ニュース
「ミッドウェイ」公開イベント。「日本軍を“敵”ではなく“人間”として描いた」
2020年9月14日 15:37
「インデペンデンス・デイ」のローランド・エメリッヒ監督が、日本の運命を決した歴史的海戦を20年に及ぶリサーチを経て鮮明に描いた映画「ミッドウェイ」。9月11日の公開初日に合わせ、本作出演の豊川悦司らが登壇した公開記念トークイベントが開催された。
未曾有の戦いとなった第二次世界大戦の中でも、歴史を左右するターニングポイントとなった激戦として知られるミッドウェイ海戦。激突したのは、日本とアメリカ。
1942年、北太平洋のハワイ諸島北西のミッドウェイ島に、巨大な航空母艦、世界最大の大和を含む超弩級の戦艦、戦闘機、急降下爆撃機、潜水艦が出動し、空中、海上、海中、そのすべてが戦場となった。そしてそこには、両軍ともに、国を愛し、覚悟を持って戦った男たちがいた…。
司令官たちの緊迫した頭脳戦、パイロットたちの壮絶な空中戦、彼らを船上から迎え撃つ決死の海上戦による運命の3日間──何が、彼らの勝敗を分けたのか…?
トークイベントには、豊川悦司と國村隼が登壇し、浅野忠信はZoomにてリモート参加。さらに、パトリック・ウィルソン、ローランド・エメリッヒ監督からビデオメッセージも寄せられた。
はじめに、歴史上に実在した人物を演じるにあたって、どのような気持ちで参加したかについて、山本五十六役を演じた豊川悦司は「ほとんどの日本人が知っている、歴史上の素晴らしい人物。(そんな方と)自分の中で類似点を見いだせなかったので、最初にオファーをいただいた時はびっくりした」と当時の心境を語る。
役作りでは、「色んな文献の他に、偉大な大先輩方が過去に山本五十六を演じているので、どのように役に対峙していったのかを見られたのがよかった」と振り返る。
山口多聞を演じた浅野忠信は、「多聞さんは、最後まで冷静に生きた人で尊敬している。インターネットでも、彼の事は色々調べました」と語り、さらに「多聞さんのお墓参りに行って、気持ちを高めた」と驚きの役作りを明かした。
南雲忠一を演じた國村隼は、「お二人の話を、羨ましいなと思って聞いていました。南雲さんって“お前があかんやろ”と言われることが多い人なので」と会場の笑いを誘い、真面目な表情で「彼がいかにして判断ミスを下してしまったのか、というのを糸口に私の想像を交えて演じてみました」と語った。
3人での共演シーンについては、「正直楽しかったというか、安心して演じられた」と豊川。浅野も同調し「お二人との共演は心強かった。役者としての先輩が、(作品の中でも)先輩の役を演じてくれているので」と振り返り、國村は「ハリウッド映画を撮っている気がしなくて、おかしな感覚だった」と振り返った。
ハリウッド映画のロケについて、とにかくスケール感に驚いたと話す豊川は「ボウリングができるんじゃないかというぐらいの巨大なセットで撮影し、ローランド監督がCGをはめ込んだ映像をその場で見せてくれて、すんなりと入り込めた」と撮影を振り返る。
浅野は「艦の甲板でのシーンはすごく印象に残っている。重要なシーンで監督も力が入っていましたし、疑似的にその時間を体験したような感覚でした」と語った。
國村は「(過去出演作で)色んな特殊効果を見てきたが、すごい装置を見ました。バズーカ砲みたいなセットで、(爆弾が着水したとされる時に)10mぐらいの水柱をぶち上げるんです」と身振り手振りを交えて話し、その時はエメリッヒ監督もテンションが上がっていたと明かす。しかし、「CGではない、本当の水柱を作るのは良かったのだが、その水柱が痛すぎてびっくりしました」と暴露。
そして、アメリカ海軍の分析官[エドウィン・レイトン少佐]を演じ、豊川悦司との共演シーンもある、パトリック・ウィルソンからビデオメッセージが到着し、スクリーンに映し出された。
パトリックは“こんにちは”と日本語であいさつし、「この映画は日米両方の視点を大事にしている作品だ。アメリカと日本の海軍を丁寧に描きこれまでにない戦争映画が完成した。ぜひその点に着目してほしい」と見どころを熱弁。さらに、パトリック自身が最も心を動かされたシーンの1つに、日本軍を描いたシーンを挙げて「日本人俳優の活躍は本当に素晴らしかったと思う」と絶賛。続けて、「悦司の英語は見事だが僕の日本語は全然ダメだ。ぜひ大目に見てほしい」と冗談交じりに語った。
ローランド・エメリッヒ監督からもビデオメッセージが到着し、スクリーンに投影された。
「この映画を撮る時、僕が重要視したのは日本軍を単なる“敵”ではなく“人間”として描くことだった」と日本人の気質に感銘を受けたことなどを振り返りながら、「これは大事なことだから、本当は直接お話ししたかった」と、日本に行けなかったことを本当に残念だというエメリッヒ。
配役については、豊川悦司が山本五十六役というのに驚いた人も多かったと振り返り、「彼の素顔には軍人の雰囲気はない。だが悦司には、とても知的な雰囲気があり高貴さを感じさせる俳優だから、山本五十六役にぴったりだ」と人物描写への監督のこだわりを明かした。浅野忠信、國村隼については、元々知っていて、「何の迷いもなく決めていた。自分の役を完璧に演じてくれたね」と語った。
続けて、「だからこそ、僕が楽しみにしているのが日本の人たちの反応なんだ。とにかく、この作品はアメリカを初めとする世界の観客向けに漫然と撮った映画じゃない。アメリカと日本の観客が対象だ。目指したのは両軍に対する敬意を表することだ。ぜひ、この作品を楽しんでほしい」と日本での公開を喜び、熱いメッセージを贈った。
このメッセージを受けて豊川は、「ハワイプレミアに参加した時に、向こうのスタッフ・キャスト陣は日本人がどう感じたかをすごく気にしていた」と、ミッドウェイ海戦を描く上で、日本側の視点が重要だという考えを持っていた事を明かした。
そして、戦後75年の節目に、本作をどのように観てほしいかという質問に、國村は「両親を通して、戦争の話を聞いているのは、僕ら世代が最後かもしれない。このミッドウェイ海戦を通して、戦争なんか起こした者たちの愚かさを感じたり、戦争そのものを知ってもらえたらなと思います」と語った。
最後に、豊川は「映画からたくさんのことを学んだ。楽しみながら学べるのは本当に映画のいいところ。このミッドウェイを観て、楽しみながら何かを感じていただけるとありがたいです」と語った。
あらすじ
1941年12月7日(日本時間12月8日)の日本軍による真珠湾への奇襲攻撃。戦争の早期終結を狙う山本五十六大将の命により、山口多聞や南雲忠一がアメリカ艦隊に攻撃を仕掛けたのだ。
大打撃を受けたアメリカ海軍は、新たな太平洋艦隊司令長官に、兵士の士気高揚に長けたチェスター・ニミッツを立てた。両国の一歩も引かない攻防が始まる中、日本本土の爆撃に成功したアメリカ軍の脅威に焦る日本軍は、大戦力を投入した次なる戦いを計画する。
真珠湾の反省から、日本軍の暗号解読など情報戦に注力したアメリカ軍。情報部のレイトン少佐が、次の目的地をミッドウェイと分析、限られた全戦力を集中した逆襲に勝負を賭ける。
遂に、アメリカ軍のカリスマパイロット、ディック率いる爆撃機が出撃。空母、
軍艦、潜水艦、戦闘機など、あらゆる近代兵器を駆使した壮絶な激突へのカウントダウンが始まった─。
作品概要
監督・製作:ローランド・エメリッヒ
脚本:ウェス・トゥーク
製作:ハラルド・クローサー
キャスト:エド・スクライン、パトリック・ウィルソン、ルーク・エヴァンス、豊川悦司、浅野忠信、國村隼、マンディ・ムーア、デニス・クエイド、ウディ・ハレルソン