ニュース

高輝度4000nitマスモニなど国内初展示。ソニー最新映像制作機器公開

「HXC-FZ90」

ソニーは、4K/8Kカメラなどの映像制作機器や、新規ソリューションなどを展示する内見会を、放送局や映像制作などの関係者に向けて開催。4月13日に発表したピーク輝度4,000nitの4Kマスターモニター「BVM-HX3110」や、光学式可変NDフィルターを標準搭載したマルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-5500V/3500V」などを国内初展示した。

国内初展示のマスモニやカメラ

「BVM-HX3110」

国内初展示となったBVM-HX3110は、プロフェッショナル用マスターモニターシリーズの最上位モデル。2023年11月発売で、価格は4,378,000円。

パネル解像度はDCI 4K(4,096×2,160)。従来のピーク輝度1,000nitを大きく上回る4,000nitの高輝度化を実現し、配信などで増えているHDRコンテンツ制作をサポートする。有機ELを凌駕するというHDRの高速動画応答にも対応している。クリエイターから要望が多かったというIP(ST 2110)接続にも、ソニーの業務用モニターとして初対応した。

中央が「BVM-HX3110」。肉眼ではヘッドライトや太陽の光が目に痛いほどだった

会場では、BVM-HX3110と既存モデル「BVM-HX310」などと並べて展示され、風景映像やゲーム「グランツーリスモ7」の映像による比較展示も実施されており、BVM-HX3110ではグランツーリスモ7に登場する車両のヘッドライトの光が目に痛いほどだった。

「LMD-A180」

そのほか会場では、マスターモニターの同一色域でラックマウントに対応した18型のHDR対応液晶モニター「LMD-A180」も国内初展示された。2023年秋発売予定で、参考予定価格は40万円台(税抜)から。

「HDC-5500V」
光学式可変フィルターを標準搭載する

カメラ製品では業界からも高い支持を得ているというマルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-5500」に、光学式可変NDフィルターと、4K 4倍速スローモーションも撮影できる「HDC-5500V」を国内初展示した。2023年12月発売予定で、価格は約17,050,000円(システム構成により異なる)。また従来モデルに光学式可変NDフィルターを標準搭載した「HDC-3500V」も12月発売予定。価格は約14,850,000円(システム構成により異なる)。

両モデルとも、従来は特注対応だったという光学式可変NDフィルターディスクユニットを標準搭載。透過率を1/3から1/256までシームレスに調整でき、透過率変更時に物理的なフィルター枠が映り込まないため、オンエア中でもNDフィルターの透過率を自由に調整できる。

NDフィルターを活用することで、通常のシーンは深い被写界深度で中継し、得点シーンといった場面では浅い深度に切り替えてドラマチックな映像に仕上げるといった映像表現が可能になる。

6月14日に発表したばかりの4Kアップグレートに対応したシステムカメラのエントリーモデル「HXC-FZ90」も同じく国内初展示された。2023年冬発売予定で、価格はカメラ本体のみで約2,200,000円。2/3型4K CMOSイメージセンサーを搭載し、高感度・高画質を実現。小規模スポーツやeSports中継などに最適なCATV・プロダクション向けモデルと位置づける。

「VENICE 2」

先日国内の累計興行収入が137.1億円に到達した「トップガン マーヴェリック」で採用されたことで注目されたVENICE 2も展示。このトップガン以降、VENICEシリーズの活用例は増えているといい、第76回カンヌ国際映画祭で脚本賞を受賞した是枝裕和監督作「怪物」や、7月28日公開の映画「キングダム 運命の炎」など邦画作品でもVENICEシリーズを使って撮影されているとのこと。

映像制作関連では、バーチャルプロダクションの課題を解決するVirtual Productionツールセットとして、Unreal Engine内でVENICEカメラをシミュレートする「Camera and Display Plugin for Unreal Engine」、事前シミュレートと実際に撮影した際の色味が一致する「Color Calibrator for windows」も国内初展示。

「Camera and Display Plugin」のデモ。被写体の背景が緑の場合はモアレは発生しない
背景の赤色部分は、確実にモアレが発生するとシミュレートされている部分

このうち「Camera and Display Plugin」では、バーチャル空間上にLEDとカメラを配置して、撮影画角や色味を事前にシミュレーション可能。バーチャルプロダクションではディスプレイ自体に近づきすぎたりするとモアレ(干渉縞)が出てしまうことがあるが、同プラグインではモアレが発生する画角・撮影距離なのかもシミュレートできる。

「CEA-Mシリーズ」

そのほか会場では、6月2日に発表された動画撮影向けのCFexpress Type Aメモリーカード「CEA-Mシリーズ」の960GBや1,920GBモデル、ドローン「Airpeak S1」用のオプションで、より軽量化されたジンバル「GBL-PX1」やRTKキット「RTK-1」なども展示されていた。

従来よりも軽量になったAirpeak S1用のジンバル「GBL-PX1」
RTKキット「RTK-1」
有線マイクをデジタルワイヤレス化するプラグオントランスミッター「DWT-P30」。2023年度中に発売予定
PTZオートフレーミングカメラ「SRG-A40」。6月15日発売

映像ソリューション

映像ソリューションとしては、IP化された拠点同士をネットワークで結び、より柔軟な制作環境を実現するNetworked Liveを紹介。メディアオーケストレーションプラットフォーム「VideoIPath」同士が連携するフェデレーション機能を紹介した。

このネットワークとリソースの統合管理例としては、Warner Bros. Discovery傘下のスポーツ専門放送局「Eurosport」が紹介された。Eurosportは、UEFAチャンピオンズリーグ プレミアリーグや全英/全仏/全豪テニス、ツール・ド・フランスなど、さまざまなスポーツをヨーロッパを中心に75の国と地域、21ヵ国語で放送している。

同社ではイギリスとオランダにデーターセンターを構築し、従来は各拠点に設置していたスイッチャーなどの制作機器もセンター内に配置。そしてイギリスやフランス、スペインなど欧州約20箇所の拠点のサブから、データーセンターの機材を活用して、番組制作を行なったとのこと。これにより、大規模スポーツ大会で現地に派遣する人員数を大幅に削減できたという。

「NXL-ME80」
限られたネットワーク帯域でも高画質伝送が可能という

そして拠点のIP化が進むと、拠点間での映像信号のやり取り、拠点とクラウド間での映像信号のやり取りが増えるため、限られたネットワーク帯域でも高画質伝送を可能にするために開発されたのが、4K映像を1/200に圧縮しても画質劣化を認識できないレベルに抑えるというメディアエッジプロセッサー「NXL-ME80」となる。

HEVCコーデックで圧縮することで、4K映像を60Mbpsまで圧縮しても、非圧縮と“見分けがつかない”画質を実現したとのこと。伝送遅延についても4K映像で33.3ms以下と低遅延で、ファイルサイズが軽量になるため、1Gbps回線でも4Kリモートプロダクションが可能という。

クラウド制作プラットフォーム「Creators' Cloud」では、AI自動化ソリューション「A2 Production」も展示。同ソリューションでは、スポーツなどのハイライト動画の自動生成や、複数カメラ撮影した映像のタイムラインを自動で同期する「LineSync」などの機能が紹介されていた。

「Ci Media Cloud」
AIによる動画自動生成は、NHKの大相撲でもハイライトソリュショーンとして活用されている
複数映像のタイムラインを自動同期する「LineSync」