発売は7月中より順次スタートする予定。なお、カスタムモデルは引き続きWAGNUS.が取り扱う。

Reference familyの最上位「KATANA」

Noble Audioとは

 Noble Audioは、2013年10月にジョン・モールトン博士とブラナン・メイソン氏により、カリフォルニア州サンタバーバラに設立されたメーカー。イヤフォンを専門に手がけており、海外でも多数の賞を受賞するなど、人気を集めている。

 ジョン・モールトン博士は、14歳の時からアメリカの電子部品小売り大手Radio Shackにて、カーステレオの設置業務に携わっていたという。聴覚学の博士号を取得し、その後5~7年の実地研修を経て、聴覚学の講師となった。難聴の診断・治療や、予防、リハビリ、補聴器の調整などを行なう専門家として、さらに蝸牛インプラントの外科助手としても活躍していた。

ジョン・モールトン博士

 2008年当時、彼はタイの補聴器会社に勤めており、会社のラボで作成した幾つかのカスタム・イヤフォンの写真を、アメリカのヘッドフォン関連コミュニティであるHead-fiに投稿。それらが話題となり、“Wizard”という愛称が定着。その後、現在のビジネスパートナーであるブラナン・メイソン氏と出会い、Noble Audioを設立。ブラナン氏はミュージシャンとしての経験もあるという。

 製品にはカスタムとユニバーサルの2つのタイプがあり、カスタムは木材などの天然素材を生かしたものが多いのが特徴。仕上げもアーティスティックなものになっている。

 モールトン博士によれば、彼の父親も聴覚士の資格を持ち、母親は専業主婦だが芸術に興味があり、叔父さんは木を使った工芸をするのが趣味だったという。そうした環境で育ち、学校では補聴器の開発が非常に楽しかったことから、現在のようなイヤフォンビジネスへと傾倒していったという。「Head-fiに投稿し始めた頃は、タイの市場で木のスプーンを買ってきて、それを使ってイヤフォンを作ったりしていました。当時はまだそのようなイヤフォンを作る人がいなかったので、誰かが“Wizard”だと言ってくれて、それが定着した」という。

 ユニバーサルタイプは精密加工によるアルミニウム・ハウジングを採用。カスタムと同様に、手作業での製造しており、仕上げの美しさにも自信があるという。

ユニバーサルのラインナップ

 ユニバーサルタイプには「Reference family」と「Musical family」という2つのラインを用意。Referenceはモニター用途に最適化されたモデルで、フラットな音質傾向だという。

 Musicalは、Noble Audio創立時からのサウンド・シグネチャーを重視したラインで、豊かな音楽性を備えているのが特徴。

日本限定仕様と想定売価

 いずれのモデルもケーブルは着脱可能で、0.78mm規格の2ピン仕様となっている。

 エミライが新たに取り扱うにあたり、このケーブルを変更。従来はオプションとして14,500円で別売していたグレードアップ用のケーブルを、標準付属品に変更した。このケーブルはマルチストランド構造に、特殊コーティング処理済の銀メッキを施した高純度銅導体を採用している。同ケーブルが標準で付属するのは日本限定仕様だという。

 なお、従来のケーブルから銀メッキケーブルに変更すると、よりシャープで高精細、クリアなサウンドに変化する。

エミライが扱うNoble Audioのイヤフォンは、全てこの銀メッキケーブルとなる
右が従来のケーブル
豊富なイヤーピース
ペリカンケースに加え、小型の円形ケースも付属する

 価格は全モデルオープンプライス。想定売価は、48,000円前後~198,000円前後。詳細は下記の各モデル紹介部分に記載する。前述のように、標準でより高価なケーブルが付属するようになっているが、KATANA、KAISER ENCORE、SAGEの3モデルは従来よりも低価格に、それ以外のモデルも、従来モデルに別売ケーブルをプラスした価格よりは低価格になるという。なお、エミライ扱いのバージョンには、従来の黒い標準ケーブルは付属せず、新しい銀メッキケーブルのみとなる。

Reference family

 「KATANA」の想定売価は198,000円前後。バランスド・アーマチュア(BA)ドライバを9基搭載したハイエンドモデル。日本刀の鋭さ、鋼鉄から作られる頑強さ、そして美術的な側面をも兼ね備えた点などに敬意を表し、モールトン博士が命名したモデル。

KATANA

 独自のBAを片側9基搭載し、ワイドレンジ化。「軽やかかつのびやかな空気感と賞賛すべき音像表現、そして完璧な帯域バランスを生み出すことに成功した」という。応答性の高さや、みずみずしい中域、インパクトのあるパワフルな低域なども特徴。BAの詳しい構成は非公開。

 なお、搭載しているBAは、独自開発のカスタムBAで「Nobleドライバー」と名付けられている。BAのベント穴の位置や、音道のノズル位置、インピーダンスなどを、より製品に適したものに指定し、BAを手がけるKnowlesにオーダーしているという。

 カリフォルニアで設計・精密機械加工されたアルミニウム・ハウジングを採用。フェイスプレート部には枯山水にも似た紋様、ボディ部には日本刀の束巻のダイヤモンド柄を模した紋様が刻み込まれている。フェイスプレートカラーはGunmetal。

 名前の通り、サウンドは鋭く切れ込むような中高域が鮮烈。同時に、低音は芳醇で押し出しも強く、パワフルさがある。鋭さと、インパクトを兼ね備えたようなサウンドだ。音場の広さを重視したタイプではない。

KATANA

 「SAGE」の想定売価は71,000円前後。独自開発のカスタムBA「Nobleドライバー」を2基搭載した製品。ベントポートを再設計し、ロー・エンド側の再生周波数を伸長。低域のレスポンスを上昇させた設計になっている。筐体はアルミニウム。フェイスプレートカラーはForest green。

 非常にニュートラルで、強いクセは無い。KATANAよりも音場が広く、モニターライクで音の細かな描写がよくわかるモデルだ。おそらく多くの人が気にいるであろうサウンドで、ソースを選ばない実力の持ち主だ。BA×2基のシンプルな構成だが、それだけにサウンドの繋がりも良く、アラも目立たない。完成度の高いモデルだ。

SAGE
SAGE

 「SAVANNA」の想定売価は59,000円前後。「リニアな特性を持つことでアコースティックな音楽を心に響かせる。多くのアコースティック録音リスニングでも驚くべき音楽体験をもたらす」というモデル。ユニットはBA×4基。筐体はアルミニウム。フェイスプレートカラーはCopper。

 中高域の解像度が高く、描写はややドライ。細かな音を分析的に聴くには適している。高域のエッジがやや強調感がある。

SAVANNA
SAVANNA

Musical family

 「KAISER ENCORE」の想定売価は198,000円前後。フラッグシップモデル「Kaiser 10」の後継モデルとして開発されたもので、「Kaiser 10の優れた音響性能と基本的概念には変更を加えず、Kaiser Encoreではミッドレンジに改良を施しディテールの鮮明な表現力と全帯域に通じたバランスの向上を実現した」という。中域のレスポンスが向上する事で、音場の表現力を高めている。Kaiser 10と同様に、暖色系となめらかな質感を備えつつ、音像定位、音場表現、立体感を「Katanaに近いレベルに引き上げた」とする。

 独自のカスタムBAドライバ「Noble Driver」を、片側10基搭載。筐体はカリフォルニアで設計・製造される精密加工されたアルミニウム・ハウジングを採用。フルハンドメイドによるアッセンブリングとマッチングが行なわれる。フェイスプレートカラーはSteel blue。カラーやネーミングのイメージは、映画「ユージュアル・サスペクツ」のカイザー・ソゼからとったという。

 KATANAと比べると、低域はそれほど強く張り出さず、よりモニターライクで高分解能なサウンドだ。前述した「SAGE」の上位互換のような印象も受ける。張り出しは控えめだが、低域の沈み込みは深く、腰の座った安定感のある描写は流石フラッグシップモデルだ。

KAISER ENCORE
KAISER ENCORE

 「DJANGO」の想定売価は116,000円前後。頭文字の「D」には、“静けさ”という意味が込められており、「全帯域に渡って良質なバランスの音質傾向を保ち、音楽的魅力にあふれた製品」だという。BA×6基で、筐体はアルミニウム。フェイスプレートカラーはViolet。

 ネーミングやカラーは、こちらも映画の「ジャンゴ」からインスパイアされたという。サウンドは音圧が豊かな個性派で、中低域がモリモリと押し寄せてくる。同時に、中高域のクリアさは維持されている。

DJANGO
DJANGO

 「DULCE BASS」の想定売価は82,000円前後。「Noble Audioのラインナップの中でも最もヘヴィーなチューニングを施した」という製品で、「BAドライバー搭載型とは思えないほどの心を揺さぶるダイナミックな重低音を生み出す」という。エレクトロ・ミュージックなど低音域を中心とした音楽にマッチしたモデルとしてラインナップされている。BAは5基搭載。筐体はアルミニウム。フェイスプレートカラーはTurquoise。

 名前からすると、低音がブイブイと主張してくるのかと身構えるが、中低域の張り出しはそれほどでもなく、むしろ前述した「DJANGO」の方がパワフルだ。しかし、最低域の深さと、ズシンと響いてくる迫力は「DULCE BASS」の名に恥じない心地よさ。力強い低域というよりも、芳醇な低域という印象のサウンドだ。

DULCE BASS
DULCE BASS

 「TRIDENT」の想定売価は48,000円前後。低域および高域を拡張させたチューニングの製品。「洗練されたポップなサウンド・キャラクターが特長」という。BA×3基を搭載。アルミニウム・ハウジングを採用、フェイスプレートカラーはParis grey。

 前述した「SAVANNA」の、ドライなサウンドを、より突き詰めたような音だ。中高域のシャープな描写が印象的で、トランジェントも良く、切れ込むようなハイスピードさがある。同時に音圧豊かな低域もズシンと響く。「ドンシャリ」ではなく「ズンズバ」という印象で、ユニークな音だ。

TRIDENT
TRIDENT