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クロスした腕から光線!? ソニー“mocopi”の可能性広げるSDK活用コンテスト
2023年12月11日 18:12
ソニーは9日、mocopi SDKを活用したインタラクティブコンテンツをコンテスト形式で発表するイベント「mocopi Winter Camp」を実施。8組の発表者が開発したコンテンツやツールを発表。mocopi公式YouTubeチャンネルにて配信も行なわれた。
9月に行なわれた「mocopi AUTUMN CAMP 2023」では、自主開発ツールであれば何でも発表することができたが、今回はテーマが設けられたほか、コンテスト形式で実施。アプリ開発責任者のあきら氏、モーション事業推進室 室長の相見猛氏、ゲスト審査員のメディアアーティスト 坪倉輝明氏の3名が審査。審査員1人が1組ずつに賞を決定する形が取られた。
インタラクティブコンテンツとは、双方向性のあるコンテンツを意味するため、mocopiでは、装着したユーザー側のアクションに対して何らかの反応が返ってくるもの、という認識になるだろう。「mocopiを装着して身体を動かして遊ぶゲーム」がわかりやすい例だ。
このため、前回ゲーム系で発表した参加者がブラッシュアップする形で参戦したり、医療系の開発会社がリハビリのきっかけにmocopiを使ってみた例を紹介したり、mocopiでトラッキングした連続する動作をフィギュア化することでインタラクティブに繋げるといった主張があったりと、ユニークな視点も含めたさまざまなコンテンツが発表された。
上記の通り、身体を使ったゲームコンテンツがメインとなっており、寝る間をオシムさんは、Meta Quest3とmocopiを組み合わせたMR落ち物ゲームを発表。そしてただの落ちてくるものに触るゲームではなく、「かわいいポーズをしろ」などのお題に合わせてポーズを取った後、そのポーズをとった自分の3Dアバターが落ちてきて、それに触れるという内容のゲームとなっていた。
この「ポーズをとる」というルールは、mocopiの動作遅延をカバーする要素になるとともに、複数人いる空間でプレイした際に、プレイヤーが突然謎のポーズをとった後に慌てて落ちてくるものに触れる様が、観ている人にとっても楽しめる要素になるという。また、ゲームの最後にはポーズ一覧が表示され、スクリーンショットを撮って共有することも可能。今後、このゲームを公開できる形にすることが目標とのことだ。
大学生の西野僚馬さんは、mocopiとHololens2と組み合わせて、現実にはできないことをMR空間で実現したいというテーマで、腕をクロスすることで光線を出して的を破壊するゲームを発表。mocopiで身体の位置情報、HoloLens2で視線(頭の回転)の制御を行なうことで、装着者自身が光線を撃っている感覚を得られるように調整できたという。今後は、このくみあわせで対戦型コンテンツの制作を目指しているとした。
この発表に対してあきら氏も「シンプルで、mocopiの機能も活かされている。MRで自分が光線を撃っている感覚を味わえるというのも体験として面白いですし、是非対戦ゲームもやってみたい」とコメントした。
医療・介護系のITソリューションを開発する都築電気は、主に高齢者の運動のきっかけ作りをテーマにした健康増進ゲームを発表。ゲームの内容自体は足下に現れる魚を踏みつつ、頭上を飛んでくるキャラクターをしゃがんで避けるというシンプルな内容で、高齢者のリハビリのテストで必要な筋力やバランス能力を鍛える動作で構成されているという。
老化による肉体の影響や、面倒くさいという感情的な要因で高齢者が運動しなくなっていき、徐々に身体能力が落ちていってしまい、さらに身体能力を取り戻すためのリハビリはさらに大変なため、億劫になっていくという悪循環を解決するきっかけとしてmocopiに着目。施設などで、mocopiを使用したゲーム形式の運動を行なうことで、リハビリの億劫さをなくしたり、プレイを観ている人にも「やってみたい」と思わせることができるのではないかと語った。
この発表に対して相見氏は、mocopiユーザーに高齢者がほとんどいない状況であることと、mocopiのインタラクティブ性を活用して高齢者にも楽しんでもらいつつ健康になってもらえるかもしれないという、新しい使い方を見せてもらって感動した、とコメントした。
おめんくんさんは、mocopiを活用したポーズゲーム「mocopittan」を発表。mocopiを使って、お題として表示されたポーズと同じポーズを取り、その精度が点数として表示されるというシンプルなゲームで、実際に制作すると、イベントでの賑やかしや、アクティビティとして利用するのに適していると気づいたという。また、このゲームはTGS2023にも出展しており、mocopiを活用したゲームがまだ少ないことから、注目度が高いことがわかったという。
AUTUMN CAMPにも参加したboichiさんは、Meta Quest2とmocopiを組み合わせたVRゲームをブラッシュアップして参戦。対戦ゲームとして、敵の攻撃に対して決められたモーションを取ることで反撃していくものとなっていた。mocopiでトラッキングした動きをゲーム内にコマンドとして反映させるため、動きの分析にAIを活用。
このAIは事前に殴る、蹴るといった動きに名前を付けて登録しておくことで、mocopiのトラッキングにブレが出た際にも、この動作は殴っている、蹴っているといった分析をサポートして、対応したコマンドをゲームの方に送信できるというもので、この動きを登録できるソフトも公開するという。
今後の課題としては、複数の動作を1コマンドとして指定できるようにすることで、ゲームの幅を広げることや、mocopiとAIでともに発生する遅延とゲームの爽快感にどう繋げるか、といったことがあるという。
同じくAUTUMN CAMPに参加した奈茶さんとちゃばさんは、前回のダッシュゲームから大きく進化したミニゲーム集を発表。ジャンプや、しゃがむ動作と身体を大きく広げる動作の組み合わせ、腕を大きく広げて傾かせるなど、シンプルな動作で操作していくミニゲームを複数用意。mocopiを「マカロン型爆弾」に見立て、デスゲームとしてまとめていることも、会場や審査員から笑いを誘っていた。
そのほかにも、身体を大きくつかったリズムゲームや、アバターを複数体使って1人でもアニメーションを作れるアプリ、モーションを活用して好みのフィギュアを作成できる3D情報を構築できるソフトなども参戦。YouTubeでライブのアーカイブが観られるため、詳しくはそれを参照のこと。
すべての組の発表が終わると、あきら氏、相見氏、坪倉氏の3名が別室に移動し協議。その後受賞者の発表が行なわれた。
あきら氏による「SDK FumLab所長賞」にはboichi氏が受賞。選考理由は、インタラクティブコンテンツの制作だけでなく、それを誰もが使えるように配布していることに着目したという。mocopiの動作データの分析は大変な作業になるため、今回のAIでサポートできるソフトを配布することで、多くの人がさらmocopiの可能性を広げられるようになるとした。
坪倉氏による「ゲスト審査員賞」には、奈茶さんとちゃばさんのデスゲームが受賞。とくに全体の完成度の高さと、UIなどの丁寧な作り込み、さらにデスゲームというキャッチーさを評価。広告業界の経歴を持つ坪倉氏は、「バズる要素がいっぱいある作品」と評し、たくさんの人が楽しめて伸びるコンテンツになると感じたとコメントした。
相見氏の「事業部長賞」は、都築電気の健康増進ゲームが受賞。選考理由は、身体を動かすインタラクティブコンテンツのユースケースを広げていくという点で非常にユニークであること、高齢者というモーションキャプチャーに関心を持っていない層が利用できて、健康にも繋がること、さらにその高齢者が子供や孫と楽しめる要素があるなど、ソニーの外部からでてくる新しいアイディアとして非常に良い物であると感じたためとした。
今回受賞した3組の作品は、mocopiデベロッパーサイトに「mocopi Certified」のロゴが付いて掲載されるほか、ソニーストア名古屋にてコラボ展示も行なわれる。
また、mocopiの次のメジャーアップデートは1月下旬を予定。新しいことができるようになる、これまでと比べて大きなアップデートを予定。またその次の3カ月後と6カ月後のメジャーアップデートもユーザーの期待に応えられるような大きなものが続く予定とのことだ。