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未来のBluetooth「Auracast」体験、TDKカプセル状のプライベート空間

Auracastの体験ブースで渡されるスマホ

幕張メッセにて、10月17日より「CEATEC 2023」が開催。開催期間は20日までで、入場料は無料だが、来場事前登録が必要となる。

ここではBluetooth SIG、シャープ、京セラ、TDKなどのブースのレポートをお届けする。

街中で聴きたい音だけ受信。Bluetooth「Auracast」

Bluetooth SIGのブースでは、LE Audioの規格の1つであるAuracastが街中に普及したら、どのような体験ができるのか、というテーマのブースを展開。実際にスマホとTWS(完全ワイヤレスイヤフォン)を手渡され、説明を聴きながら体験できる。

Auracastは、空港や駅、映画館、コンサートホール、講堂、ジムなどに設置したトランスミッターからAuracast対応機器に音声配信できるLE Audioの新しい機能の1つ。

なお、AuracastはLE Audioのいち機能であり、LE Audio対応製品全てがAuracastにも必ず対応しているとは限らない。そのため、USBで接続する専用のトランスミッターも用意し、既存のデバイスでも使用できる準備は進めているそうだ。

ブース内には、異なるスポーツ映像が流れるディスプレイが設置されたスポーツバー、ノートPCで映画を観る友人と音楽を聴く友人の2人、空港の搭乗ゲート、劇場の5つのシチュエーションが用意されていた。

スポーツバーエリア

スポーツバーのディスプレイは2つともミュートの状態で試合風景だけが流れており、その場でスマホを操作し、聴きたい方を選ぶとTWSから音声が聴こえて、映像と合わせて楽しめるようになっている。これは公共の場で、複数のテレビが置いてある場合にも、テレビがAuracastに対応していれば、その場に居る人達が、それぞれコンテンツを選んで楽しめる状態が作れるとしている。

観たい方の映像のミュートを解除する、といったニュアンスだそう

2人の友人がいるシチュエーションでは、それぞれのノートPCやスマホがAuracastに対応していれば、自分も同じコンテンツを自分のTWSで一緒に共有できる例となっている。

2人の友人がそれぞれ別のコンテンツを試聴中というシチュエーション

今回の例では、ノートPCの画面を見ながら、それぞれのヘッドフォン/イヤフォンで音声を楽しめ、もう1人の友人にこの曲を聴いてと言われたら、そちらに切り替えて同じ曲をそれぞれのヘッドフォン/イヤフォンで聴ける、といった形となっている。なお、こういった友人同士でシェアする場合には、送信側でパスワードを設定することもできる。

シェアする際にはパスワードが設定できる

空港の搭乗ゲートの例は、例えば、空港に到着してチケットを受け取った際に、搭乗口のアナウンスをあらかじめ受信する設定にしておけば、空港のどこに居ても自分の乗る飛行機のアナウンスを聞き取ることができる、といった体験ができる。

先に設定しておけば、アナウンスを聞き逃さずに済む

従来のBluetoothは、接続距離にも制限があるが、Auracastでは送信側の強度を調整できるため、公共の場では専用の送信機により、幅広い通信距離をカバーできるようになるとのことだ。

最後に劇場の例では、もし、後ろの方の席になってしまい、壇上の声が聞き取りにくいという状況下で、会場の音声機器がAuracastに対応していれば、自分のTWSでマイクに収音される声を聴くことができるという。

会場では近い将来のAuracastが普及した世界をデモし、自由度の上がったワイヤレス体験が楽しめることをアピールしていた。

シャープ、消費電力0Wのサイネージや反射光を利用するディスプレイ

バックライト非搭載で反射を利用するLCDサイネージ

シャープのブースでは、屋外向けのLCDサイネージが参考展示。バックライトを搭載せず、環境光を反射する素材により、画面の明るさを確保する屋外設置向けのディスプレイで、低消費電力で駆動することが特徴となっている。

バックライトがないため、本体も発熱せず、ディスプレイ部を頑丈な筐体に収めて、ソーラーパネルで駆動電力をまかなうといったことも可能とのこと。

また、画面の表示に消費電力が発生しない電子ペーパーディスプレイ「ePoster」も展示。モノクロとカラーの2種類があり、カラーは色数が限られているものの、印刷物のような風合いになるため、表示内容との組み合わせで空間を演出できる。

ePoster。表示のみであれば消費電力0W
印刷物のような風合いで掲示できる

画面の切替には電力が必要となっており、サイネージの裏面にはモバイルバッテリーなどが設置できる部分が設けられている。こちらもバックライト非搭載のため、明るさは外部の光源を頼る形になる。

表示の切り替えもモバイルバッテリーからの給電で可能
このサイズのePosterとバッテリーの組み合わせで300~400回の表示切り替えが可能とのこと

液晶の技術では、モニター部に凹凸を設け、触れている状態と押し込んでいる状態を判別する「Click Display」を展示。

モニター部に物理的に凹凸を備え、触れる、押し込むの判別も可能

同技術が活きる例としては、昨今の車に搭載されているエアコンのスイッチなどがタッチパネル化されたことで、片手間で操作する際に、どこを触れて良いのかわからなくなるといった課題など。タッチパネルを使えば、タッチによる操作感はそのまま、凹凸でどこにスイッチがあるか、また触れている状態でそのスイッチがどのような操作なのかを音声でアナウンスし、押し込むことで操作を確定するといったことができるので、確実な操作が可能になるとのこと。

ブースにはPOS端末をイメージしたようなデバイスも展示されており、数字に凹凸を設けることで、軍手などをしている状態でも凹凸を押し込むことでタッチパネルが動作するようになり、より利便性が上がるという。

軍手などを使っていても、物理的な押し込みが可能なので使用できる
展示は3種類

そのほか、ネイチャーテクノロジーの展示として、ミミズクとフクロウ型のデバイスが羽ばたいて風を送るヒーリングファン「はねやすめ」を参考展示。涼むためのファンではなく、羽ばたくフクロウ/ミミズクの様子と、柔らかい風で心を癒やすことが主となる目的の製品とのこと。

はねやすめ
【CEATEC 2023】シャープブースの様子

京セラブースに温度も再現する空中ディスプレイ、モビリティ色々

空中ディスプレイ

京セラのブースでは、昨年も展示されていた空中ディスプレイが強化され、たき火の音と温度、手の動きに合わせたりたき火が崩れるといった演出が行なえるようになった。

たき火の上に手をかざすと温かく感じられるようになっており、上から押しつぶしたり、手で仰ぐと焚き火が音を立てて崩れ、手を離すとまた復活するようになっている。

ワイヤレス電力伝送システムの展示も行なっており、デモでは、天井に設置されたアンテナから、模型のアンテナへ電波を照射することで、モーターを搭載したミニカー型の模型に電力を供給。その電力を使ってミニカーが走るという仕組みを披露していた。

ワイヤレス電力伝送システム
中を走っているミニカーにはバッテリーが搭載されておらず、アンテナから発する電波で給電してモーターを回し、走行する
電波を照射するアンテナ

電波を1方向に飛ばす技術の紹介のため、ミニカーとは少し離れた場所にヘリコプター型の模型が展示。手元のボタンを押すことで、ミニカーに照射されていた電波がヘリコプターの方へ切り替わり、ヘリコプターのプロペラ部が回るという演出になっていた。

北海道で実証実験中の自動走行ロボットも展示。北海道にて、セイコーマートの製品を販売する形で公道を走行しているとのこと。今後は宅配用途にも幅を広げ、路上で荷物の受け渡しが行なえるデバイスを目指すとのこと。

自動走行ロボット
正面
背面
右側は扉などは付いていない

モビリティ関連では、TDKブースにも自動車の自動運転が実現したあとの車内設備の提案として、カプセル状の展示を披露。外装には調光フィルムが採用されており、透明な状態と中が見えない状態の切替ができるようになっていた。

自動運転が実現したあとの車の中をプライベート空間にするようなイメージとのこと

内部にはディスプレイと天井部にスピーカー、椅子の背面下側にウーファーが設けられており、車内全体でコンテンツを楽しめるという。デスク部にはスマホを置くだけで給電できるワイヤレス給電のシステムを搭載。圧電で操作感のありつつ凹凸のないボタンを実現するなど、近未来感を楽しめる。

内部
デスク部がボタンになっている
ワイヤレス給電でスマホを置くだけで充電できる
上部のスピーカー
椅子の後ろ(光っている部分)にウーファー

このほか、薄型のスピーカーを利用した世界で最も薄いラジカセ「Boombox」や、空間オーディオのヘッドトラッキング向けセンサーの展示も行なっている。

「Boombox」
左右にあるテープのようなものがスピーカー部
側面から見た様子
空間オーディオのヘッドトラッキング用センサーも開発中
【CEATEC 2023】京セラブースの様子

コミュニケーションがとれる会話AIロボや、AI音声受け答えシステム

「Romi」

MIXIのブースでは先日大規模言語モデルを活用するアップデートを実施した会話AIロボ「Romi」の展示を行なっており、実際に会話を楽しめる。アップデートでは、人に寄り添って共感するような会話データを追加学習させており、会話のキャッチボールができるよう工夫を重ねて開発したという。

会話が長く続いているほか、声色なども会話の内容に合わせたものになっているという。実際の会話の様子は動画を参照のこと。

基本カラーは3色
コラボモデル
着せ替えアイテムも展開中。干支に合わせた辰が新製品とのこと

音楽ゲームのシステムなどを手がけているCRI WAREのブースでも、AIによる会話システムの体験展示が行なわれていた。こちらでは、話した内容を文字起こししつつ、AIが返答するというシステムで、これを翻訳システムにも応用することで、世界中のプレーヤーとそのまま会話しつつ、各自の画面にはそれぞれ翻訳された文章が表示されるといった使い方ができるという。

家電の発話機能やLIVE DAM AIの採点機能を展示

また、同社はゲーム音声の技術から小さな基板でも音が鮮明に聞こえるようにする圧縮技術により、家電の発話機能にもその技術を搭載。そのほか、LIVE DAM AIの歌採点機能や、車のスピードメーター部なども手がけており、それらを紹介するブース展示を行なっている。

車のスピードメーター部も手掛けている
【CEATEC 2023】CRI WARE、TDK、MIXIのブースの様子