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LE Audioでもハイレゾ伝送へ。次世代Bluetoothの新機能公開

Bluetooth SIGは16日、近い将来搭載する次世代の機能を披露。LE Audioの帯域拡張(2Mbps→8Mbps)によるハイレゾなどの高音質データ伝送、高精度な位置情報測定、5GHz・6GHz帯のサポートといった新機能を、24年度以降に順次追加していく計画を明らかにした。

LE Audioが8Mbpsに拡張。高品質なオーディオ伝送が可能に

Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、Bluetooth技術および関連商標を管理している非営利団体。明日10月17日から20日まで千葉・幕張メッセで開催されるエレクトロニクスショー「CEATEC 2023」で、国内初のAuracastデモを行なうのに合わせて関係者らが来日。CEATECでのデモに先立ち、都内で説明会を開催した。

説明会には、同団体で最高マーケティング責任者(CMO)を勤めるケン・コルドラップ氏が登壇。次世代Bluetoothの機能やBluetoothの成長を牽引した3つの分野での成長予測などを語った。

ケン・コルドラップ氏

まず「規格の策定が終了し、24年前半には対応製品が登場する見込み」(コルドラップ氏)と話す新機能が「高精度な距離測定」。

すでに今でも、スマホやイヤフォン、スマートタグ、リモコンなどのBluetoothデバイスの場所が探索できる“位置情報ソリューション”があるが、次世代ではこの測定がより高精度化。20mの距離でも20cmしかズレない(±10%)高い精度で位置の特定ができるようになるという。

「規格の策定が半分程度まで進行していて、早くても25年度以降」(同)と見込む新機能が、Bluetooth LE Audioの高スループット化。LE Audioは、「低遅延」「LC3コーデック」「左右独立」「複数人でシェア(ブロードキャスト)」機能を備えたBluetoothオーディオの新しい標準規格。現在はソニーなど、一部の完全ワイヤレスイヤフォンなどがアップデートによるLE Audio対応をアナウンスしている。

規格化の協議が進められている高スループット化は、現状のLE Audioの伝送幅である2Mbpsを4倍に相当する8Mbpsへ拡大するもの(帯域は2.4GHzのまま)。

これにより、CDクオリティ、またはそれを上回るハイレゾ、多チャンネルといった多彩かつ高品質なオーディオストリーム伝送が仕様上可能になる(LDACはClassic Audio用であるため、LE Audioでは現状使えない)。またヘルスデバイスをリアルタイムに同期させたり、より高速に応答可能なコントローラが実現可能になる。

LE Audioの5GHz、6GHz帯での利用も新機能プロジェクトの1つ。現状Bluetoothは2.4GHz帯での利用に限られているが、将来は高周波数帯をカバーすることで、従来よりもさらに高速かつ低遅延に接続できることを目指す。利用できる周波数帯は各国で異なるため、利用を統括する各国の部局などにも確認しながら規格化作業を進めていくとのことだ。

登壇したコルドラップ氏は、「1998年9月の設立から、今年でちょうど25周年を迎えた。当時、様々な企業や関係者に規格の設立に関わっていただいたが、おそらく誰も、25年後に今のような成功を収めるようなことになるとは考えてもなかったのではないか」とコメント。

さらに「Bluetooth対応機器は、2027年には70億台を超える年間出荷台数が見込まれている。これはWi-Fi機器の3割増し、セルラー通信機器の3倍に相当する数字であり、まさにBluetoothは世界最大規模の無線通信規格」と形容した。

加えて、Bluetoothの成長を牽引してきた3つの分野「ワイヤレスオーディオ」「コネクテッドコンシューマーエレクトロニクス」「コネクテッド産業」のそれぞれで、今後も更なる成長を予測。

イヤフォン、ヘッドフォン、補聴器などのワイヤレスオーディオは'23年の13億台から'27年には16億台以上。スポーツ/フィットネス機器や医療機器、玩具などコンシューマーエレクトロニクスは'23年の16億台から'27年には29億台以上。そしてビルなどの照明や生産現場での追跡システム、店舗での棚札といったコネクテッド産業は'23年の2億台から'27年には7億台以上の出荷台数を予想していると語った。

コルドラップ氏は、「Bluetoothの成長には、常にテクノロジーをイノベーションしよう、今あるものをより良くしようという継続的な試みがあった。我々は平均50以上の仕様を策定するプロジェクトを常時実行しており、『高精度距離測定』『データスループットの向上』『高周波数対応』はそれら進行中のプロジェクトの一部にすぎず、引き続き、次の25年を支える技術強化を行なっていく」と、意気込みを話した。

LE Audio対応=Auracast対応とは限らない

前述した通り、10月17日から20日まで幕張メッセで開催されるエレクトロニクスショー「CEATEC 2023」にて、Bluetooth LE Audioの新機能である「Auracast ブロードキャストオーディオ」が体験できるデモが実施される。

Auracastは、空港や駅、映画館、コンサートホール、講堂、ジムなどに設置したトランスミッターからAuracast対応機器に音声配信できるLE Audioの新しい機能の1つ。これによって公共の場に設置された無音テレビ(Auracast対応テレビ)の音声を聞いたり、空港のAuracast放送を聞いたり、講演会場のスピーカーから流れる同じ音声を聞くことができるようになるという。

なお、AuracastはLE Audioのいち機能であり、LE Audio対応製品全てがAuracastにも必ず対応しているとは限らないとのこと。Auracastを今後楽しむ場合は、Auracast対応の有無を確認して欲しい、とのことだ。