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“4K映像を数10km先に無線伝送”実現へ。Wi-RANで4K配信実験

4K映像配信の様子。評価素材「Big Buck Bunny」の4K画像を利用し、2台のWi-RAN無線機を介して伝送したという

Free-Dは25日、京都大学大学院の研究グループと共に、IoT用データ伝送・制御用広域系無線Wi-RANに、独自の圧縮技術を組み合わせ、4K映像をほぼ無劣化でワイヤレス配信する実験に成功したと発表した。数10kmの広域エリアにおいても、4K映像が伝送できる可能性が実証できたとしている。

4K映像のような高精細動画像を数10km程度の広域に伝送・配信することで、スマートシティや遠隔医療などの様々な分野に新しい事業創造を促すことを目指し共同開発されたもの。

同実験では、有線・無線を問わず、既存圧縮技術の1/3~1/5のデータ転送量で4K映像をほぼ無劣化で配信するFree-D独自の映像圧縮技術と、最大数Mbps程度の伝送速度で最大100kmの伝送距離実績を持つ京大開発の通信システムを組み合わせた。4K映像を広域系無線通信システムWi-RANで配信成功したのは、世界初という。

IoT用広域系無線通信システムは現在、LPWAという名称で様々なシステムが商用化されているが、伝送レートは数10kbpsと低速で、数kmと伝送エリアは広域であるものの4K映像を伝送することはできていない。また、動画像を伝送できるシステムとして4G、5Gに代表される携帯電話系システムも商用展開されているが、利用料金が必要であり、また広域に伝送できる通信エリアがLPWAと同様に数km程度とされている。

今回実験で使われたWi-RANは、IoT時代のビッグデータ構築の活用を想定し、各種センサーやメーター、モニタ等の数千のデバイスからのデータを収集・制御できるという、京都大学が開発した次世代無線通信システム。

国際(IEEE)、国内(ARIB)で標準化され、VHF帯周波数を用い、最大100km、毎秒9メガビットのデータ伝送を無線で可能とし、多段中継を利用することで広域通信網を構築可能。また設置も大規模な工事など必要なく、電源に無線機をつないでスイッチを入れるだけで、自動的に通信網が繋がるため、コストや時間をかけずに広域無線通信網を構築できる。しかし、この毎秒9メガビットのデータ伝送では4K映像の伝送を行なうことができなかったという。

Free-Dでは、4K映像をほぼ画質を劣化させることなく、毎秒3~5メガビットのデータ転送量で配信する高画質映像圧縮技術を開発。動画内に存在する複数のオブジェクトそれぞれを動的、静的に分離し、I、P、Bのフレームの抽出と生成を独自のロジックと分散処理により実行し、効率的に映像データを処理。結果、映像の画質にほぼ劣化がなく、且つ既存の圧縮技術より軽量化された圧縮データが生成でき、Wi−RANシステム上で運用させることで4K映像配信に成功したとする。

今後ネットワーク回線がない地域(山奥、郊外等の僻地)への豪雨や台風、地震等の災害時における無線通信網の緊急配備と現地の状況を高画質映像による正確な把握による対応、現時点では高画質で収集・保存ができていない街中等に設置されたネットワークカメラ映像の高画質化など、防災や減災などへの利用が期待されるという。

また両者は今後、屋外伝送実験等を行なうなど、映像圧縮とWi-RANの活用について研究と開発を進めるとしている。