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“特撮の神様”円谷英二、幻の映画「かぐや姫」発見、上映へ

(C)円谷

「ウルトラマン」や「ゴジラ」といった世界的作品を世に送り出した、“特撮の神様”円谷英二氏の生誕120周年を記念した特別イベントが、同氏の誕生日7月7日に開催。イベントレポートが到着した。

イベントでは、国立映画アーカイブ主催、円谷プロダクション特別協力により、8月17日より「生誕120年 円谷英二展」の開催決定と、円谷英二が特撮に足を踏み入れる以前、本編カメラマンとして活躍していた頃の作品で、長い間失われていた幻のフィルム「かぐや姫」の短縮版(1936)が、イギリスで発掘され、凱旋上映が決定したことが発表された。

イベントに登壇した国立映画アーカイブ館長 岡島尚志氏、展示・資料室長主任研究員 岡田秀則氏、映画室長主任研究員 大傍正規氏より「かぐや姫」発見、上映までの経緯が語られ、円谷プロダクション代表取締役会長兼CEO 塚越隆行氏より円谷英二生誕120年、そしてウルトラマン55周年についての想いが語られた。

岡島氏は「このイベントは日本における特撮技術の創始者・円谷英二の生誕120周年をお祝いするものでございます。また、この度の映画『かぐや姫』の発見は国際的な連携が良い形で実った一例と言えると考えております。長年の収集事業の成果が活かされた展覧会で展示される数々の怪獣映画、SF映画のポスターなども、私共の地道なアーカイブ活動の成果であり、円谷英二という巨人の業績を雄弁に語ってくれるものとなっているかと思います」と、関係者への感謝を語るとともに、展覧会への自信を見せた。

塚越氏は「円谷プロダクションの創業者である円谷英二の生誕 120 周年の年に、円谷英二展を開催し、かぐや姫を上映できることを大変嬉しく思います。また今年はウルトラマンの誕生から55年目という年でもありますので、このタイミングで皆さまにお届け出来る意味を感じております。この企画が沢山の皆さんに円谷英二監督の偉業を知って頂く機会になれたらと思います。また『かぐや姫』は後に“特撮の神様”と呼ばれる円谷英二監督の若き日の作品という事で、随所に後の特撮作品に繋がってくる創意が観られます。こちらの作品も多くの方に観て頂ければと思います」と挨拶。

また同日午前中に福島県須賀川市で同市出身の1964年東京五輪でマラソン銅メダルに輝いた円谷幸吉選手(1940~68年)と円谷英二監督に名誉市民の称号を授与する授賞式が実施されたことについても語った。

更に特別ゲストとして円谷英二監督の三男である円谷粲(あきら)氏が登壇し、「120年経っても円谷英二が忘れられずに、残した功績を祝ってくれるということを、大変有難く思います。感謝に堪えません。120年も生きた実績があるというのは大したものだなと思います。この年になると(父・英二)から何を言われたか思い出せませんが、こうした展覧会などを通して、再度インプットしつつ、新しい人達が何か得られることを出来ればと思います」と挨拶の言葉を述べ、会見は終了した。

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「生誕120年 円谷英二展」の開催情報

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「生誕120年 円谷英二展」は、国立映画アーカイブの7階展示室にて開催される。会期は8月17日から11月23日まで。主催は 国立映画アーカイブ、須賀川市。特別協力は円谷プロダクション。観覧料は一般250円、大学生130円。65歳以上・高校生以下及び18歳未満、障害者(付添者は原則1名まで)、国立映画アーカイブのキャンパスメンバーズは無料。

開室時間は午前11時から午後6時30分で、毎月末金曜日は午後8時まで開室する。なお、入室はそれぞれ閉室時間の30分前まで。月曜日、9月7日~10日、9月26日~10月3日、10月12日~15日は休室となる。

展示は、第1章「若き映画キャメラマンとして」、第2章「特撮への志」、第3章「東宝特撮の時代」、第4章「円谷プロの創設」で構成。

見どころとしては、「特撮の父」としての仕事だけでなく、キャメラマンとして時代劇映画の撮影で独自の地位を築いた前半生のキャリアに注目した貴重な資料を展示されているほか、イギリスの英国映画協会(BFI)で見つかった円谷英二撮影作品「かぐや姫」の一部を展示室内のモニターで上映。

8枚組の「モスラ」(1961年)、3枚組の「世界大戦争」(1961年)や「キングコング対ゴジラ」(1962年)など公開当時の貴重なポスターの数々も展示。須賀川特撮アーカイブセンターから、お馴染みの東宝マークを撮影するための機材や「青島要塞爆撃命令」(1963年)に使われた輸送列車ミニチュアの貨車の台車などが出品されている。

「かぐや姫」の上映企画も決定。9月4日、5日に国立映画アーカイブの地下1階小ホールにて実施する。詳細は後日Webページにて発表される。

円谷英二氏の出身地、福島県須賀川市でも生誕120年を記念する展覧会が開催される。開場は須賀川市文化センター 小ホール。会期は12月18日から2022年1月30日。

映画「かぐや姫」[短縮版]の発掘経緯

イギリスで発見された、J.O.スタヂオ製作によるトーキー音楽映画「かぐや姫」(国内公開 1935年、監督:田中喜次、撮影:円谷英二)の海外向け短縮版がイギリスに渡った経緯は、ロンドン日本協会(ジャパン・ソサエティ)からの依頼から始まる。

ロンドン日本協会が1936年に英国人や現地邦人向けの上映会を企画し、在英日本大使館が「日本の可憐な伝説、童話を題材にした映画がほしい」と依頼。同大使館から相談を受けた外務省が国際映画協会に作品選定を委嘱。同協会が「かぐや姫」を選定し、冒頭に英語字幕による解説を付した短縮版が作成された。

2015年5月に、ロンドン在住の映画史研究家ロジャー・メイシー氏から 、英国映画協会(BFI)に本作の可燃性ポジフィルムが現存しているという情報が寄せられたことから、同年10月より、国立映画アーカイブの研究員がBFIの保存センターで現物調査を実施。

その結果、当時日本映画を通じて文化振興を行なっていた国際映画協会の監修により、1936年11月に作成された「かぐや姫」[短縮版]であることが明らかになり、およそ6年にわたるBFIとの収集交渉を経て、「かぐや姫」[短縮版]を不燃化したフィルムの里帰りが実現した。