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KDDI、世界初「H.266/VVC」4Kリアルタイムエンコーダ開発

H.266/VVC(Versatile Video Coding)のロゴ

KDDI総合研究所は、最新の国際標準映像符号化方式「H.266/VVC(Versatile Video Coding)」(以下VVC)に対応した、4Kリアルタイムエンコーダの開発に世界で初めて成功した。これにより、4Kの高精細映像を、リアルタイムかつ、H.265 HEVCと比べ約半分のデータ量で配信できるようになるという。今後、スポーツや音楽イベントなどの4Kライブ映像を、テレビやタブレット、スマートフォンで視聴できほか、回線帯域の制限で低解像度の映像伝送で実現していた遠隔作業支援システムなどにも適用できるとする。

適用例のイメージ

KDDI総合研究所は、HEVCを超える映像符号化方式として、2017年からVVCの国際標準化活動に参加。VVCの規格化に貢献する一方で、VVCの実用化に向けた技術や知識を蓄積してきたという。

VVCは、多様な用途に有効な映像符号化方式を謳っており、4K/8Kの映像のほか高ダイナミックレンジ映像や360度映像に対しても圧縮性能を向上させる手法を採用。HEVCと比較して2倍の圧縮性能を達成しているが、一方で映像圧縮に係る処理負荷がHEVCと比較して約10倍に増加している。

そこでKDDI総合研究所では、VVCの実現に有効な高速化処理および並列化処理を考案・導入。VVCに対応した4K/60fpsのリアルタイムエンコーダ(PCソフトウェアベース)を世界で初めて開発した。

VVCでは、符号化処理単位である符号化ツリーブロック(CTB:Coding Tree Block、以下「CTB」)の画素数がHEVCのそれと比較して4倍大きくでき、またこのCTBを起点として分割・符号化されるブロックも様々な形状に分割できる。

これによりVVCでは、入力映像に応じてより適切な分割サイズ・形状での符号化が可能なため、圧縮性能が向上。ここで適切な分割サイズ・形状をCTB単位に決定できるかどうかが、圧縮性能を左右するという。

HEVCに対する代表的な実現例では、最適な分割サイズ・形状を選択するために、予めすべてのパターンにおいて符号化処理を行ない、その中から効率が最大となるものを選択してきた。

しかし、このような従来方式をVVCに適用した場合、膨大な分割パターン数が直接的に処理時間に影響し、PCベースでのリアルタイム処理は不可能だった。これに対して、今回開発された技術は、入力映像の事前解析により分割サイズ・形状を予め決定することで、符号化処理は最適な1種類のみで完了でき、従来方式を適用する場合と比較して約30倍の高速化を実現した。

符号化単位について
高速化処理について

PCソフトウェアでのリアルタイム処理のためには、並列化による実装が不可欠で、HEVCなど従来の映像符号化方式については、フレームを構成するCTBの単位で複数のCPUによる並列処理を行なうのが一般的だった。

しかし、VVCではCTBのサイズ拡大と分割サイズ・形状の多様化に伴い、CTBごとの処理負荷の偏りが増大したため、フレームに閉じた単純な並列処理ではCPUの稼働が一様ではなく、さらなる速度向上の余地があったという。これに対し、複数のフレームに跨ってCTB処理のスケジューリングを行なう仕組みを新たに導入する事で、PCの有するCPUの稼働を理想的な状態に近づけることで速度向上に成功した。

今後は、高解像度・高フレームレートへの対応、更なる圧縮効率の向上、KDDI総合研究所の映像関連製品への導入などを検討。「より臨場感のある映像を生活スタイルにあわせて楽しむための取り組みを進める」としている。

並列化処理について