Android上でDTCP-IP再生など。「組込み技術展」開催

-SpursEngine搭載の外付けAVCエンコードカードも展示


期間:5月13日~15日

会場:東京ビッグサイト


 最新の組込み技術を用いたハード/ソフトウェア製品やソリューションを展示する「第12回組込みシステム開発技術展」が東京ビッグサイトで5月13日~15日に開催された。

 なお、期間中には同時開催の展示会として「ソフトウェア開発環境展」、「データウェアハウス&CRM EXPO」、「データストレージEXPO」、「情報セキュリティEXPO」、「RFIDソリューションEXPO」、「ダイレクト マーケティングEXPO」、「Web2.0マーケティング フェア」、「グリーンIT EXPO」も行なわれた。



■ Googleの「Android」上でビデオ再生するソリューション

 米グーグル(Google)を中心に展開する携帯電話向けソフトウェアプラットフォーム「Android」を活用した事例が数社で展示。携帯電話だけでなく家電機器向けのソリューションも注目されていた。

 ユビキタスのブースでは、DTCP-IPコンテンツに対応したプレーヤーとしてAndroid搭載ボードを使用し、テレビに出力するデモを実施。TIのOMAP 3530を搭載するボード「BeagleBoard」を使って、Android上にDTCP-IP機能を実装した「UbiquitousSAFE DTCP-IP」の展示で、デモではBlu-ray DiscレコーダのHDDに録画した番組をテレビに伝送/再生していた。AES暗号の復号化はソフトウェアで行なっており、17Mbps程度のコンテンツでも問題なく再生できるとしている。

 DTCP-IP 1.2に対応。プログラムサイズを50KBまで抑えられるという軽さと、低消費電力を特徴としている。OMAP3とAndroidに対応したバージョンの「UbiquitousSAFE DTCP-IP」の提供時期は6月末を予定し、SDKは既に提供を始めている。

ユビキタスが行なっていたDTCP-IPソリューションのデモ

使用ボード

デモの概要

アイ・エス・ビーが行なったAndroidデモのメニュー画面

 携帯電話向けソフトウェア開発などを行なうアイ・エス・ビーは、リビングにおけるAndroid活用例として、動画/音楽再生やインターネットブラウザ、Bluetoothなどの機能を備えたSTBをイメージした製品の事例を展示。ハードウェアとしては同じくOMAP 3530搭載の評価ボードを使用。デモではデータ通信にauの通信カードを使用していた。

 Androidがサポートしているフォーマットの動画/音楽再生や、Bluetoothのオーディオ機能などが利用可能。デモ機での動画再生は、ソフトウェアデコードしていることもありサイズは480p程度だったが、インターネットブラウザは1,280×720ドット表示にも対応し、大型テレビなどでの利用を想定している。ディスプレイにはDVIで出力。


使用ボード。映像はDVIより出力

480pのデモ映像を再生

携帯電話で撮影した画像をBluetoothで転送

 富士通ソフトウェアテクノロジーズは、Androidによる組込みデバイス開発の一つとして、DLNAを利用したデジタルフォトフレームを提案。ネットワーク内のストレージにある静止画を表示することを想定したデモ機を展示した。

 マクニカの静止画スライドショー用組込みミドルウェア「PictImpact」をAndroidと組み合わせたもので、富士通のDLNAミドルウェアを使用して開発。ネットワーク機能の活用として、ニュースや天気といった情報も取得/表示する高機能なフォトフレームをイメージした画面表示となっていた。

富士通のデジタルフォトフレームデモ

ディスプレイに静止画と天気などを表示

ボード部



■ フルHD動画エンコーダの高速化、小型化など

 東芝ブースでは、11日に発表されたリードテックのSpursEngine搭載外付けAVCエンコードユニット「WinFast HPVC1100」が展示された。

 製品の仕様は既報の通りで、ExpressCardスロットを備えたノートPCに接続できる外付け動画エンコードユニット。発売予定は6月末だが、同梱ソフトを検討中のため価格は未定。6月2日~6日に開催される「COMPUTEX TAIPEI」で動作デモを行なう予定となっている。

WinFast HPVC1100。右側にあるExpressCardを本体前面端子とケーブル接続し、カードをPCに挿入して利用する。価格は未定だが、デスクトップ向けのカードタイプ(TMPGEnc同梱)が29,800円で、それよりも若干高価格になると予想される

SpursEngineとWinFast製品の概要

本体内部

 機能はデスクトップPC用の「WinFast PxVC1100」と共通で、ハードウェアのMPEG-2、MPEG-4 AVC/H.264エンコーダ/デコーダを搭載する東芝のメディアプロセッサ「SpursEngine」を内蔵。AVCの高速エンコードやデコード、マルチメディア処理などを高速化する。今後はLinux OS向けのSDKも公開予定。

デスクトップPC用向け「WinFast PxVC1100」も展示東芝ブース内には、SDカード向けソリューションとして、著作権保護規格対応ミドルウェアを紹介するコーナーも。事例としてワンセグ録画対応DVDプレーヤー「ポータロウ」が展示されていた
12セグをネットブックで視聴することをイメージしたデモ。B-CASに対応していないため、今回のデモではビデオファイルを再生

 テクノマセマティカルは、独自アルゴリズム「DMNA」(Digital Media New Algorithm)を用いた製品を中心に紹介。

 MPEG-2のソフトウェアデコーダを用いた事例では、ネットブックで12セグの地上デジタル放送を受信できるという技術を紹介。富士ソフトのテレビ向けミドルウェアとの組み合わせで実現したもので、フルHD映像がAtomプロセッサ上で軽快に動作するという。日本の場合はCAS対応がコスト面などで問題になるが、海外向けでは実際に採用に向けた話も進めているという。

 日本テレビと共同で開発した「低遅延オンエア送り返しシステム」は、テレビ中継の際に現場スタッフが確認する映像に遅延が起こる問題を解消するもの。

 デジタル放送では、オンエア映像を現場で確認する場合のタイムラグがアナログ放送に比べ大きく、2.5秒の遅延が発生するという。これに対し、テクノマセマティカルのDMNAでMPEG-4 AVC/H.264エンコーダ/デコーダの演算量を削減し、低ビットレート/高画質の映像をIPで伝送し、0.2秒まで遅延を抑えたという。

 そのほか、静止画のアップスケーリング対応LSIも展示。1,024×768ドット以下の静止画を、1,280×1,024ドットのサイズまで、ジャギーの少ない滑らかな画質で拡大できるという。

日本テレビにエンコーダを提供したことで実現した「低遅延オンエア送り返しシステム」静止画のアップスケーリングデモ
富士通は、MPEG-4 AVC/H.264の1080/60p対応コーデックLSIを7月より量産開始する。フルHDのMPEG-2とMPEG-4 AVC/H.264の双方向変換に対応したトランスコーダLSIも2010年1月に量産予定日立ブースでは、ルネサスの携帯電話向けフルHD録画/再生対応アプリケーションプロセッサ「SH-MobileHD1」を展示日立超LSIシステムズが製造している世界最小のフルHD対応MPEG-4 AVC/H.264コーデックモジュール(右)。監視カメラやビデオ会議などでの利用を想定する
NECブースでデモを行なっていた、微弱電波を用いたエリア限定ワンセグ。国立科学博物館、NTTドコモと協力して実証実験も行なった会場のデモで使用したワンセグ送信アンテナ同じくNECブースで、2つのマイクを用いてノイズ情報を取得し、ノイズキャンセルを行なう「EuphoMagic」をデモ


(2009年 5月 15日)

[AV Watch編集部 中林暁]