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ホテル椿山荘東京に登場、“高級オーディオ完備ルーム”で音を聴いてみた

 文京区にあるホテル椿山荘東京に、2月1日~2月28日の期間、McIntoshのアンプなどを使ったハイエンドオーディオシステムやルームチューニング材などを設置した客室が登場。宿泊客が自由に音楽が楽しめるプラン「最高のリスニングルームステイ」が用意される。宿泊料金は1室2人で、1人あたり30,000円から(消費税・サービス料込・朝食付き、宿泊税別途)。

「最高のリスニングルームステイ」で宿泊する「アクアガーデンルーム」。そこに設置されたハイエンドオーディオ設備

 ホテル椿山荘東京の客室の1つである「アクアガーデンルーム」(64m2)が、リスニングルームに変身。コンサート音響を手掛け、グループ傘下にエレクトリと日本音響エンジニアリングを持つヒビノがオーディオ機器を用意している。

 システムは、米McIntoshのプリアンプ「C47」(50万円)、パワーアンプ「MC302」(78万円)、CDプレーヤー「MCD550」(80万円)。スピーカーは英ATCの「SCM40」(ペア66万円)を使っている。C47とMCD550には、USB DAC機能も搭載。宿泊客が持参したCDが楽しめる。

右上からMcIntoshのCDプレーヤー「MCD550」、プリアンプ「C47」。左がパワーアンプ「MC302」
スピーカーは英ATCの「SCM40」

 さらに、日本音響エンジニアリングのルームチューニング材「AGSシリーズ」のフラット型「ST15」(1台28万円)を4台、コーナー型「CO15」(1台33万円)を2台設置。音響環境も整えられている。

実際に音を聴いてみる

 ホテル椿山荘東京は都内にありながら、庭、と言うよりも“森”と表現した方が適切なほど広大な庭園がある。園内には史蹟が点在し、湧水が流れ、滝もあり、宿泊だけでなく、この庭園を散歩する楽しみも味わえる。また、多くの客室から庭を見る事も可能。

ホテル椿山荘東京
庭園には橋や滝もある

 なお、高級オーディオが設置された「アクアガーデンルーム」は、森は見えるものの、庭を見渡せる部屋ではない。その代わりに、庭園に建つ三重塔や弁慶橋など庭園を象徴するエッセンスを取り入れた“アクアテラリウム”(水槽の中に陸地部分も作られたもの)を用意している事から「アクアガーデンルーム」と名付けられている。外の景色よりも音に集中できる部屋でもあるため、高級オーディオとのコラボルームに選ばれた。

出窓部分に置かれているのがアクアテラリウム
陸地も作り込まれているアクアテラリウム

 一方、日本音響エンジニアリングが手がけるルームチューニング材「AGS(Acoustic Grove System)シリーズ」は“森の音場”を部屋で再現する事を理想として開発している事から、森の中に佇むホテル椿山荘東京とのコラボレーションが実現した。

 日本音響エンジニアリングの企画室 根木健太主任はAGSシリーズについて、「我々は音の良い部屋の設計施工をやらせていただいているが、良い音の環境を作る研究の中で、人が心地よいと感じる“森の音場”について研究を重ね、生まれたのがAGSで、“Grove”は“小さな森”を意味している。木で作った円柱を乱立させたデザインで、音を消すのではなく、入ってきた音波を細かく砕き、バラバラにして返してあげることで、その音がスピーカーからの直接音とあわさっても音を乱さない」のが特徴だという。

日本音響エンジニアリングの企画室 根木健太主任
AGSシリーズ

 その効果を確かめるべく、まずはAGSシリーズを何も置かない状態でCDを再生。「カーペンターズ/Close to you」を聴くと、ハイエンドオーディオらしいワイドレンジで高精細なサウンドが流れ出すが、やや全体的に音が硬質で、音像もそれほどシャープではない。大理石などが使われ、客室としてはとても豪華なのだが、オーディオルームとしては少し反響が多いようだ。

AGSシリーズを置かずに試聴

 オーディオ機器の背後にAGSシリーズを並べて音を出すと、音が激変。硬さが無くなり、ピアノの響き、ヴォーカルの質感が自然になる。音像も余分な響きが消えてシャープになり、位置関係がわかりやすく、音場の奥行きもかなり広くなる。まるで部屋の奥の壁が無くなったような感覚だ。

AGSシリーズを入れると音が激変する

 AGSシリーズが面白いのは、吸音材を沢山置いて反射音を減らし、機器からの直接音をメインに聴くようなタイプのオーディオルームと異なり、適度な反射がある事だ。そのため、音の勢いや躍動感が削がれた感じが無く、音楽のパワーがしっかりと伝わりつつ、不快な響きや反射を無くしている。だが、まったく無くしているわけではない。このあたりのバランスが絶妙だ。

 オーディオ機器の正面に座って、1音も聞き漏らすまいと勝負するうような“緊張を強いる音”ではなく、リラックスして楽しめるサウンドになるところが、ホテルの客室にマッチしていると感じた。

 なお、あまり大音量を出すと他の宿泊客の迷惑となるため、音量レベルは40、アンプ出力3Wまでに制限されているが、実際に聴いてみると、それ以下でも十分な音量と感じられた。

 プランには洋食、和食、ルームサービスから選べる朝食と、部屋で楽しめるコーヒー/紅茶、プティフール、ミニバーのフリー利用権も含まれている。また、オプションでルームサービスでのディナー(和洋折衷)も別途1人1万円で用意。「最高の音環境の中で、1日寛ぎたい方におすすめ」だという。