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幕張メッセとオンラインの“ハイブリッド”開催「新時代のInterBEE」とは

音と映像と通信のプロフェッショナル展として、電子情報技術産業協会(JEITA)が毎年開催している「Inter BEE」。昨年はオンラインでの開催となったが、今年の「Inter BEE 2021」は11月17日~19日幕張メッセのリアル会場でも開催(オンラインは12月17日まで開催)。オンラインも活用したハイブリッドなイベントとして、「新しい時代のInter BEE」を目指すという。どのようなイベントになるのか、新型コロナウイルス感染症にはどのような対策で臨むのかを取材した。

話を伺ったのは、Inter BEE エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏と、Inter BEE ディレクターの小田佳代子氏だ。

オフラインの良さと、オンラインの良さを組み合わせる

Inter BEE エグゼクティブプロデューサーの鹿野清氏

鹿野氏は、昨年のオンライン開催を「不安も抱えながら、初めてのトライとなりましたが、無事に開催できました。出展された皆さんにお話を伺ったり、アンケート結果を見ると、“オンラインでも結構できた”という声が多かった。映像で発表するカタチが多かったですが、映像コンテンツに携わっている企業さんが多いこともあり、作り込んだ映像が多かった」と振り返る。

その一方で、カメラなどの新製品に実際に触れて、感覚を確かめたいといったコアユーザーやエンジニアからの声も多く、2021年は幕張メッセでのリアル開催を決定。出展者の申し込み受け付けや、会場でのブースレイアウトなどを現在進めているところだという。

使用する幕張メッセのスペースは、2019年までは8ホールを使っていたが、今年は半分程度に縮小する予定。しかし、例年大きなブースを構えていた企業の多くが、リアル会場への出展を予定。リアルブース出展者の約9割は、これまでInter BEEに出展経験がある企業だという。

出展を決めた企業には、ブース展示に加えて、オンラインでの出展を可能にするツールをInter BEE側が提供。ブースに展示するのと同様の展示内容をオンラインにも掲載できる。技術や製品のデモを動画で流すこともできるほか、資料のダウンロードも可能。オンラインのブースを訪れた来場者の情報を、出展企業側が取得できるようにし、後から来場者とやりとりをするといった事も可能にする。

オンラインの会期は、リアルイベントが11月19日までなのに対し、12月17日まで開催される。期間中であれば、各社のオンライン出展ページを見たり、公演の動画を再度視聴するといった事も可能。「(オフラインとオンライン)両方の会場をフル活用していただく事で、効果を上げて欲しいと考えています。また、オフライン参加は難しいけれど、Inter BEEのユーザーにアクセスしたいという出展者さん向けには、オンライン出展限定のプランも用意しています」(小田氏)。

「昨年に構築したオンラインのプラットフォームを今年も活用して、オフラインとオンライン、両方の良さを組み合わせたイベントにしていきたいと考えています」(鹿野氏)。

展示の構成も、オフライン・オンラインで同じにしている。具体的には、スタジオ・ライブ・イベント施設や様々な音楽シーンに対応する「プロオーディオ部門」、メディア演出や新体験技術を集めた「映像表現/プロライティング部門」、映像・放送プロダクションの進化やその潮流を体験できる「映像制作/放送関連機材部門」、メディアとコミュニケーションフィールドの拡張・進化の最先端がわかる「ICT/クロスメディア部門」だ。

さらに、特別企画やコンファレンスも豊富に用意。放送業界で普及が進むIP伝送の付加価値を提供できる「IP PAVILION」や、ディスプレイを背景として映画などを撮影する“インカメラVFX”等を紹介予定の「Inter BEE CREATIVE」など、“体験”が重要なものはフィジカルで開催する。

鹿野氏は、IP伝送により「放送と通信の融合が現実化しているが、この数年来の動きの集大成として、融合する事でどういった事ができるのか、視聴者の皆様が得られる付加価値を含めて紹介したい」と、見どころを語る。

例年イベントホールで開催していた“スピーカー試聴体験デモ”が人気だったという「音響セッション」については、今年は試聴デモは見送られる事になった。しかし、「音を体験していただきたい気持ちはあり、何らかの体験ができるデモを、企画内で用意したり、デモしながら公演をするなど、オンラインでやるかリアルでやるかも含めて検討している段階」(小田氏)だという。

Inter BEE ディレクターの小田佳代子氏

放送局や省庁、関連団体らが登壇する基調講演や、企画セッションなどはオンラインで開催するなど、それぞれの利点を活かした企画を実施。双方の来場誘致に繋げていく。

なお、幕張の会場では、コンテンツを生み出す技術や、デジタルコンテンツをテーマとした「デジタルコンテンツエキスポ 2021」も同時開催される。

「Inter BEEは歴史はあるものの、以前は放送局さん一辺倒という面が強く、3年ほど前からコンテンツも軸にしたいと考え、エンターテイメント性も重要視し、いろいろな模索をしていました。そこに、デジタルコンテンツエキスポさんからご提案をいただいて共同開催をするようになり、良い意味で(2つのイベントが)うまく融合しています。デジタルコンテンツエキスポにはクリエイターや学生など、比較的若い方が多く参加されていて、Inter BEEはスーツ姿の方が多く、デジコンはTシャツの方が多いという、面白いコントラストも生まれていました。今年も、うまくお互いの良さを活かして開催したいと考えています」(鹿野氏)という。

感染拡大防止対策も徹底し「新しい時代のInter BEEへ」

オフラインでも開催するにあたり、「最も大事にすべきことは衛生面。主催者として感染拡大防止に向けて万全の対策をとる」(鹿野氏)という。

具体的には、入場時の手指消毒、検温の実施、マスクの常時着用といった施策だけでなく、ブースレイアウトも、三密を避ける事を重視。出展企業にも、ブース内で密を避けられるようなレイアウトにする事を依頼。各ブースにも消毒液を設置したり、展示製品などの消毒、換気なども徹底。ブース内スタッフや関係者の健康管理や、搬入時間短縮・人員削減といった工夫も求めるとのこと。

鹿野氏は、「(単に)幕張でリアルイベントを開催すれば良いという事ではなく、そこにオンラインの付加価値をどう組み合わせるのか、これがInter BEEを主催する我々にとって重要なポイントです。また、(オンライン会場もあれば)例え何かあった時にも、オンラインというバックアップがあるという事は、出展者様にもご安心いただけるのではないかと考えています。我々は今年のInter BEEを、“新しい時代のInter BEEへのトライアル”と考えています。(以前のリアルイベントだけのカタチに)戻るのではなく、昨年培ったノウハウを活かし、新しいカタチのInter BEEを目指します」と語った。