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「ヤマトがなければガンダムもなかった」庵野秀明企画・プロデュース「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」開幕
2025年3月15日 11:00
3月15日から東京・西武渋谷店で開幕する庵野秀明 企画・プロデュース/放送50周年記念「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」。開幕前日の14日に庵野氏らが登壇するテープカットとメディア向け内覧会が行なわれ、庵野氏は「GQuuuuuuX(ジークアクス)をきっかけにファーストガンダムを観る若い方もいると聴いています。ガンダムが大丈夫ならヤマトも大丈夫なので、ぜひ」と呼びかけた。
「宇宙戦艦ヤマト」が放送50周年を迎えたことを記念して行なわれるイベント。「『宇宙戦艦ヤマト』との出会いがなければ、今の自分はなかった」と語る庵野秀明氏が企画・プロデュースを手がけ、アニメ特撮アーカイブ機構(ATAC)が保管する資料の中から、当時の企画書やキャラクター/メカニックなどの設定画をはじめとする貴重な資料の展示、企画展オリジナルグッズの販売などが行なわれる。
会期は3月15日~31日までの合計17日間で、チケットは大人前売り2,500円、当日券2,700円。画・庵野秀明による特製アクリルスタンドがセットになったプレミアムグッズ付きチケットも5,000円で販売されている。会場は西武渋谷店 A館7階・2階 特設会場。
宇宙戦艦ヤマトは「あと半世紀以上、語り継がれてもいい作品」
テープカットでは冒頭、東北新社の小坂恵一代表が「庵野さんをはじめ、多くの方々のご協力・サポートによって全記録展を開催することができました。この宇宙戦艦ヤマトがいかに素晴らしい作品であるかを感じていただければと思います」と挨拶。
また森雪役の声優で、講談師・一龍斎春水としても活躍する麻上洋子氏は「あの日から50年も経ってこういう日が訪れるということは本当に信じがたい、そして嬉しいことです。古代くんも島くんも真田さんも艦長もきっと見守ってくださっていることと思います」と語った。
庵野氏は「宇宙戦艦ヤマトという作品は、僕だけでなく、僕と同世代でリアルタイムで見ていた人にはものすごい衝撃を与えてくれたエポックなアニメーションでした。本当にワンオフの作品だと思っています」と語った。
「ヤマトはヤマトでしかない。なのでガンダムのようにはならなかったんですけど、それはヤマトの宿命として、それだけ素晴らしい作品だったんだろうなと思っています」
「展示を見ていただけると分かりますが、設定やそのほかも原版が残っています。今回、これを機にいろいろと(資料を)発掘できて、みなさまに見て頂く機会ができたことを本当にうれしく思います」
「ヤマトはあと半世紀以上、語り継がれてもいい作品だと思っていますので、僕はもういないと思いますが100周年に向けて、また語り続けてくれればという思いを込めています」
「いろいろな方からの協力も得ていますが、こういったもの(展示会)は商業的な側面もありますので、ファンのみなさんの支えがないと実現しないものです。みなさんのおかげで、こういった企画を実現できたことを嬉しく思っています。ヤマト風に言えば『ありがとう。以上だ』です。本当にありがとうございます」
ヤマトの衝撃。「何もかもが新しく感じて、そこに痺れた」
テープカット後には、庵野氏とアニメ評論家・氷川竜介氏の取材会も行なわれ、全記録展の見どころや、庵野氏にとっての宇宙戦艦ヤマトの存在について語られた。
庵野氏は全記録展開催に合わせて発表したコメントのなかで「『宇宙戦艦ヤマト』というエポックな作品に出会わなければ、今の自分は無かったと思います」としていた。これについて庵野氏は「当時“テレビマンガ”と呼ばれていたものを“アニメーション”という呼び方に変えてしまった」と、作品の重要性を語った。
「当時は考えられないくらい(細部まで)書き込まれた宇宙船が、そのままの形を保って動くかっこよさがありました。それまでの子ども向けのテレビマンガとは違うハードな人間ドラマも含めて、今まで見たことがないものを見せてもらいました。設定の細かさなども、何もかもが新しく感じて、そこに痺れました」
続いて全記録展の見どころについて問われると、庵野氏は「これまで雑誌などでも発表されていなかった展示として、背景画があります。これはスタッフのご遺族の方からご提供いただけました。僕も見たことがなかったものです」と紹介した。
「設定の原版、直筆のものもあります。松本零士先生の直筆の絵も展示してありますので、それらを直に見てほしいですね」
「できれば可能な限り原版を並べたかったんですが、原版はとても大きいので、会場の広さを考えると展示できる点数が減ってしまう。なので、今回は原版から高解像度でスキャンしたものを展示するほうが点数も増やせるので、そういった展示にしています。それでも可能な限り原版にこだわって精一杯やりました」
氷川氏も「背景画の色彩が本当に素晴らしい。虫プロダクション出身の槻間八郎さんという美術監督が手掛けたものなのですが、『さらば宇宙戦艦ヤマト 愛の戦士たち』が公開される直前に亡くなられてしまっていて、これまで評価を受ける機会がなかったと思います。ヤマトを支える“美意識”のようなものが背景画から伝わってくると思いますので、それをぜひ感じてほしいです」とした。
「原画と設定画は、これまでコピーが多く印刷物に掲載されていましたが、原版では筆圧やピッチ、細かい入り抜けなどに魂がこもっているように感じられます。原版と対峙することによって伝わってくると思うので、そこも楽しんでほしいです」
さらに『機動戦士ガンダム』の富野由悠季監督が手掛けた第4話の絵コンテも展示していると紹介。氷川氏は「ヤマトがブームになって、敵の(戦艦)も含めてプラモデル化されたことが、後のガンダムのプラモデルにつながっています。そういった歴史的なつながりも感じられます」とコメント。
これには庵野氏も「メカコレ(メカコレクション)はガンプラの父」だと言及。「ヤマトがなかったら、ガンダムもなかったということが伝えられると思います。アニメーションの大きな歴史、“これがあったから、あれがある”という流れを感じてもらえますよ」と続けた。
最後に、庵野氏はファンに向けて「ヤマトファンのかたには、できるだけ多くの人にヤマトの素晴らしさを伝えてほしい」と呼びかけた。
「若い人にとっては半世紀も前の作品なので、古く感じてしまうことは仕方ないと思います。ただ、いまうち(スタジオカラー)で作っている『機動戦士Gundam GQuuuuuuX』という作品をきっかけに、ファーストガンダムを視聴する若いかたが大勢いると聞いています。ガンダムが大丈夫ならヤマトも大丈夫だと思うので、ぜひ。TVシリーズは26話しかない作品なので」
「ヤマトの場合は劇場版よりはTVシリーズですね。まずは“ナナヨン”(1974年のTVシリーズ)から見ていただいて『さらば~』『ヤマトよ永遠に』、そして『完結編』を観てほしい」
「“ちょっと絵が古くてダメだ”と思ったら『2199』のリメイクシリーズを観てほしいです。リメイクシリーズにもヤマトの魅力が詰まっていますから」
1/100ヤマト艦や「音」を楽しむ展示も
「宇宙戦艦ヤマト 全記録展」の展示は、メインとなる7階の資料展示エリアと、ヤマト50周年の歴史を振り返る「第年表空間」や約3mの巨大ヤマト艦の模型、グッズなどが展示されている2階展示エリアの2カ所で構成されている。
7階の展示エリアでは企画書やTVシリーズ26話の設定資料、ヤマト内部の構造がわかる模型などが置かれているほか、波動エンジンや主砲、波動砲など、ヤマトの「音」を楽しめる展示なども行なわれている。ちなみに内覧会では特に波動砲の音が多く再生されていた。
2階展示エリアでは1/100スケールのヤマト艦が中央に鎮座。壁面にはTVシリーズや木村拓哉主演の実写版、そしてリメイクシリーズまでの年表が掲示されている。
グッズブースではオリジナルグッズの販売や、3月15日10時より予約受付開始となる「1/700スケールプラモデル 宇宙戦艦ヤマト[放送50周年 庵野秀明プロデュース版]」の展示などが行なわれている。
全記録展の入場特典として、特製しおりやリストバンドが用意されており、2階展示エリアへの入場にはリストバンドを装着する必要がある。
そのほか会期中は、西武渋谷店A館正面玄関にあるLEDビジョンが展示会仕様となるほか、階段の踊り場にフォトスポットが設けられ、A館とB館をつなぐ5階連絡通路でもプラモデル展示などが行なわれる。4階の365cafeではコラボカフェメニューも用意される。