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シャープ、1台で8K/60p撮影できる世界初8Kのカムコーダ。2020年はコンシューマも8K
2017年11月7日 14:20
シャープは、8K/60p撮影に対応したカメラ記録部一体型の業務用8Kビデオカメラ「8C-B60A」を12月より発売する。アストロデザインと共同開発し、価格は880万円。8Kを推進するシャープが映像制作向けのカメラにも参入し、「従来製品とは桁が一つ違う、導入しやすい価格を目指した。8Kエコシステムのさらなる充実に繋げていく(シャープ 執行役員 8Kエコシステム戦略推進室長 西山博一氏)」とした。11月15日から17日まで幕張メッセで開催される「2017年国際放送機器展(Inter BEE 2017)」にも出展する。
8K/60p映像の撮影が可能なほか、撮影・収録時の扱いやすさや収録後の編集作業の負荷低減にも配慮した設計を行なった8Kビデオカメラ。世界初となる、1台で8K/60p映像の「撮影」、「収録」、「再生」、「ライン出力」を実現している。撮像素子は、3,300万画素のSuper 35mm相当の大型CMOSイメージセンサを搭載し、圧縮方式は、CPU負荷の低いGrass Valley HQXを採用。8K(60p)映像の編集作業の効率化と、本体だけ約40分間の連続収録(同梱の2TB SSDパック使用時)を実現する。
シャープとアストロデザインの協力の元に開発された「8C-B60A」だが、シャープの要望を元に、基本設計はアストロデザインが担当。量産性の評価やコストダウンについてはシャープが主導、両社の協力の元で開発されている。製造は中国。シャープのデバイスも多く採用しているが、今後はイメージセンサーなど基幹デバイスの内製化なども検討していくという。
レンズマウントはPLマウント。ガンマカーブはHLG(ダイナミックレンジ 400、600、800、1000、1200、2000%)とLogガンマ。色域はITU-R BT.2020。記録メディアはSSDパックで、付属のMM-210(容量2TB)に40分の収録が可能。ビデオコーデックはGrass Valley HQX(7,680×4,320 4:2:2 10bit)で、8K/60pのベースバンド記録時では約24Gbpsとなる帯域を、6Gbpsにまで圧縮して記録する。
Grass Valley HQXの採用については「帯域を考えると非圧縮は難しい。劣化が少なく、編集での使い勝手がいいコーデックについて、我々の評価では8KにはHQXが優れていた」(アストロデザイン 鈴木茂昭社長)と説明した。
また、映像を収録しながら、8K/60pの非圧縮映像をリアルタイムで出力できるため、ライブ配信にも活用できる。SDI出力は、4K/8K対応のBNC×4と、BNC×1。BNC×4は、4K出力時はクアッドリンク3G-SDI(4:2:2 2SI)、8K出力時はクアッドリンク12G-SDI(4:2:2 2SI)となる。
リアルタイム出力が可能なため、8Kのドキュメンタリーやスポーツ、生放送に対応できる点も特長としている。
アナログオーディオ入力(XLR 3pin)×2や、XLR 5pinのマイク入力、MADIオーディオ入力、TC IN/OUT、ゲンロック、レンズリモート、スピーカー出力、ヘッドフォン出力、ファイル転送用の10GbEなどのインターフェイスも備えている。カメラ部のみの外形寸法は155×312×188mm(幅×奥行き×高さ)、重量は約5kg。
新生シャープは8Kに本気。2020年にはコンシューマ向け8Kカメラ
「8K」と「AIoT」を次世代の成長の核に掲げるシャープが、映像制作の入り口となるカメラにも参入する。
シャープ 取締役 兼 執行役員 8Kエコシステム戦略推進室長の西山博一氏は、テレビなどの表示や8Kチューナ、医療用内視鏡システムなどのシャープの8Kへの取り組みともに、「8Kエコシステム」の構築を目指す姿勢を強調。「新生シャープが、8Kのエコシステムで業務カメラという入口の部分、新しい領域に参入した。導入しやすい価格設定とし、8Kのさらなる充実に繋げていく」と意気込みを語った。
また、8K/60pの撮影だけでなく、収録、再生、ライン出力まで対応した1体型の"カムコーダ"であることを強調。さらに、「8K+戦略」として、5Gの高速通信を用いた高臨場感映像配信やVR/AR、遠隔医療システムなどの「8K+5G」、高精細映像とAIを組み合わせたビッグデータ分析など「8K+AI」などの事業領域を紹介。「『ワクワクするような社会』これを8Kで可能にしていきたい」と語った。
アストロデザインの鈴木茂昭社長は、「他社のやらないことだけやってきた映像機器メーカー」と自社紹介し、ハイビジョンや4K放送などに関わってきたこと、8Kに於いても撮影から収録、変換、表示まで全領域の技術を持っていることや、8Kの臨場感の魅力をアピールした。しかし、8Kの課題は「コスト」であったという。「今回のシャープとの8Kカムコーダにより、8Kシステムのコストは1/10ぐらいになる。劇的な変化が起きる」と、新製品への期待を語った。
シャープ 常務 電子デバイス事業本部長の森谷和弘氏は、8K映像制作によるエコシステムの構築により、「映像制作業界にデビュー。家電メーカーから一歩踏み出した新しい姿、8Kへの当社の本気度を見て欲しい」と語った。監視・医療分野への8Kカメラ展開も予定しているほか、「2020年を目標にコンシューマの世界でも8Kを浸透させたい。コンシューマ用にも8Kを発展させ、映像市場を“8K World”にしたい」と、コンシューマ向け展開について説明した。
加えて、映像の臨場感や迫力の訴求だけでなく、高画素による「いままで見えなかったものが見える」、「データ活用」にも取り組む。放送においては、画像データ切り出し、スマートメディカルにおける遠隔地医療、セキュリティでは顔認識等、8Kでは様々な応用が可能になることを紹介した。
8Kカムコーダの販売については、放送局や映像制作会社を中心に、大学や研究機関、官公庁などでの導入を目指す。放送・映像制作分野ではアストロデザインの販路を中心に展開するという。日本では12月に発売するほか、米国や台湾でも2018年前半に発売、中国でも2018年度中の発売を予定している。また、120Hz対応の8Kカメラについても「今すぐに、ではないが検討はしている」とした。