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ディープオーシャン8K深海撮影システムや疲れにくいHMD、NHK技研公開&NHK TECK WEEK 28日から
2026年5月26日 18:39
NHKは、技術部門の二大公開イベント「技研公開2026」と「TECH EXPO 2026」を同時開催する「NHK TECK WEEK」を、5月28日~31日に世田谷区・砧のNHK放送技術研究所で開催する。開幕に先立ち、26日にメディア向け説明会が行なわれた。
今年の技研公開のテーマは「拓く、支える、これからも」。開催時間は全日10時~17時で入場無料、事前予約不要。ただし終了30分前までに来場するよう呼びかけられている。
今年は、これまでNHK放送センターで開催してきた「NHK TECH EXPO」を初めて同時開催。この期間を「NHK TECH WEEK」と銘打ち、10年・20年先を見据えた最先端の「研究成果」から全国の放送現場で磨かれた実践的な「知恵」まで「NHKの技術力をワンストップで体感できる」としている。
「NHK TECH EXPO」は放送現場ならではのアイデアや創意工夫から生まれた機材、放送・デジタル・視聴者サービスの手法など、技術の取り組みを幅広く紹介するもの。今年は「つながる知恵、ひろがる技術」がテーマ。
技研の神田菊文所長は技研公開とNHK TECH EXPOの同時開催について「最先端の研究成果から放送現場の実践的な知恵まで、ワンストップでぜひ体感していただきたい」としている。
“長時間でも疲れにくい”ライトフィールドHMD
今年の技研公開では、光学系を薄型化し、3次元映像の解像度を高めたライトフィールドHMD(ヘッドマウントディスプレイ)が展示された。今後は光学系の改善と3次元映像の高精細化、視野角拡大を図り、2035年ごろの実用化を目指す。
技研では、実世界に近い自然な見え方で、視覚疲労の少ないVR体験の実現を目指し、「ライトフィールド方式」のHMD開発を進めてきた。
一般的なVRゴーグルは、2枚のディスプレイの映像を、それぞれレンズで遠方に拡大表示し、左右の目に少しずれた映像(視差)を見せることで立体感を作り出している。しかし、この二眼方式には“視覚疲労”という課題がある。
映像上の物体が前後に動いても、目のピント(焦点)はレンズで拡大されたディスプレイの位置に固定されたままになるため、「視差によって知覚される奥行き位置」と「目のピントを合わせている位置」が一致しない。これがVRゴーグル使用時の疲労や不快感の要因になると考えられている。
技研が採用しているライトフィールド方式は、物体から放たれて目に到達する“光線の集まり”を再現する技術。実世界で物を見るときと同じように、見たい位置に目のピントを合わせることができるメリットがあり、「長時間視聴しても疲れにくい」「自然な3次元映像の表示が可能になる」と期待されている。
ただし、従来のライトフィールドHMDはディスプレイとレンズアレイで一度空中に中間像を形成し、それを接眼レンズで拡大することで遠方に3次元映像を表示する仕組みのため、レンズアレイと接眼レンズの間に約4cmの間隔が必要となり、装置自体が大きくなるという課題があった。
今回、技研はこのレンズアレイと接眼レンズを接触配置する新しい光学系を考案。レンズアレイと接眼レンズを接触配置することで、実質的に1枚の光学素子として機能させることで、光線制御と集光を同時に実現。
さらに、この光学系に最適化した要素画像群の生成手法も組み合わせることで、中間像を介さず、直接3次元映像を目に届けることに成功。光学系の薄型化を同時に実現し、奥行きを従来比で79%削減したという。
この薄型化に加え、高精細マイクロディスプレイを採用。さらに、膨大な光線の計算を高速で行なう「レイトレーシング技術」による要素画像の高速生成と組み合わせることで、高精細な3次元映像をリアルタイムに表示できるようにした。
会場では、実際にライトフィールドHMDを使った映像体験も実施。HMDの構造を紹介する映像を観ながら“長時間でも疲れにくい”というライトフィールドHMDを体感できる。
フルカラーの3次元像を空中表示する「フルカラー透明ホログラム」
東京科学大学と共同で開発した、透明なガラス基板越しに「フルカラー3次元像」を表示する新たなホログラム作成手法も展示されている。
技研では、特別な眼鏡を必要としない高精細な3次元ディスプレーの実現を目指し、光の性質を忠実に再現する「ホログラフィー」による3次元像表示技術の研究を進めている。
今回開発された技術は、いくつか存在するホログラム作製手法のうち「表面レリーフ型ホログラム」と呼ばれる手法を応用したもの。
「表面レリーフ型ホログラム」は基板の表面に微細な凹凸構造を作ることで光を曲げる仕組みで、比較的大きな静止画の3次元像を広い視域で表示できる一方、光の散乱(基板の白濁)と、フルカラー化の複雑さという2つの大きな課題があった。
今回の研究では、ホログラムの設計手法を根本から見直すことで、これらの課題を解決。
表面レリーフ型ホログラムの設計には光の位相(波のズレ)を用いることが一般的だったが、新たに光の「振幅(波の大きさ)」も活用する設計手法を導入した。
これにより、従来は深さ約1μmだった基板表面の凹凸を約0.5μmという「浅い段差」かつ「滑らかに連続する形状」にすることが可能になり、その結果、余計な光の散乱が大幅に抑えられ、ガラスのような高い透明性を維持することに成功したという。
また、1枚のホログラムで、赤・緑・青の各色に対応した光を別々の方向から照射し、各色の3次元像を同じ位置に重ね合わせる技術も確立した。複数のホログラムやカラーフィルターを重ねることなく、1枚の薄い加工面だけで鮮明なカラー3次元像を表示できる、シンプルで高透過な構造を実現した。
新しい設計手法は、従来と比べて計算負荷がほとんど増えない一方で、これまで利用されていなかった光の振幅分布も利用するため、3次元像の画質向上も達成したとのこと。
試作されたホログラムは、約12cm角のサイズに、約600億ピクセル(245,760×245,760)を配置。ピクセルの間隔は0.5μm(1mmの2,000分の1)という細かさになっている。また、凹凸構造の高さを32段階で細かく調節することで段差の不連続性を抑え、より精密に光の情報を再現できるようにした。
透明化とカラー化の新設計に伴い視域(見える範囲)は制限されるが、観察に十分な視域を確保。視点移動に伴って像が滑らかに変化する、ホログラフィーならではの自然な立体感を実現した。
今後は、ホログラフィーによる3次元映像表示システムの応用例を具体化するとともに、表示デバイスの開発を進め、2030年ごろにフルカラー動画表示を実現するとしている。
そのほか会場では、2枚の小型8K×8Kセンサーを組み合わせ、15Kの360度撮影を可能にしたライブ出力対応カメラや、既存の基地局を使って空撮映像を伝送する「空飛ぶロボカメ」、上空に自営のIP回線を構築する「IP回線中継ドローン」を紹介。
さらにNHK放送博物館の所蔵品から、電波を送る送信管や、映像を映す受像管、映像を捉える撮像管など、放送の発展を支えた貴重な真空管も展示されている。
「ディープオーシャン」で活躍した8K深海撮影システムも
併催されている「NHK TECH EXPO」では、『NHKスペシャル「ディープオーシャン 幻のシーラカンス王国」』や『NHKスペシャル「ディープオーシャンII 紅海 世界初!深海の魔境に挑む」』で使われた「8K深海撮影システム」(メディア技術局 コンテンツテクノロジーセンター)が紹介されていた。
スキューバダイビングでは到達困難な深海の生き物や景観を撮影するため、潜水艇の内部からフルリモートで8Kカメラを制御できる撮影システム。カメラマンが乗る潜水艇と、8Kカメラを収納した防水ハウジングを光ケーブル1本で接続。カメラ制御とレンズ制御、8K映像信号を多重化して伝送している。
また海洋生物撮影の経験を活かし、被写体とレンズの距離を5mと想定し、その撮影距離で最高画質が得られるように設計したとのこと。
映像収録は潜水艇内部で行なっており、これにより記録メディアの交換、機材トラブルにも迅速に対応できるという。
防水ハウジングは水深1,000mまで耐えられるようになっており、水圧に耐えられるよう、レンズ外側にあたるアクリル部はドーム型になっている。このまま撮影するとドーム形状の影響を受け、撮影映像が魚眼レンズのように歪んでしまう。
そこで歪みを打ち消すべく、別途凹型の専用補正レンズを開発しカメラに装着。8Kクオリティの映像記録を実現したという
そのほかNHK TECH EXPOでは、被写体を検知するAIと距離を計測するLiDARセンサーを活用し、カメラマンが意図した部分に正確にフォーカスを合わせられる「フォーカスアシストシステム」(仙台放送局/メディア技術局)、スポーツ中継映像をAIで解析し、動画編集作業を効率化するスポーツ動画編集アシストAIアプリ「TORCH」(メディア技術局コンテンツテクノロジーセンター/メディア総局/報道局)なども紹介されている。

























