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ソニーのドローンは“撮りたい画が撮れる”。「Airpeak S1」飛行デモ

「Airpeak S1」

ソニーは11月25日、フルサイズミラーレス一眼カメラ「α」を搭載できるドローン「Airpeak S1」の飛行デモンストレーションを実施し、その飛行性能や安全性能、自動飛行性能を披露した。

ソニー「Airpeak S1」飛行デモ

Airpeak S1は、「α」シリーズを搭載可能なドローンとして世界最小クラスを実現したもので、映像制作クリエイターなどのプロ向けに販売されている。価格はオープンプライス。実売価格は110万円前後。9月に受注開始されており、出荷も始まっている。搭載するカメラやジンバルは別売。

開発を手掛けたのはソニーグループのAIロボティクスビジネスグループで、同グループにとって犬型エンタテインメントロボットのaibo、電気自動車のVISION Sに続く、第3弾製品となる。

飛行性能の特徴は、最高時速90kmで飛行できることに加え、最大20m/sの耐風性能を備えていること。激しい風が吹いている状況でも安定してダイナミックな空撮ができる。またα搭載可能ドローンとして世界最小クラスの機体により、旋回性能や機敏性も確保されており、「小回りの効いた画作りができ、クリエイターの撮りたい画が撮れる」(ソニー担当者)という。

デモンストレーションではα7S III+SEL24F14GMがマウントされていた

ドローンにαシリーズを搭載することで、映像制作の幅が広がるだけでなく、「例えば普段の撮影で(シネマカメラの)VENICEを使っていれば、空撮時も(VENICEと同じ)S-Log3で撮影ができる。そのためポストプロダクション時に同じLUT(ルックアップテーブル)を使うことができ、作業効率が改善される」といった利点も産まれるとのこと。また「写真撮影用途に使う場合はα7R IV、8Kを撮るならα1、ペイロードを軽くして飛行時間を長くするならα7c」といった使い分けもできる。今回のデモンストレーションではα7S III+SEL24F14GMがマウントされていた。

機首にはFPVカメラとセンシング用のステレオカメラを搭載
機体下部にもセンシング用カメラと赤外線センサーを備える

安全性能では、機体の前後左右と下方向にソニー製イメージセンサーを内蔵したステレオカメラを搭載。機体上下には赤外線測距センサーも備えており、これらのセンサーを使って機体の周囲環境をリアルタイムに3Dモデリングして自己位置を把握、低空やGNSSを受信しづらい条件下でも安定した飛行を実現している。これらのセンシング機能を使って障害物検知によるブレーキ機能なども利用できる。

自動飛行では、あらかじめ飛行経路を作成する際に直線だけでなく、曲線でも航路を作成でき、「実際に撮りたい画に近い」飛行経路を設定できる。過去のフライトログから飛行、撮影をトレースする「再現飛行」もできる。飛行経路の作成にはWebアプリ「Airpeak Base」を使用する。

「Airpeak S1」用のバッテリーパック

ドローンには容量2,518mAhのバッテリーパックを2個搭載することで、ペイロードなしで約22分、今回のα7S II+SEL24F14GM搭載時で約12分の飛行が可能。バッテリーを1個ずつ交換することでホットスワップもできる。なお、バッテリーパック1個では飛行できず、ドローン側からは搭載したカメラ側に電源供給もされない。バッテリー残量が少なくなった場合や通信が途切れた場合などにはRTH(Return to Home)機能が作動する。

着脱式のプロペラ。強度確保のため折りたたみはできない
脚部には球体形状のダンパーも搭載。内部にはオイルが充填されているとのこと

機体にはカーボン素材が使われており、強度が確保されている。開閉式のランディングギアは分割して持ち運ぶことが可能だが、それ以外の部分では、耐久性を確保するため折りたたみ機構などは備えていない。プロペラは着脱式だが、こちらも強度確保を目的に折りたたむ構造にはなっていない。

飛行時に使用するモバイルアプリ「Airpeak Flight」からは飛行距離やバッテリー残量の確認から設定変更まで幅広い操作ができるほか、搭載したαシリーズとも連携して、映像の確認や録画の開始・停止といった操作もできる。

送信機にはタブレット端末などを取り付けられる

機体を操作する送信機(RCR-VH1)には、モバイルアプリを起動したタブレットやスマートフォンを取付可能。HDMI出力も備えており、外部モニターに撮影中の映像を出力することもできる。

大型ながら小さい飛行ノイズに驚き。操作は「経験者はすぐに飛ばせる」簡単さ

実際に飛行デモを観て、まず驚かされたのが飛行時の静かさ。αシリーズを搭載できる世界最小クラスのサイズとは言え、DJIなどの他社製ドローンと比べると明らかに大型サイズなのだが、「ブーン」という飛行時のノイズからは大型ドローンが飛んでいるとは思えなかった。

今回は会場の関係で最高時速90kmでの飛行は行なわれなかったものの、フルサイズミラーレス一眼を搭載している機体とは思えない加速や機動力も披露された。デモンストレーションが行なわれた会場は風が強く、また盆地のような地形で風向きが安定しないコンディションだったが、そんな難コンディションでもつねに安定して飛行していた。

筆者はドローン操縦未経験のため、操縦体験はしなかったものの、担当者によれば「操作方法は他社製ドローンと大きく変わらないので、経験者であればボタン配置さえ把握すればすぐに飛ばせる」とのこと。

また事前にWebアプリから飛行経路を作成しておけば「極論、現地にパイロットがいなくても撮影できる」という。実際に、会場ではひょうたん型のプール外周を、あらかじめ指定された飛行経路に従ってドローンが自動飛行するデモンストレーションも披露された。