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AI搭載の徹子ロイドtottoと会話、CG女性アナやVTuber。テレ朝が新たな番組制作

テレビ朝日は、グループ各社や系列局で開発・改善した最新機器やサービス、国内外の先進技術を紹介する技術展示会「ゴーテック 2019」を2月28日~3月1日に開催した。AIやVR/ARなどを活用した新しい番組制作や、従来と違う視聴方法の提案などの展示を紹介する。

テレビ朝日の展示会「ゴーテック 2019」

AI搭載で会話するtotto。VTuberなど新しい番組の形

社内外の放送関係者などが来場するゴーテックで注目されていた展示の一つは、黒柳徹子の等身大アンドロイドで会話もできる「totto」。42年に渡る「徹子の部屋」の会話データを元に、黒柳徹子の声の特徴を持つ音声合成を実現。本人の表情やしぐさなども再現しながらしゃべることが可能となっている。以前はテキスト入力した音声を読み上げる形だったが、最新版ではAIを搭載し、自律対話システムを採用。tottoが人に質問してその答えに対しコメントしたり、人からの質問に答えられる。

tottoの特設スタジオ

ゴーテックの会場内に、番組セットを模した特設スタジオを用意。tottoからの質問に答えて、徹子の部屋に招かれたゲストの気分を味わえるようになっていた。例えばtottoの「好きな食べ物は?」という質問に対し「オムライス」と答えると、オムライスが日本発祥であることを教えてくれるなど、関連する話を振って話題を広げてくれる。

テレビ朝日メディアプレックスが紹介していた「Vステージ」は、スタジオ不要でVTuber気分を簡単に味わえるというシステム。パソコンと、センサーを備えたヘッドフォン、コントローラーを使って、モーションキャプチャーにより、バーチャルキャラクターになりきって配信できる。

Vステージのデモ

配信システムと閲覧アプリで構成し、YouTubeなどへの配信も可能だが、配信者の希望に応じたカスタマイズもできることを特徴としており、閲覧アプリを使うと視点を変えて視聴できるなど、一般的なライブ配信とは違う見方もできる点を紹介している。

スタジオなどの広いスペースが無くてもVTuberのように配信できる
アプリ画面例

アプリだけではない見方として、Planar製の透明サイネージを使った大画面の視聴や、裸眼3D対応のホログラムディスプレイ「Looking Glass」を使った立体的な表示を紹介していた。

この「Vステージ」は、テレビ朝日で2月2日から放送開始された番組「ポルポ」で実際に採用。夏目三久と共演するタコのキャラクターが、今回のシステムで動作しているという。

このシステムはテレビ朝日メディアプレックスライセンス提供の形でビジネス展開し、既に複数の契約も決まっているという。同社はVTuber CG制作なども請け負う。

ニュースなどを読む「高精細CGアナウンサー」も紹介。CGで作られたアナウンサーが、原稿を元に自動で音声を生成し、自然な発話で原稿を読み上げるというもので、災害時や深夜、繰り返し伝えるニュース、ネット配信などで、現役アナウンサーのサポートとして活躍が期待される。

CGアナウンサーの名前は「花里ゆいな」。今回写真撮影はできなかったが、今回の顔になった経緯もユニークで、テレビ朝日女性アナウンサーの“平均顔”のデータを元に、それに似た人間のモデルを探し、その顔をキャプチャーして調整したという。説明員によれば、来場するテレビ朝日社員からも注目されているとのことで、「来年度には何らかの形で皆様にご覧いただけるのでは」としていた。

テレビ朝日関連会社のレイ(Ray)が開発しているのは、しゃべった言葉がAR空間上に浮かぶ映像に変わるという「ポッピングボイス」。

「ポッピングボイス」のデモ
話した言葉が遠くに飛んでいくように、だんだん小さく表示

タブレットに向かって話しかけると、立体的な文字になって表現。画面の向こうに飛んでいくような動きをする。翻訳機能を使って、英語や中国語などの会話もAR空間上でできる。音声認識とAR Kit 2.0を組み合わせてインタラクティブなコミュニケーションを実現するという。

浮かび上がった文字は、飛んでいくだけでなく、特定の壁にくっついて留まるといった動きも指定可能で、これを活かして掲示板のようにコメントを1カ所に集めることなども実現可能。スポーツ選手を応援する寄せ書きとして活用するといった提案もあるという。

番組などでの使用を想定するほか、アプリなどで単体のコミュニケーションツールとしての提供も検討中。

英語などの翻訳にも対応

8K上映や、制作の効率化。番組の新たな楽しみ方も

名古屋テレビ放送(メ~テレ)は、既存のHD機材も活かして、8Kなどのパブリックビューイングを実現できるという8K伝送システムを紹介している。

8Kカメラで撮った映像を、アストロデザインの8Kクロスコンバーターで12G×4本から3G×16本に信号変換し、ソシオネクスト製の8K HEVCエンコーダーで約60Mbpsに圧縮。HD用FPU送受信機を使って伝送する。FPU受信機以降は、ターボシステムズ製のZliveでMMT形式に変換、同社XJiveでMMT形式をデコードして8Kに戻して再生可能にする。昨年の「メ~テレ秋まつり2018」でもデモ上映を行なった。

HD機材を活用した8K伝送システム

アストロデザインは、同社のコンバーター製品を活用した8K切り出しシステムを紹介。前述のtotto特設スタジオを8Kカムコーダーで撮影し、そこから4KまたはHD映像を切り出し可能なソフトを開発し、1台のカメラでも、切り出しにより様々な映像を効率的に作れることを紹介していた。

8K切り出しシステム

テレビ朝日内の「Tech Lab(テクラボ)」が紹介していたのはが紹介していたのは、カメラ映像から自動で人物を特定して、その人が中心の映像となるようにカメラをパン/チルトするというシステム。4K映像から特定の人を選択すると、常にその人が中心になるような画角で撮影できる。カメラマンの数が限られる深夜番組などでも活用を見込んでいる。

目的の人物が中心になるように、ジンバルでカメラを自動パン/チルト

前述のTech Labは、音声認識を使った「AIリアルタイム字幕システム」も開発。AbemaNewsのニュース番組に使っているもので、クラウドシステムと常時接続し、リアルタイム(約1秒以内)の字幕表示を実現したという。

AIリアルタイム字幕システムの例
SwipeVideoは、スマホなどのカメラを複数台使って360度動画を作れるシステムを紹介。Webブラウザ上でも再生できる。スポーツイベントで、観客のスマホを連携させて多視点映像も作れるという

テレビを視聴する側の楽しみ方にも新たな提案も行なっていた。「IoTによる新しいテレビライフスタイル」という展示は、ソニーのロボット「Xperia
Hello! 」と一緒にテレビを見るという方法を紹介。データ放送やIoT機器を利用した放送通信連携で、利便性を高めつつ楽しく視聴できることにつなげる仕組みとなっている。

Xperia Hello! を使ったIoTテレビ視聴

上記の展示では、ユーザーが操作するのではなく、Xperia Hello! から「一緒に観ましょう」と話しかけられることをきっかけに視聴するというもので、家族それぞれの顔を判別できるXperia Hello! の機能を活かし、父親や母親、子供に合った番組や、CMを勧めてくれる。子供に「今日は早く帰ってきて、一緒にドラえもんを観ましょう」といった形で、スマホの“セカンドスクリーン”とは違った、ロボットならでは特徴を活かした新たな視聴の仕組みを紹介。一緒に観ると“視聴マイル(ポイント)”がたまり、何らかの特典を受けられる機能なども検討しているという。

家族それぞれに合った番組などを提案
一緒に観るとポイントがたまる