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JASRAC、ブロックチェーン活用の楽曲管理システムをテスト運用

ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能を備える楽曲情報管理システム「KENDRIX」

日本音楽著作権協会(JASRAC)は6月28日、ブロックチェーン技術を活用した存在証明機能を備える楽曲情報管理システム「KENDRIX」のクローズドβ版をリリースした。今後はeKYCを用いたオンライン完結型の契約機能等を実装し、2022年10月に誰でも無料で使える正式サービスを開始する予定。

KENDRIXは、「すべての音楽クリエイターがCreation Ecosystemに参画できる世界へ」というコンセプトのもと、音楽クリエイターが安心して楽曲を発表でき、適正な対価還元を受けるための各種手続きのハードルを下げることを目的としたクリエイターDXプラットフォーム。名称は「KENRI(権利)」と「DX(デジタルトランスフォーメーション)」のアナグラムとなっている。

音楽業界ではストリーミングサービスの定着に伴い、楽曲制作からマーケティング、ディストリビューションまでを自ら行なう個人の音楽クリエイター(DIYクリエイター)が増加している。しかし、DIYクリエイターには「音楽配信等から得られる収益とは別に、著作権管理団体等を通じて著作物使用料の分配を受けられる」ことが認識されていない、という実情があるという。

JASRACは、ソニーグループとのブロックチェーン技術活用に関する共同の取り組みの一環として、音楽クリエイターの楽曲管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた実証実験を行なっており、その実験を通じてDIYクリエイターには自身の楽曲の無断利用や、なりすまし公開に対する対抗手段がないこと、著作物使用料分配の仕組みやJASRACとの管理委託契約・楽曲登録が複雑・煩雑で、既存の著作権管理システムの利用はハードルが高いことなどの課題が明らかになったという。

これらの課題解決に向け、JASRACはブロックチェーン技術を用いた存在証明機能を備え、JASRACを含む音楽関係のさまざまなビジネスパートナーとのデータ連携、各種申請・登録や契約を定型化・簡素化して電子化する楽曲情報管理ツールの開発に着手。音楽クリエイターの協力を得ながら、リリースに向けて実証実験を重ねてきた。

「KENDRIX」の仕組み

クローズドβがスタートしたKENDRIXでは、音楽ファイル等を登録すると、以下の情報がブロックチェーンに登録される(制作途中の音源でも登録可能)。これにより、ある音源ファイルを、誰が、いつの時点で所有していたのか、という事実を客観的に証明できる。

ブロックチェーンに登録される情報

  • 音源ファイルのハッシュ値
  • タイムスタンプ
  • ユーザー情報、タイトルとバージョンの情報(一つの楽曲情報に対し、複数の音源ファイルを登録して、バージョン管理することが可能)
存在証明ページのイメージ

ブロックチェーンに登録された情報を表示する「存在証明ページ」を公開することも可能。動画配信プラットフォームやSNSで楽曲を公開する際、この存在証明ページの公開URLを添えることで、存在証明を取得している音楽クリエイターであることが第三者にも伝わるため、不正利用の抑止力になることが期待されるとのこと。

今後は、合計10組程度の音楽クリエイターがクローズドβを使用する予定で、テストユーザーによるレビューとフィードバックを得て、一般公開に向けて機能の改善・改良を図っていく。

JASRACは「今後もテクノロジーの活用を通じて音楽クリエイターの創作活動をサポートしてまいります」としている。またKENDRIXと同じコンセプトのもと、3月31日にメディア「KENDRIX Media」も公開。音楽クリエイターに役立つ情報を分かりやすく発信している。