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JASRAC、次世代楽曲管理システムの実証実験。ソニー協力

日本音楽著作権協会(JASRAC)は、ソニーグループとのブロックチェーン技術活用に関する共同の取り組みの一環として、音楽クリエイターの楽曲管理のデジタルトランスフォーメーション(DX)に向けた実証実験を実施した。実験に使われたデジタルサービスのコンセプトは、ブロックチェーン技術を用いた存在証明機能付きの楽曲情報管理ツールで、2022年の実用化が目指されている。

実証実験は2020年12月から2021年2月までの間、JASRACと管理委託契約をしているクリエイター13名、JASRACと契約していないクリエイター18名の合計31名が参加して行なわれた。

音楽業界では、インターネットやスマートデバイスの普及を背景に、グローバルで展開されるストリーミングサービスが定着するとともに、楽曲制作からマーケティング、ディストリビューションまでのプロセスのデジタル化が進んでおり、これらを自ら行なう個人のクリエイター(DIYクリエイター)も増加している。

こういったDIYクリエイターは、自室等でデジタル楽曲創作ツールを活用して創作活動を行ない、エイリアス(抽象度や匿名性が高いペンネーム)で活動することが多いため、楽曲の無断利用や“なりすまし”による公開に遭遇した場合、有効となる簡易な対抗手段がないという課題があるという。

またDIYクリエイターからは、既存の使用料分配の仕組みやJASRACとの管理委託契約・楽曲登録が複雑・煩雑であるなど、既存の著作権管理システムの利用はハードルが高いといった指摘もある。

JASRACは実験に参加した31名とディスカッションを行ない、クリエイティブの環境・活動や著作権管理に関する課題を整理。優先度が高くデジタルサービスの提供によって解消できる取り組みをまとめ、対応するデジタルサービスのプロトタイプを構築し、参加メンバーがプロトタイプを試用・評価した。

プロトタイプが構築されたデジタルサービスのコンセプトは、ブロックチェーン技術を用いた存在証明機能付きの楽曲情報管理ツールで、このツールに登録した情報を起点にして、JASRACを含む音楽関係のさまざまなビジネスパートナーとのデータ連携、各種申請・登録や契約を定型化・簡素化して電子化するもの。今回の実験で得られた意見、課題を踏まえ、機能追加や改善を加えて、'22年の実用化を目指す。

実証実験に参加したWatusi(左)とエンドウ.(右)

実証実験に参加したクリエイターのひとりでCOLDFEETのWatusiは「自分の魂である曲が包括という森で見えづらくなっていたり、ネットという大海原に出所知らずで漂っているような不安に、JASRACが応えてくれようと動き始めてくれます。音楽を登録するために知識や手間なんて必要なくなります。そうしたことを肩代わりでき得る技術が既に生まれているから。ブロックチェーンの存在証明による世界で唯一の曲という当たり前の称号を、ぜひ日本から生み出していって欲しいと願います」とコメント。

同じく実証実験を参加したGEEKS/月蝕會議のエンドウ.も「著作権管理におけるブロックチェーン活用の実現と併せて、JASRACがこの取り組みをきっかけとして、音楽作家、クリエイターとの間のコミュニケーションをさらに深化できるのではないかと感じています」と述べている。