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ニコニコチャンネル月額会員100万人「オワコンと言われる中、伸びている」

ドワンゴは28日、動画サービスniconicoのサブスクリプション型サービスである「ニコニコチャンネル」において、月額会員数が4月25日時点で100万人に到達したと発表。夏野剛社長は、「niconicoは落ち目だ、オワコンだと言われている中、根強くファンコミュニティとして伸びている」と説明。さらに、ギフト機能などのサービス拡充の予定も発表した。

左からドワンゴの夏野剛社長、メンタリスト DaiGo氏

我々のネット上での存在感が落ちているのではない

2008年3月にサービスを開始した「ニコニコチャンネル」は、企業・団体・一般ユーザーが動画や生放送、記事コンテンツを配信できるプラットフォーム。専門知識不要でチャンネルを開設でき、有料チャンネルでは収益を得る事も可能。2019年3月期には月額会員数が過去最高の30万人増を記録し、ユーザー課金額とともに前年比5倍の成長率を達成。今年2月に月額会員数90万人を突破していたが、そこから3カ月で10万人の新規入会を得て、4月25日時点で100万人に到達した。

チャンネル運営者が受け取っている収益も増加。2019年5月時点で、累計売上額上位100チャンネルの運営者の平均収益額は1億円以上にのぼり、上位5チャンネルの平均収益額は4億円を突破。2019年3月期、年間ユーザー課金額は55億円を越えており、これは都度課金、グッズ販売の売上を除いた金額だという。

月額会員数トップ100チャンネル

発表会に登壇した夏野社長は、Webサイトの作成、動画配信、生放送、メルマガのようなテキスト配信、イベントの作成、オリジナルグッズの作成・販売、寄せ書き機能といった多様なサービスをニコニコチャンネルが提供している事を「ファンコミュニティを運営するにあたって必要な機能が全部完結している。例えば、動画はYouTubeで、メルマガはどこかのサービスでと、個別にやる必要がない。生放送の一部は無課金でも視聴でき、その後は有料のみとか、そういったシステムも含めて全部提供している。世界でも一番機能が多くて、そしてコミュニティとして成立していて、それがサブスクリプション型で成立しているのが特徴。そこがサードパーティーの皆さん、そしてそのファンの皆さんに多く受け入れられている理由」と分析。

夏野社長

こうしたサービスを各チャンネルが活用する事で、ファンは最新の情報が得られ、映像を見て、コメントを通じてアーティストらとコミュニケーションできる。「これは立派なファンクラブと言える。(機能が充実しているため、アイドルの)よくあるファンクラブよりも、遥かに結びつきが強い。インタラクティブに、(niconicoらしい)コメントを通じてコミュニケーションができるとして、非常に強く支持されている」という。

一方でドワンゴでは、位置情報ゲーム「テクテクテクテク」が期待値を大きく下回る見込みとなり、6月17日午でサービスを終了。その他のオリジナルゲームの開発遅れや、サービス開始時期の後ろ倒しなども響いて2018年度は赤字化。川上量生氏が取締役を辞任し、夏野氏が社長に就任。それから約3カ月が経過したところとなる。

夏野社長は、「私が再登場しなければいけなくなっている最大の理由は、niconicoのプレミアム会員ユーザーが徐々に減っているため。しかし、ユニークユーザー数や総アクセス数は、実は全然落ちていない。また、ニコニコチャンネルでの課金ユーザー数は増えている。我々のネット上での存在感が落ちているのではなく、それをビジネスモデルとしていく我々の能力が落ちているという事だ」と説明。

その上で、「(プレミアム会員ユーザーの減少は)プレミアム会員向け機能の強化スピードや改善の充実度が、ニコニコチャンネル向けサービスなどと比べ、遅くなっている部分も要因。そこは挽回できる」と、自信を見せた。

新機能も随時追加

ニコニコチャンネルにおいて、会員ユーザーとチャンネル運営者がより快適にサービスを利用できるよう、機能追加や改善も実施。ニコニコのトップページに当日の「おすすめチャンネル」を表示する機能を5月22日に実装したほか、6月3日にはチャンネル生放送でのギフト機能の利用が可能となる。視聴者が番組にアイテムを贈ることで番組を盛り上げ、配信者を支援できる機能で、コミュニティの活性と収益性の向上を見込む。

6月3日にはチャンネル生放送でのギフト機能の利用が可能となる

運営者向けに、各チャンネルページの来訪者動向を定量的に把握できるマーケティングデータを提供予定。どのページからチャンネルへとアクセスして来たのか、過去に配信したどの番組がよく再生されているのかといった情報がわかるようになり、コンテンツ戦略が立てやすくするなど、チャンネル運営のサポートも強化していく。

他にも、チャンネル生放送にニコニコ新市場を追加予定。生放送で利用できるゲーム・ツール・商品などを動画プレーヤー下部に貼り付けることができるようになる。

ニコニコのトップページに当日の「おすすめチャンネル」を表示する機能を5月22日に実装

「YouTuberの人も、もっとニコニコをやればいいのにと思っている」

このニコニコチャンネルにおいて、2018年度月額会員数ナンバーワンとなったのが、メンタリスト DaiGo氏による「メンタリスト DaiGoの『心理分析してみた!』」。ゲストとして登壇したDaiGo氏に夏野氏から、記念の盾と、DaiGo氏の生まれた年である1986年のロマネ・コンティがプレゼントされた。

メンタリスト DaiGo氏
盾とワインを贈呈。1986年のロマネ・コンティは「普通に買うと車より高い。(ドワンゴは)赤字なのにこんなことやってる場合じゃない」と笑う夏野氏

DaiGo氏は、「最初は“タレントさんなら、開設すれば1,000人くらいは入会する”と言われたんですが、初日は3人でした(笑)。放送しても200人くらいにしかならず……そこで、各種分析を入れたんです。例えば、何時何分にどういう放送をすると、どうなるのか。数値を分析しました。コメントに左右されたくないので、あえてコメントはほぼ見ず、数字ばかり見ていまいた」とチャンネル開設当時を振り返る。

成功の要因としては「やりかたはシンプルで、(会員から毎月)540円もらっているので、それ以上の価値をお届けすればいいという考え方。例えば、僕は多い時には1日10冊とか本を読み、論文も読みますが、普通の人は月に1冊でも読めば多い方。そこで、読んだ本の面白いところをまとめて5冊、10冊分などを紹介すると540円以上の価値になります。人が面倒くさいと感じる部分を省いて、欲しいところを提供する。それを実践したのが大きかったと思います」と解説。

コンテンツの“出し方”にも、メンタリストとしての能力を発揮。「動画を公開する頻度もいろいろ試しました。時期によっても違うのですが、やりすぎても駄目で、退会者が増えるんです。一カ月に1時間ほどの動画を22回、ほぼ毎日公開した事もありましたが、“見きれない”と退会してしまうんです。月20本コンテンツがあって、7本見るだけだと“もったいない”と感じますが、そこで月6本だけ出すと、ありがたがって読むんです。人間は不合理な生き物なので」とのこと。

これからチャンネルを開設する人へもアドバイス。「私はYouTubeにも動画を投稿しているのでわかるのですが、YouTuberは広告収益を得ているので、収益がメチャクチャ増減します。ですので、“それをメインに(収入源として)生活するのは凄な、僕ならば不安感が強いだろうなと思います。なので、毎日動画投稿しないと“不安でしょうがない”という声も聞く。毎日不安を感じる人生は楽しいのか、僕はイヤだなと思います」。

また、「投げ銭サービスは、個人から大金をもらうとヤバイ。人は“払った分はとりもどしたい”と考えるものなので、ストーカー的なものに繋がる事もある。サブスクリプションで安定して、長い間続けたいと考えている人は、ニコニコチャンネルを使ったほうが良い。入り口はYouTubeでいい、その視聴者の中で、優秀な人をサブスクリプションに誘導するのが良い戦略。それが日本でできるのはニコニコチャンネルだけだと思う。YouTuberの人も、もっとニコニコをやればいいのにと思っている」と語った。

夏野氏はこれを受けて、「昔、携帯電話でサブスクリプションサービスを始めた時に、ゲームや新聞社などにコンテンツを提供してもらおうと話をすると、“チャンネル1つ登録するだけで、ゲームを何個も遊べるなんて安売りはできない”と言われてしまった。しかし、まだやっていないゲームに高いお金を払うのは障壁が高すぎる。払った後でもしゲームがつまらなかったら、二度と買ってくれない。でも、2年、3年後に彼らからもの凄く感謝された。サブスクリプションの方が来月の収入が読めて、だいたい年間でこのくらいもらえるというのがわかるようになるから。それが、もっと良いコンテンツを出そう、長く続けるために努力しようという目標に繋がったから。その話と似ている」と振り返る。

そんな夏野氏も、ニコニコチャンネルを運営しているが、「昔は収益で好きなワインが買えたのに、今では赤字で駄目」と、芳しくないという。夏野氏は以前から、例えばMicrosoftなど、ドワンゴ以外の企業についても「こういうビジネスをした方がいい」などの分析を行ない、それが予言として的中する事もあるとのことで、DaiGo氏は、「株とからめて、月500円で、将来上がる株を読む“株読みチャンネル”にした方がいい」などのアドバイス。夏野氏が「マージンを1割払うよ」と喜ぶと、DaiGo氏が「ワインの現物支給でいいですよ」と答え、笑いに包まれた。

最後に、DaiGo氏から夏野氏へ、ニコニコチャンネルへの要望も。「会員になるための手順が多い事」、「スマホアプリの改良」、「過去コンテンツを見つけやすくする検索機能の強化」を挙げ、夏野氏も実現を確約した。