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NHKの8K中継車登場。8K実用放送に向け、カメラや配信、フォントも対応
2017年11月15日 22:26
国際放送機器展「Inter BEE 2017」が15日、千葉県の幕張メッセで開幕した。期間は15~17日までで、入場は無料(登録制)。2018年の4K/8K実用放送開始を見据え、各社が8K関連機器を多数展示している。ここでは8Kスーパーハイビジョンを主導するNHKや、ユニークな展示が目立ったキヤノンなどのブースを紹介する。
8K中継車がInterBEEに。
NHKは、2018年12月にスタート予定の4K/8K実用放送、とくに8Kを積極的にアピール。ブースの中央には「8K中継車」を展示している。
整理券を入手すれば、Inter BEEの直前に開催された「2017 NHK杯国際フィギュアスケート」で利用された8Kの中継車の中に入れる。中継車の中には55型の8Kモニターを中心に多数のモニターを搭載し、10本までの8Kを扱える。
中継車の中では、実際に8Kフィギュアスケートの中継映像を流しており、制作環境の一部を垣間見ることができる。
また、8K映像の「2倍速スローモーションシステム」も展示。120Hzで撮影可能なカメラと記録装置を用いて、世界で初めての8Kスローモーションシステムを構築。このシステムは2017 NHK杯フィギュアで実践投入されており、その映像も紹介されている。また、8Kで難しくなるフォーカスあわせについても、ピントが合った部分を緑に表示する「8Kフォーカスアシスト」を紹介している。
来年に迫る8K放送に向け、リビングでの8K体験イメージも紹介。シャープの75型8Kテレビに、トランプ大統領来日時の8K映像を表示し、8Kの高精細さや迫力をアピールしている。
また、4K/8K実用放送では、従来の右旋偏波だけでなく新しい左旋偏波も採用されるためアンテナの交換も必要。また、アンテナ出力からの信号周波数帯域は3,224MHzまで拡張される。そのため、分配器や室内配線などの交換が必要となる場合が多い。こうした課題について説明するコーナーも設け、'18年の開始に向けた準備や周知活動を続けている。
キヤノンはHDRシアターや8Kディスプレイ、10億画素デモ
キヤノンは、「CINEMA EOS SYSTEM」や、4Kディスプレイ「DP-V2411」、4K対応の業務用ビデオカメラ「XF405/XF400」などを紹介。新4Kプロジェクタ「4K600Z」を採用した、4K HDRシアターなどを展開している。
4K HDRシアターは「4K600Z」を4台スタックして、24,000ルーメンに輝度をアップし、120型で投写。HDRの魅力を訴求している。4K600Z単体でも6,000ルーメンと高輝度だが、大型スクリーンでの迫力を重視し、4台使った表示を行なっている。
8K関連では、8Kカメラやを参考展示。また、29型の8K液晶ディスプレイも展示している。いずれも開発中で、発売時期は未定。
ただし、8K液晶は、一部パートナー向けにレンタルなどを行なっているとのこと。HLG方式のHDR映像の表示が行なえる。現時点では、映像回路や電源などのサイズが大きいため、CRTテレビのような奥行きがあるが、量産段階に入れば、4Kに近いサイズに納めることができるとのこと。
2.5億画素のCMOSセンサーを用いて、10億画素の撮影を行ない、4Kや8K、12Kで切り出して表示するというデモも実施。センサーはAPS-Hサイズで、画素ずらしにより10億画素まで拡張。広角撮影した映像から任意の位置を切り出して、横に並べた3枚の4Kディスプレイ(12K)に表示するというもの。
同センサーでは、5fpsとなるものの、どこを切り出しても高解像度な映像が得られると紹介。専用レンズも開発し、今回のInter BEE展示などからニーズを把握して、実用に向けた検討を行なっていくという。
また、GoPro風の小型カメラ「MM-100WS」も出展。1.28インチの高感度フルHD CMOSセンサーを備えた小型カメラで1080/60pの動画撮影が行なえ、背面のアダプタを変えることで、9時間の長時間駆動や1時間の撮影、SDIやLANインターフェイスの追加などが行なえる。
ただし、GoProのような民生展開は予定しておらず、工事現場や工場の監視業務や配管工事の映像サポートなどBtoB向けの展開を検討しているとのこと。発売時期等は未定。
開発中の「自由視点映像生成システム」もシアターで展示。サッカーの試合を様々な視点や角度から視聴できるため、フィールドに居るような臨場感で楽しめるという。
各社の8Kソリューション。フォントも8K
8K映像制作環境も多数展示されており、シャープやソニー、パナソニックが8Kカメラの新製品を披露。池上通信機や日立国際電気などが、8Kカメラを使ったシステムを紹介している。
ソシオネクストは、独自の8K HEVCデコーダチップを搭載した世界最小/最軽量(410×220×60mm/2.5kg)という8Kメディアプレーヤー「s8」を初披露。パブリックビューイングやサイネージなどでの利用を想定し、2018年3月より発売する。価格は250万円。
同社では8KのHEVC映像をリアルタイムでデコードできるワンチップLSI「SC1400A」を開発し、ローカルに保存した8K映像だけでなく、ネットワーク経由の8K映像のリアルタイム表示に対応。パブリックビューイングなどに対応できる。
会場のデモでは同社の4K/60p対応HEVCエンコーダ「MB86M31」を4個搭載して構成した8K HEVCリアルタイムエンコーダシステムで、約600Mbpsに圧縮した8K/60p映像をLAN経由でs8に入力し、8Kディスプレイに表示した。8K LSIのSC1400Aは、8Kテレビでの搭載を想定して開発したもので、テレビメーカーへの供給も開始しているという。
また、モリサワは4K/8K放送向けのフォント「UDデジタルTV書体」を紹介している。4K/8K放送の番組表や字幕放送では「ARIB STD-62」規格という文字セットが定められており、UD新ゴR、UD新丸ゴR、UD新丸ゴBなどのフォントを提供する。
見やすく、間違えにくいフォントとしているほか、STD-B62で新たに定められた文字を多数収録。例えば、番組表には4K放送を示す[4K]、8Kの[8K]、120Hz放送を示す[120P]、22.2ch音声の[22.2]や、[3D]、[Hi-Res]、[Lossless]などが利用可能になる。これらの文字セットにも対応している。
会場ではACCESSのNetfrontブラウザ上での文字表示や、番組表表示などを紹介。4Kや8K放送では「文字も読みやすくなる」ことをアピールしている。