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シャープの8KカメラがInterBEEで初披露。説明員も8Kなアストロデザイン
2017年11月15日 19:41
国際放送機器展「Inter BEE 2017」が15日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間は15~17日までで、入場は無料(登録制)。ここでは、8Kビデオカメラ「8C-B60A」を共同で開発し、ブースも共同展開したシャープとアストロデザインの模様を中心にレポートする。
シャープは入口から出口まで8K
シャープブースの中心は、8K/60p撮影に対応したカメラ記録部一体型の8Kビデオカメラ「8C-B60A」。アストロデザインと共同開発し、8Kとともに20数年ぶりにシャープが映像制作用カメラに復活する。価格は880万円。
8K/60p映像の撮影が可能なほか、撮影・収録時の扱いやすさや収録後の編集作業の負荷低減に配慮して設計したという8Kビデオカメラ。1台で8K/60p映像の「撮影」、「収録」、「再生」、「ライン出力」が可能で、撮像素子は、3,300万画素のSuper 35mm相当の大型CMOSイメージセンサー。圧縮方式はGrass Valley HQXで、本体だけで約40分間の連続収録(同梱の2TB SSDパック使用時)を実現する。
8C-B60Aは、シャープの要望をもとに、基本設計はアストロデザインが担当。量産性の評価やコストダウンについてはシャープが主導するなど、両社の協力の元で開発されており、今回の共同ブース展開にもつながっている。シャープ/アストロデザインブースは8K放送を推進するNHKブースの隣ということもあり、両社で8Kを積極アピールしている。
ブースのメインステージでは、和装の女性を「8C-B60A」で8K撮影して、リアルタイムで8Kモニターに出力するというデモを実施。8Kの魅力と、「入り口から出口まで8Kをカバーできるシャープ」をアピールしている。
また、12月発売の70型8Kテレビ「LC-70X500」と、85型の「LV-85001」で、8K映像を紹介。さらに、GrassValleyの「EDIUS」を用いた、8C-B60Aの8K撮影映像のノンリニア編集システムも紹介している。
説明員も8Kなアストロデザインは8KレーザーPJや8K制作環境
アストロデザインは、説明員のユニフォームが「8K」を模したものになっているなど、積極的に8Kをアピール。330型の8Kシアターで新開発の8K/HDR対応プロジェクタ「INSIGHT LASER 8K」の8K映像を紹介している。
アストロデザインと、台湾Delta Electronics、英Digital Projectionの3社が共同で開発した、世界初のDLP 8Kプロジェクタ。光源はレーザーで、明るさは25,000ルーメン。HLG(Hybrid Log Gamma)方式のHDRに対応する。
Digital Projectionのシネマプロジェクタ向け技術をベースに、アストロデザインは主にレーザー光源や映像処理回路などを担当。約2万時間の長寿命と高輝度を実現した。3板式の1.38インチDLPチップを採用し、デバイスの解像度は7,680×4,320ドット(SHV 8K)。プロジェクタの設計上は、デバイスさえ対応すればDCI 4Kアスペクトで8K化した8,192×4,320ドットにも対応できるという。
最大120fpsの入力にも対応。レーザー光源のため、約15秒という高速起動も特徴。
現在はパートナー向けの提供だが、2018年9月は、プラネタリウムやサイネージなど多くの業界に発売開始予定としており、価格は3,300万円。ただし、一部パートナー向けの出荷は開始しており、8K放送のパブリックビューイングが中心となる。
NHK以外への供給例は、WONDER VISION TECHNO LABORATORYによる「8K:VR Ride featureing “Tokyo Victory”」(8K:VRライド)。NHKエンタープライズ、NHKメディアテクノロジー、レコチョク・ラボらが共同で開発し、10月のDCEXPO 2017などで展示された。以前の展示ではJVCのプロジェクタを用いていたが、今回の展示では「INSIGHT LASER 8K」が採用された。
「8K:VRライド」は、東京をテーマに、過去から現在、2020年に向かう様子を時空移動しながら、8Kによる実写とCGを組み合わせた映像を、5.2×2.6×3.4m(幅×奥行き×高さ)のドーム型ワイドスクリーンとモーションライドで体験できるもの。視界を覆うような映像で、ヘッドマウントディスプレイを使わずに“TOKYOバーチャル体験”をVRで実現する。
また、8K放送の開始に向けて、HDや4K信号を8Kにアップコンバートする8Kクロスコンバーターやインターフェイスコンバーターなども展示。また、HQXコーデックを使った、8K映像のリニア編集環境などを紹介している。
8K映像の応用としては、8K映像から4Kや2K映像を切り出すシステムも紹介。例えば野球のグラウンド全体を固定カメラで8Kで撮影しながら、一部を2Kや4Kで切り抜いて利用するというもの。スポーツ放送などでの利用を想定しているという。
また、カメラのレンズなどの解像度特性(Modulation Transfer Function/MTF)を正確に測る「リアルタイムMTF測定装置」も開発している。チャートをカメラで撮影し、その映像からリアルタイムでMTFを測定し、8Kに適したレンズかどうか判断できるという。レンズやカメラの開発現場や、放送局など高解像度映像を扱う映像制作会社の機器導入時などの利用を想定している。