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「トップガン」撮影したシネマカメラも、ソニー映像機器展示会

「トップガン マーヴェリック」にも使われたシネマカメラ「VENICE」

ソニーは、4K/8Kカメラなどの映像制作機器や、新規ソリューションなどをメディア向けに展示するイベントを開催。2022年4月のNAB Show 2022に出展したマルチフォーマットポータブルカメラ「HDC-3200」や、クラウドを使った映像コラボレーションツール、公開中の映画「トップガン マーヴェリック」にも使用されたデジタルシネマカメラ「VENICE」などを展示した。

現場に合わせた設計で支持集めるVENICE

「HDC-3200」

HDC-3200は、グローバルシャッター機能付き2/3型3板式4Kイメージセンサーを搭載したシステムカメラで、コストパフォーマンスに優れているのが特徴。背景にLEDディスプレイがあるようなニューススタジオでも、高画質な撮影ができるという。

カメラコントロールユニット「HDCU-3500/3100」やIPカメラエクステンションアダプター「HDCE-TX50 / TX30」との接続が可能で、IP Liveプロダクションシステムにも対応。従来製品のビューファインダーや大型レンズアダプター、リモートコントロールパネルとの接続もでき、既設機器を流用した柔軟なシステム構築ができる。

ショルダーカムコーダー「PXW-Z750」
PXW-Z750に取り付けたXperiaスマートフォン経由でクラウドに動画ファイルをアップロードできる

また会場では、スマートフォンを活用した高速転送・効率的な素材管理を実現するクラウドサービス「C3 Portal」との連携例として、ショルダーカムコーダー「PXW-Z750」にXperiaスマートフォンを接続。Xperia経由で撮影したファイルをクラウドに転送するデモも行なわれた。C3 Portlaは静岡第一テレビや、国内トップのフォーミュラカーレース「SUPER FORMULA」を運営する日本レースプロモーションが採用。日本レースプロモーションでは、レース車両にXperia PROを積んでオンボード映像をリアルタイムで伝送する取り組みが行なわれている。

「VENICE 2」

映像制作用CineAltaカメラ「VENICE 2」や、6台ものIMAXカメラを戦闘機F/A-18のコクピットに搭載するなど映像にもこだわって制作された映画「トップガン マーヴェリック」でも使われた「VENICE」が展示された。このVENICEは「トップガン」のほか、7月15日公開の「キングダム2 遙かなる大地へ」、第94回アカデミー賞で作品賞を受賞した「コーダ あいのうた」など採用作品が増えている。

特にハリウッドでの採用が増えていることについて、ソニーは「元々、我々は取材・中継用のカメラは得意ですが、映画用カメラでは『フィルム』を知る必要があり、そこに時間を要しました。高精細に撮影できるだけでなく“雰囲気のある画質”が求められるんです」と説明する。またカメラの設定ボタンを本体両面に配置するなど、映画制作現場での運用に適した設計にしたことも支持を得た理由とのこと。

「FX3」
「FX6」

そのほかFX9やFX6、FX3といった同社Cinema Lineカメラも展示された。

クラウドサービスやドローンなども展示

「番組・ドラマ制作ソリューション」

会場では、展開しているクラウドソリューションも展示。離れた場所からでもリアルタイムに映像の編集や確認ができるクラウド型の映像制作コラボレーションツール「Ci Media Cloud Services」や、Xperiaを使ってどこからでも素材共有ができ、迅速なニュース制作を実現するという「ハイブリッドクラウド報道ソリューション」、ドラマ撮影の映像素材管理など編集準備を自動化する「ドラマ・番組制作ソリューション」、時間と場所の制約、設備所有から開放されるというクラウド中継システム「M2 Live」などが紹介された。

クラウド中継システム「M2 Live」

「Ci Media Cloud Services」は、朝日放送の番組「防犯カメラが捉えた! 衝撃コント映像」における東京・大阪共同制作に活用されたといい、ハイブリッドクラウド報道ソリューションは静岡第一テレビが、ドラマ・番組制作ソリューションは毎日放送が採用。M2 Liveも中国放送が広島県高校総合体育大会のライブ配信に使用したとのこと。

AIを使ってスポーツのハイライト映像を自動生成する「スポーツAI自動編集ソリューション」

そのほか、映像をAI解析し、スポーツのハイライト映像を自動で生成する「スポーツAI自動編集ソリューション」も参考出展された。ソニーは「ニュース・ドラマ・スポーツというコンテンツ量・質の向上が求められる領域に対し、これまでの知見×AI×サービスを組み合わせたコンサルティングソリューションを提供することで、さらなる制作の効率化と付加価値向上を実現する」としている。

2波受信ができる「URX-P41D」などマイクシステムも展示
Airpeak S1ブース
Airpeak S1ブースには高容量バッテリーやバッテリーステーションが参考出展された

αカメラを搭載できるドローン「Airpeak S1」や、2波受信ができるワイヤレスマイクロフォンシステム「URX-P41D」、展開中のカメラ・レンズのラインナップといった製品も展示。Airpeak S1のブースでは約30%容量がアップした「高容量バッテリーパック」や一度に複数のバッテリーを充電できる「バッテリーステーション」も参考出展された。

「オートフレーミングソフトウェア」

そのほかAIを活用した人物の自動検出と4K→HD自動切り出しによる番組制作効率化ソフト「オートフレーミングソフトウェア」、カメラを遠隔操作してスタジオサブの少人数化に貢献するリモートカメラ、本体にシステムコントロールやデバイスコントロール機能を内蔵し、よりコンパクトになったスイッチャー「XVS-G1」なども紹介した。

IP化で3日の準備期間が3時間に

展示会に先立って行なわれた説明会では、ソニーマーケティングのB2Bプロダクツ&ソリューション本部 B2Bビジネス部 統括部長の小貝肇氏によるプレゼンテーションも行なわれ、従来は2軸だったメディアソリューション事業の開発の方向性が、今年から3軸になったことが説明された。

「メディアソリューション事業の開発の方向性について、従来は『2軸です』と紹介しておりました。ひとつは『コンテンツの付加価値』の向上。具体的な内容としてはフルHDから4K、4Kから8Kへと解像度が上がっていったり、SDRからHDRになったりと映像そのもののスペックを上げていく、コンテンツそのものの付加価値を上げていくという開発の軸と、もうひとつは『効率的なワークフロー』ということでXDカムに代表されるような製品・ソリューションが開発の軸でした」と小貝氏。

「そこに対して、もうひとつ今年新たに加えたのが『持続可能なプラットフォーム』です。その中身としては信頼性・機敏性・拡張性というところになります。ソニーはIPやクラウドに力を入れて取り組んでいて、これを活かして時代の変化に機敏に対応できる拡張性を持った製品・ソリューションを開発していくというところが、我々の方向性で、ひいては映像制作業界のDXを推進させていただこうと考えています」

映像制作業界では、映画やドラマ、テレビ番組に加え、近年はYouTubeやライブ配信など映像市場の裾野も広がっており、小貝氏は「コンテンツの量が増えていて、映像制作に携わる業界のみなさまにはコンテンツを多く作り出すと同時に、その質も求められています。このふたつにどう対応していくかが、映像制作業界全体の持続可能性というところに結びついていくと考えています」とする。

その解決策として、同社は「これに対してはIPとクラウド技術を中心に、さらにAIと5G技術を活用して、特に時間の制約、場所・距離の制約を取り除くような製品・ソリューションを開発」しており、クラウドや5G、AIを使ったサービスは上述した「C3 Portal」や「Ci Media Cloud Services」、「スポーツAI自動編集ソリューション」などが含まれる。

IPを活用したソリューションでは、映像だけでなく、音声、メタデータ、同期、制御などの信号をリアルタイムにIP伝送可能な「IP Liveプロダクションシステム」が紹介された。国内では65システムが採用されており、年を追うごとに採用も拡大。日本BS放送といった衛星放送局、ケーブルテレビ徳島テレビといったCATV事業者にも採用例が広がっている。

またソニーはスタジオサブや中継車のIPルーティングを司るIPライブシステムマネージャーの自社開発や、放送局全体のIPシステムの総合管理・監視を実現するライブエレメントオーケストレーターなど、放送局内すべての設備をIP化するための商材をすべて揃えているのが強みという。

実際にIP Liveプロダクションシステムを導入したユーザーからは、IP化によって音声系システムとの効率的な連携が図れるようになったという声や、選挙特番の制作時、以前のSDIシステムでは準備に3日かかっていたが、IPシステムを導入したことでずか3時間に短縮できたという声が紹介された。

会場では、ソニーが子会社化したネヴィオンのSDNコントローラー「Nevion VideoIPath」や、放送コンテンツのIP伝送規格であるSMPTE ST2110/NMOSに対応したデモ中継車などを展示。VideoIPathでは、ネットワーク制御の仮想化/自動化により障害発生時に自動経路切り替えができるといった「分かりやすく、安全な」運用が可能。デモ中継車では機器の集約やケーブル量削減などにより、従来よりもコンパクトな中継車が展開できるといったメリットが紹介された。

「Nevion VideoIPath」
デモ中継車