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ソニー、タカラトミーら共同開発の月面ロボ「SORA-Q」、SLIM撮影に成功

LEV-2「SORA-Q」が撮影・送信した月面画像
(C)JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学

宇宙航空研究開発機構(JAXA)とタカラトミー、ソニーグループ、同志社大学の4者は、共同開発した変形型月面ロボット「Lunar Excursion Vehicle 2(LEV-2)/愛称SORA-Q」が、月面に軟着陸した小型月着陸実証機「SLIM」の撮影に成功したと発表し、撮影画像を公開した。

これによりSORA-Qは、超小型月面探査ローバ「Lunar Excursion Vehicle 1(LEV-1)」とともに日本初の月面探査ロボットとなり、世界初の完全自律ロボットによる月面探査と、世界初の複数ロボットによる同時月面探査を達成。さらにLEV-2は、世界最小・最軽量の月面探査ロボットとなった。

変形型月面ロボット「SORA-Q」(左)変形前 (右)変形後
(C)JAXA/タカラトミー/ソニーグループ(株)/同志社大学

SORA-Qは、直径約80mm、重さ約250gの超小型変形型月面ロボット。月面に着陸後、瞬時に球体が左右に拡張変形して、月面を走行。搭載した前後2基のカメラで撮影した画像をBluetoothでLEV-1に送り、LEV-1が地球に送信する。開発にはタカラトミーが玩具づくりで培った小型化、軽量化の知見と変形機構にかかわる技術も活用されている。

このSORA-Qは、LEV-1とともにSLIMに搭載され、2024年1月20日のSLIM着陸直前にLEV-1とともに月面に放出された。その後、SORA-QがSLIMおよび周辺環境を撮影し、LEV-1の通信機を使って地球に画像を転送した。

画像が転送されたことで、LEV-1とSORA-Q間の通信機能が正常に動作していること、SORA-Qが収納状態の球体から変形したことから、SLIMから放出された後、正常に月面で展開・駆動したことが確認された。

さらに、SORA-Qが自律制御でオンボードの光学カメラを使って撮影した複数枚の画像の中から、SLIMが画角内に写っている良質な画像を画像処理アルゴリズムにより選定し、送信したことも分かった。現在は走行ログを含めたその他のデータの解析を行なっており、この結果も今後、公表予定。

ソニーグループのテクノロジープラットフォーム Exploratory Deployment Group統括部長、夏目哲氏は「本共同研究において、当社は、ソニーセミコンダクタソリューションズのIoT向けスマートセンシングプロセッサー搭載ボード「SPRESENSE」を活用し、月面ロボットの制御システムおよび画像処理技術の開発を主導しました。共同研究を通じて、宇宙の過酷な環境における民生デバイスの活用の可能性を示せたことは、大きな成果だととらえています」とのコメントを発表している。

JAXA 宇宙探査イノベーションハブ ハブ長 船木 一幸

玩具の技術と最新のセンサー・ロボティックス技術、そしてJAXAの宇宙技術との融合により開発され、優れた自律運用と運動特性とを兼ねそなえたLEV-2「SORA-Q」が、この度、世界最小・日本初の月面ロボットとしてSLIMの撮影に成功するという大きな成果を収めることができました。研究開発に参画いただいた企業・機関の皆様、そしてご支援・応援いただいた多くの皆様に深く感謝いたします。

宇宙探査イノベーションハブが日本中の企業の皆様と連携し、共に月を目指した研究開発を始めてから今年で10年目になります。日本ならではの新しい月面探査技術が数多く育ちつつあり、LEV-2に続く日本の活躍が期待される、月の時代の新たな幕開けです。

株式会社タカラトミー 代表取締役会長 富山 幹太郎

小型月着陸実証機SLIMのピンポイント着陸というミッションにおいて、LEV-2「SORA-Q」が大きな貢献を果たせた事を大変嬉しく思います。これによりSORA-Qは月面に着陸、撮影した日本最初のロボットになりました。今回の成功は共に夢を追い求めた全ての関係者と応援して下さった皆様のおかげです。心より感謝申し上げます。

このSORA-Qプロジェクトの成功が、世界中の子どもたちが自然科学に対する興味や関心を持つきっかけになることを願うと同時に、難しい事や新しい事に挑戦していく事の大切さと、夢と希望を与え自分自身の未来を創り出す力を信じるきっかけとなることを期待しています。

創業100周年を迎えるこの記念の年に、生業である“おもちゃ”の技術が今回の偉業の一翼を担えたことを誇りとし、私たちはこれからも「アソビ発」の新たな挑戦を続けてまいります。

ソニーグループ株式会社 テクノロジープラットフォーム Exploratory Deployment Group 統括部長 夏目 哲

この度、変形型月面ロボットの共同開発に参画し、無事に月面での探査ミッションを達成できたことを、光栄に思います。

本共同研究において、当社は、ソニーセミコンダクタソリューションズのIoT向けスマートセンシングプロセッサー搭載ボード「SPRESENSE」を活用し、月面ロボットの制御システムおよび画像処理技術の開発を主導しました。共同研究を通じて、宇宙の過酷な環境における民生デバイスの活用の可能性を示せたことは、大きな成果だととらえています。

ソニーグループは、今後も新たな技術の創出と、宇宙を含むその応用可能性の探索に積極的に取り組み、私たちの文明の進化や地球の持続可能性に貢献する研究開発に貢献してまいります。

同志社大学 生命医科学部 教授 渡辺 公貴

この度は小型月着陸実証機SLIMプロジェクトに参画して、4者の共同研究の成果物であるSORA-Qが月面での画像の取得を達成したことを大変嬉しく思うと同時に感謝します。SORA-Qは80mmと非常に小さいですが、この小さな一粒が今後の宇宙開発に大きく貢献することを信じます。同志社は来年で創立150年を迎えます。引き続き新しいことへの挑戦をしてまいります。