ニュース
名エンジニアが手掛けたユニットが付録、スピーカー自作ムック
2023年11月15日 11:42
音楽之友社は、「ウェブコー製6㎝フルレンジ・スピーカーユニット『FR085CU03』」が付録のムック本「これならできる特選スピーカーユニット 2023年版ウェブコー編」を12月18日に発売する。価格は9,900円。
自作スピーカー用のユニットやパーツなどを多数販売している輸入代理店・横浜ベイサイドネット(新潟)との初コラボで、同社が扱うブランドの中から厳選した「Wavecor(ウェブコー)」製の6cmフルレンジ・スピーカーユニットが付録。
日本ではまだそれほど認知されていないブランドだが、デンマークのVifaで、イタリア高級オーディオブランドのスピーカーに採用されていたリングラジエーター・ツイーターを設計・製作していたアラン・イザクセン氏(現ウェブコーCEO)が立ち上げたブランド。
アラン氏は80年初頭にVifaのスタッフとなり、数々の名ドライバーを設計し、やがてVifaのエンジニアリングマネージャーに任命され、90年代にはマーケティング、セールス、エンジニアリングの全活動を統括するセールス&エンジニアリングディレクターになる。1999年には単身中国の広州へ赴き、Vifaの現地会社DST(ダニッシュ・サウンド・テクノロジー)社を設立するとともに、Scan-Speakや、Peerlessなどのユニット製造に関わった。
その後アラン氏は2004年にDSTを去り、翌年中国の広州のパンユーという場所でウェブコーを設立。「オーディオメーカーとしては比較的新しいブランド/メーカーですが、その背景には、デンマークの⽼舗ブランドであったVifaの伝統と技術を引き継ぐメーカーとしてのブランドと実績がある」という。
ユニットの特徴は、Qmが高く、トランジェント特性が良いこと。「スピード感あふれるサウンドにはメリハリがあり、かつクリーンでクリア。ダニッシュ・サウンド(デンマークのサウンド)の特徴を、6cmという小口径でありながらしっかりと備えている」という。
ベースとなった既存ユニット「FR070WA03」の電気的な仕様はそのままで、初心者の自作スピーカー愛好家の制作意欲にアピールできるよう、フランジを角形から円形に変更。フランジの外径は8.5cmに拡大、厚みも4.5mmへ増やした。3mmのネジではなく、4本のM4キャップボルトで、しっかりと固定できるように強度がアップが図られている。フランジの裏側にはスポンジ・ガスケットを装備している。
連続入力は10W、最大入力は20W、能率は86dB@2.83V/1m。総質量は295g。バッフル開口寸法はφ63mm。推奨エンクロージャーはバスレフ型。インピーダンスは4Ω。
対応エンクロージャーも用意
ウェブコー設計による標準エンクロージャーも、音楽之友社直営のオンライショップ「ONTOMO Shop」で取り扱う予定。昨年までは対応エンクロージャーもONTOMO MOOKとして同時発売していたが、今年はエンクロージャーのみONTOMO Shopにて取り扱うという。
MDF製で、バスレフ型。12月18日より予約を開始し、2024年1月下旬ごろ発送予定。予価は9,130円。
これとは別に、横浜ベイサイドネットが設計した白樺合板製エンクロージャー・キットも、ONTOMO Shopと横浜ベイサイドネット直営オンラインショップ等にて取り扱い予定。横浜ベイサイドネット20周年記念モデルとして発売されるスピーカーユニット「FR085CU02」(別売)にも使用可能で、北海道産の白樺合板を使用した、数量限定版となる。
12月18日より予約を開始、2024年1月下旬ごろ発送予定。予価は39,820円。
評論家がユニットを評価
オーディオクラフト系ライターの佐藤勇治氏(ワイエスクラフト)は、このユニットを「黒色のコーンとセンターキャップにはアルマイト処理が施され放熱性を向上させており、コーンを支えるラバーエッジはやわらかく実に動きやすそうで、それはQmsからも読み取れる。13.1という値は同口径の他ユニットと比べても類を見ないだろうし、このユニット特有の低音の豊かさにつながっていており、レスポンスのよさと細やかな音の表現力、不足感のないレンジ感など成熟された音に仕上げられている」と評価している。
オーディオ評論家・小澤隆久氏は「ウェブコーの同サイズのフルレンジユニットのレギュラー品は角型フレームですが、ムック付録は丸型フレームで、個人的にはこちらのほうが好みの外観です。そして、手に持ってみるとずっしりと重く感じられ、大きなマグネットとともに高音質を予感させます。また、低歪みに仕上げる技術もたくさん採用されていて、安価なユニットとはひと味違う設計になっています。(中略)いろいろな音源を使って試聴しましたが、聴けば聴くほど、このユニットの魅力に惹きつけられました。まず、メインとなる楽器やボーカルがストレスなく楽しめます。引っ込みすぎず、絶妙なバランスを保ちながらも、主役の輝きを感じることができます。さらに、ベースの音程がよくわかり、速いパッセージのピアノ曲でも濁りのないクリアなタッチを聴くことができました」とのこと。