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邦画初のドルビーシネマ作品は水谷豊監督「轢き逃げ -最高の最悪な日-」
2019年3月22日 14:30
東映は20日、水谷豊監督の映画「轢き逃げ -最高の最悪な日-」が、邦画初のドルビーシネマ作品となることを発表した。劇場公開は5月10日。
映画「轢き逃げ -最高の最悪な日-」は、ある地方都市で発生した女性の交通事故死を発端に、平穏な生活を奪われる人々の人生が複雑に絡み合っていく様子を描いたサスペンス。TVドラマ「相棒」シリーズで人気を集める俳優・水谷豊が、監督・脚本を務めている。
ドルビーシネマの採用は、会田撮影監督がテスト用に撮ったHDR映像を水谷氏が視聴し、感銘を受けたことがきっかけという。また、洋画と異なり、邦画の場合は字幕表示でセリフを読む必要が無いため、ドルビージャパンは「作品への没入感が高く、リアルな日常性や人間描写がある映画であればあるほど、絶大な効果をもたらす。本作は日本映画としてのドルビーシネマに合致した作品であり、“ハリウッドクオリティ”を余すことなく体感できる」と説明している。
出演は、中山麻聖、石田法嗣、小林涼子、毎熊克哉、水谷豊、檀ふみ、岸部一徳など。監督・脚本は水谷豊、撮影監督は会田正裕。音楽は佐藤準。
ドルビーシネマは、ドルビーラボラトリーズ社が開発した最新鋭のシネマフォーマット。HDR映像技術「Dolby Vision」と立体音響技術「Dolby Atmos」に加え、最適化されたシアターデザイン(インテリアカラー、空間デザイン、座席アレンジメント)などとの一体化によって生み出される“まるで作品の中にいるような没入感”を特徴としている。
レーザー光源の専用プロジェクター「ドルビービジョンプロジェクションシステム」を2台使用し、31feet/lamberts(108nits)の輝度と100万:1のコントラスト比を実現。色域はRec2020。最大64個の独立駆動スピーカーで3次元オーディオを生み出す。
欧米・アジアなどの11カ国・20興行社が採用。国内では、'18年11月に日本初のドルビーシネマが「T-JOY博多」内にオープンし、続いて4月26日に「MOVIXさいたま」、秋には「丸の内ピカデリー」への導入が決まっている。
あらすじ
ある地方都市で起きた交通事故。一人の女性が命を落とし、轢き逃げ事件へと変わる。
車を運転していた青年・宗方秀一、助手席に乗っていた親友・森田輝。二人は秀一の結婚式の打合せに急いでいた。婚約者は大手ゼネコン副社長の娘・白河早苗。悲しみにくれる被害者の両親、時山光央と千鶴子。その事件を担当するベテラン刑事・柳公三郎と新米刑事・前田俊。平穏な日常から否応なく事件に巻き込まれ、それぞれの人生が複雑に絡み合い、抱える心情が浮き彫りになっていく。
彼らの心の奥底に何があったのか? 何が生まれたのか? その悲劇の先に、彼らは何を見つけられるのか?
監督・水谷豊コメント
以前、会田撮影監督から見せてもらった最新鋭の映像のことが頭から離れず、「いつか日本でも」という思いを持っていました。その思いを叶えてくれるドルビーシネマに幸運にも出会い、この作品が日本映画初となることを嬉しく思います。
日本映画でもドルビーアトモスが導入されはじめ、本作のドルビービジョン採用から、ドルビーシネマの可能性を取り入れることで、日本映画の映像表現や未来が変わっていくと思います。観客も、より集中できる環境で映画を楽しめるようになれば、感じ方がより複雑になり、生々しく心に響くのではないかと期待しています。
撮影監督・会田正裕コメント
3、4年前にテスト用に撮ったHDR映像を、監督にお見せした時から“何かが違う気がする”と。当時からHDR映像技術に対して、すごく興味を持っていました。
普段の生活の中で、人は目と脳のセットで、ものを見ているのだけれど、暗闇の中で映画を観る時には、視覚的にあまり脳を使わずに観ている。
ドルビービジョンは、肉眼で見るイメージの明るさなので、観客も、本物を見ているような感覚で、映画を観ることになる。3Dとは違って、いままで描き切れなかった深い暗部の表現をはじめ、作品世界に潜在的な幅を持たせることができるので、日常的な出来事を描いた本作には、非常にマッチしていると思います。
録音・舛森強 コメント
音が“居る”という表現ができる。音を点で飛ばすことができるので、音が“居る”という表現ができる。例えば、これまでは擬似的にしか飛ばせなかったヘリコプターの音が、ドルビーアトモスの表現を用いることで、観客に時間経過をナチュラルに伝えられる。水谷監督の映画って、時間経過が難しいんですよね(苦笑)。
上からも音が鳴るので、高さを含む三次元的な空間を、観客に意識させることができる。イタリアンレストランのシーンで、秀一の倒錯した世界を表現する上でも、アトモスは大変有効でした。ワイングラスで乾杯してから、無音になり、婚約者の声が遠のいていく中に、いやな音を入れて、グラスの割れる音で現実に引き戻されるまでを、ぐるぐると音を回しながらドラマチックに表現できました。