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5K&広視野角で手元確認も可能! JVC「ヘッドマウントディスプレイ」を試した

ヘッドマウントディスプレイ(試作機)

JVCケンウッドは、5K相当の高い解像度と、左右120度の広い視野角を備えたヘッドマウントディスプレイ(HMD)を開発、試作機をメディアに公開した。現在開発中で最終仕様や価格などは未定だが、シミュレータやデザインレビューなど、業務用途での展開を視野に商品化を目指す。

試作機は、片目2,560×1,440ドット、両眼5,120×1,440ドットの5K解像度を実現した、同社初のHMD。表示デバイスには、5.5型の液晶パネルを2枚使用している。

側面

目の前にある表示デバイスをレンズ越しに見る一般的なHMDと異なり、独自の“ミラー方式”を採用するのがJVCモデルの特徴。

左目用・右目用の液晶パネルはヘッドマウント上面に搭載されていて、下向きに表示したデバイスの映像が偏光板で折り曲がってミラーに投影。ヘッドマウント装着者は、ミラーに映った映像を偏光板越しに見る仕組みとなる。

レンズ方式とミラー方式の比較

同社は「レンズを使った従来方式の場合、中央はいいが周辺解像度が甘かったり、色収差による滲みが発生するなど、画質的な課題を抱えていた。またレンズを介して映像を見るため、まるで双眼鏡を覗いているような狭い視野もネックだった。ミラー方式は非常にシンプルな構成ながら、原理上、周辺の解像度低下や収差が発生せず画質面で有利。またミラー投影により左右120度・垂直45度の視野角を実現し、装着しながらでも自然な視野角が得られる。アイボックスも大きいため、自然な見え方で長時間の訓練・トレーニングにおいても目の疲れを軽減できる」とメリットを説明する。

開発したヘッドマウントディスプレイの主な特徴

映像を投影するミラー部分が透過仕様になっていて、目の前に設置した機器類を目視できるのも本機の特徴。

HMDを使ったシミュレーションでは、目の前にある計器やハンドル、自身の手までもフルCGで描かれ、違和感や表示遅延などが課題だったが、前方をハーフミラー、そして下部をシースルーパネル化。結果、HMDを装着しながらでも肉眼での手元確認が行なえるようになり、シミュレーションや訓練効果が向上。遠隔操作等の用途においても、遅延のないダイレクトな操作を実現できるとしている。

想定する用途

展開としては、ドライブやフライトなどのシミュレータや、インテリア・建築・都市計画などのデザインレビュー、医療・重機の遠隔操作、建築・都市デザインの設計支援などの業務用途を想定。「商品化する場合も、おそらくは3ケタ万円程度にはなるだろう」という。

上面
背面

メガネの上からでも広い視野角。解像度高く、疲労感は感じない

筐体サイズは約280×140×135mmで、バンドやケーブル類除く重量は595g。

5.5型の液晶パネルと偏光板が左右それぞれ入っていることもあって、横幅28cmという筐体はお世辞にも小さいとは言えない。サイズに加え、銀色に輝く大きなミラーも相まって、外観はなかなかのインパクト。ただ、後頭部のダイヤルを回してヘッドマウントを頭部にはめると、強烈な見た目から想像するような重量は感じない。

「額部分にもパッドを仕込むなど、装着した際の重量感やバランスを考慮した設計とした。あくまで試作機であり、商品化に向けては煮詰める必要はある。重量500gオーバーという部分は、業務用途においては特段ネックにはならないのではないか」という。

トラッキングは、Steam VR Trackingを利用。筐体にはトラッキング用のセンサーが約20個埋め込まれており、頭部の動きを左右2カ所に設置した赤外線センサーが検知。頭部の動きに応じた映像を、PCがリアルタイムにレンダリングするようになっている。6DoFにも対応。PCとヘッドマウントディスプレイの接続には、DisplayPort 1.2、およびUSB 2.0を2系統使用している。

ヘッドマウント内側。
前方両サイドの三脚に載っているのが赤外線センサー

体験したのは、ヘリのフライトシミュレータと、ドライブシミュレータの2種類。

装着して驚いたのは、視界の広さ。従来HMDのような“映像を覗き込む”感覚は皆無で、左右一杯に映像が広がる。現実世界の見え方に近い視野角が実現できていて、体感的には水平120度以上あるのでは? と思ったほど。

両眼5Kの映像も非常にクリアで、パネルの画素格子も見えない。レンズレスのため、頭を固定したまま、目線を上下左右に動かしても、周辺解像度の低下や色ズレが無い。常時メガネを装着している筆者の場合、HMDを装着するとメガネとヘッドマウント側レンズのベストポジションを取るのに苦労したが、JVCモデルではそうした煩わしさがないのも美点と感じた。

視線を手元に移すと、下部のシースルーパネルを通して、スロットルと操縦桿が確認できる。ヘッドマウントを装着したまま、手元が確認できるのは有り難いし、自身の手がCGになって違和感を感じることもない。正面のミラーもハーフミラーであるため、シミュレータ映像の背景に現実世界がうっすらと見えるが、黒壁を前にプレイすれば背景はほぼ気にならなかった。

ヘッドマウントの裏側。黒く見えるのが、シースルーパネル
ミラー部を外側から撮影した写真。上面に平たく見えるのが、液晶パネル。写真中央の斜めに見えるスリットが偏光板

視野角が広く、高解像度なこともあってか、環状線を走るドライブシミュレータは非常にリアル。カーブや車道を走る感覚、併走する車や高架下分岐までの距離感など、現実に車を運転している際の見え方に近い。試作機のフレームレートは60Hz(最大72Hz)だったが、これを倍に上げれば一層快適になるだろう。

何よりも、視野角の狭さからくる閉塞感や低解像度、色ズレといったストレスもなく、プレイ中、そしてプレイ後の疲労感がほとんどないのは大きな魅力。多少動きの激しいプレイでも、映像酔いも少ないと思う。

あくまで業務用途を想定した製品であるため、民生での展開はハードルが高そうだが、アーケード機器や施設型VRなどに導入されれば人気を集めそうだ。

試作機の仕様