ニュース

へなちょこボクサーでもVRなら勝てる? 米Surviosの“酔わないゲーム”体験

東京ミッドタウン日比谷に、VR体験施設「Survios Virtual Reality Arcade」が、5月23日~6月3日の期間限定で登場した。米国や中国で展開中のVR施設を日本でもテストオープンしたもので、本格VRゲームが無料で体験可能。40代おじさんの筆者が実際にゲームを体験し、施設の狙いや今後の展開について聞いた。

「Survios Virtual Reality Arcade」でVRゲームを体験

「Survios Virtual Reality Arcade」がオープンしたのは、東京の有楽町・日比谷エリアに3月開業した東京ミッドタウン日比谷6階の「BASE Q Studio」内。時間は11時~20時で、初日は13時~20時、最終日は18時終了。

東京ミッドタウン日比谷6階の「BASE Q Studio」内にテストオープンした

米国ロサンゼルスなどで展開中のVR体験施設「Survios Virtual Reality Arcade」を日本に初めて持ち込んだというもので、本場LAで一番人気というVRボクシングゲーム「Creed: Rise to Glory」のアーケード版が無料体験できる。映画「ロッキー」のスピンオフ作品である「Creed」の世界観に没頭し、実際のボクサーになって対戦できるというものだ。

「Creed: Rise to Glory」の画面例

ボクシング未経験でも健闘。運動した気分も

VRゲームを本格的に楽しむには、パソコンやVRヘッドセットなどが必要になるが、今回の施設で使われているパソコンや、HTCのVRヘッドセット「VIVE Pro」など、一式を個人でそろえようとすると30万円ほどかかるという。没入感の高い本格的なVR体験を気軽に楽しめる施設が、日本でも多く誕生することを目指し、今回のテストオープンが決まったという。

VRヘッドセットの「VIVE Pro」

ゲーム「Creed: Rise to Glory」はコンシューマ向けにも提供されているが、筆者は遊んだことが無かったため初めての体験。まずはスタッフの説明を受けながらヘッドセットを装着して、指定の位置に立って準備完了。自分のキャラクターと対戦相手のキャラクターを選んだあと、会場も決めて、試合がスタートした。

キャラクターや会場を選択

選んだキャラクターは、実際の自分とかけ離れたイカツいモヒカン頭のDUANE REYNOLDS“RHINO”。試合前、コントローラーを持った両手を前に伸ばして画面を見ると、タトゥー入りのゴツい太腕が自分のものになったようで気分が高まる。

通常のボクシングと同様にストレートやアッパーカット、ジャブなどのパンチを出し、相手が攻撃しそうになったら両腕でガードするのが基本的な操作。シンプルではあるが、連続でパンチをしすぎるとスタミナが切れて動きが遅くなり、グローブが点灯して警告。その場合はガードしてスタミナが戻るのを待つ形になる。

“ロッキー”との対戦(プレイヤーは筆者ではなく会場スタッフ)

周りの人に見られながらのプレイは恥ずかしさもあったが、スタッフから「多少大振りのほうがいいです」とのアドバイスを受けながら、いくつかパンチが当たるのを見ると、上手い下手は気にならず、だんだん楽しくなってくる。ボクシング経験の無い筆者は周りから見ればきっと“駄々をこねているおっさん”だが、次第に周りの目を気にせず連打できるようになってきた。

スタミナがなくなったらガード
パンチを受けすぎてスローモーション画面になったら、画面上の両手グローブ(赤い丸の部分)に自分の手を合わせる
自分がダウンした場合は、腕をブンブン振ると立ち上がって試合に戻れる

ただ、ガードをおろそかにしていると相手のパンチもたくさん受けてしまい、ピンチを感じさせるスローモーションの映像に切り替わってしまう。

その場合は、プレイヤーキャラが広げた両手の表示位置に自分の手を合わせるようにすると、再び打ち合いに戻れる。たくさんパンチを打たれながらも、少しずつ相手のモーションが見えてきたので、パンチが来そうな時にはガード、その後に思うまま連打するというスタイルで、自分もダウンはしつつも、何とかKO勝利できた。唯一のボクシング知識「はじめの一歩」がどこかで活きたのかもしれない。

カッコいいパンチの例(スタッフ)

試合終了後は、パンチが相手に当たった回数や、自分がブロックできた回数、相手がノックダウンした回数などのスコアが表示される。今回は対CPUだったが、一緒に来た人との対戦プレイもできるという。

試合結果

ゲームのプレイ時間は15分程度とのこと。筆者がVRゲームをするのは主に取材などで体験する時だけということもあり、終了後は両手を膝につくくらいの疲労感。楽しみながら、運動もできたような気分を味わえた。周りのスタッフがアドバイスや応援の声をくれたのは、最初恥ずかしくもあったが、段々気分を高めてくれた。

前方のプロジェクター画面でプレイの様子が大きく表示されるため、一緒に行った友人と盛り上がれるのも魅力だが、一人で行っても今回のように周りから応援されると、ゲームが上手くない筆者でも、だんだん気分が良くなってくる。装着している間は自分の世界に没入できるので、仕事帰りのストレス解消にもいいかもしれない。

“酔わないVRゲーム”。ウォーキング・デッドのVR版、広告で低料金化も?

Survios Virtual Reality Arcadeは、米サビオスが米国や中国で運営するVR体験施設。同社に出資している電通が、日本でのVR体験拡大を目指し、今回のテストオープンが決定。東京ミッドタウン日比谷のビジネス創造拠点であるBASE Qが協力した。電通イノベーションイニシアティブ 戦略投資部 イノベーション・プロデューサーの渡辺大和氏に狙いを聞いた。

電通の渡辺大和氏

米サビオスは、かつてVRヘッドセットの開発メーカーであり、現在はVRゲームなどのコンテンツ開発と、VR施設などのLocation Based Entertainment(LBE)を展開。電通以外に、ハリウッド映画会社のMGMや、ベンチャーキャピタルのLux Capital、 Shasta Capitalからも出資を受けている。最初に開発したFPSゲーム「Raw Data」も高い評価を得た。今回のゲーム「Creed: Rise to Glory」は、MGMが映画のブランディングを目的に数百万ドルの開発費を負担し、サビオスがVRゲーム化したという。

Survios Virtual Reality Arcadeのイメージ

サビオスは「酔わないVRコンテンツ」にも強みを持っているとのこと。VR酔いは、実際の体の動きと映像にズレが起きることが大きな原因とされるが、同社はハードウェアメーカーだった知見を活かし、ハードの特性に合わせてコンテンツを最適化。酔いの元になるズレを人に感じさせないゲームを開発できるという。今回のプレイでも酔いは全く感じなかった。

現在は、日本での本格展開に向けてパートナーを検討中。ゲームセンターなどのアミューズメント施設や、空港、カラオケボックスなどを含めた様々な場所での展開を見込んでいるとのこと。VRゲームは、通常のゲームに比べると利用料が高い場合が多いが、例えばVRゲームの中に広告コンテンツも含めて料金を下げることなども検討しているという。

今後の注目のコンテンツとして、海外人気ドラマ「ウォーキング・デッド」のVRゲーム版も開発が完了。サビオスは自社制作だけでなく、VR開発プラットフォームを提供することで、他社がVRゲームなどを開発できる環境も整えていくという。

日本で今回の企画が実現したのは、サビオスがアニメなど日本のコンテンツに関心が高いのも理由の一つだったとのこと。日本で人気のアニメやゲームなどのVR化が今以上に進めば、日本人にも親しみやすいVRがもっと楽しめるようになっていくかもしれない。