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HEVCを30%上回る映像圧縮「VVC」'20年標準化。次世代地上放送に向けNHK研究
2019年5月29日 07:00
NHKは、5月30日~6月2日にNHK放送技術研究所で開催する「技研公開2019」において、現在使われているHEVC/H.265よりも効率的な圧縮ができる映像符号化方式「VVC」について展示で紹介。HEVCとの画質比較デモを行ない、将来のスーパーハイビジョン地上放送への採用に向けて技術提案している。
VVC(Versatile Video Coding)は、次世代の放送や映像配信サービスをターゲットとした映像符号化方式として、国際標準化団体のMPEGとITU-Tが合同で標準化を進めており、HEVCに比べ30%~50%の符号化効率改善を目標に、2020年7月の標準化を目指している。
VVCの特徴の一つが「柔軟なブロック分割」。符号化する際のブロック分割サイズが、HEVCは縦横それぞれ半分の4分割だが、VVCは3分割や2分割などにも柔軟に対応したことで、従来よりも効率的にエンコードできるとしている。
また、多様な予測技術や変換技術など、HEVCの要素技術を拡張することで、HEVCと比較して約30%の効率改善を確認したという。VVCエンコード/デコード処理の負荷については映像の内容によっても異なるが、エンコードがHEVCの9.7倍、デコードは同1.7倍の負荷がかかるとしている。
技研公開のデモでは、同一ビットレートにおけるHEVCとVVCの画質の違いを比較。火花や人ごみなどのシーンで比較すると、HEVCでは、ブロックノイズが起きている部分がある一方で、VVCでは破たんなく表示していることを紹介している。
NHKもVVC標準化に協力しており、これまで行なった技術提案が実際に採用されているという。規格化には日米や欧州、韓国や台湾などが参加しており、特に積極的なのは新技術への投資意欲が高い中国だという。
NHKは「次世代地上放送」として、スーパーハイビジョンを地上波で実現することを目指して研究開発を続けている。現在は東京タワーを含む東京地区と名古屋地区で、大規模な野外実験を実施中。この実験で使われているのはHEVCだが、衛星放送よりも低いビットレートが求められる地上波放送において、VVCを今後の有力な技術と位置づけ、圧縮効率の向上などを目指して今後も開発を進めるという。