地デジの新著作権保護方式は年内に技術方式を策定

-「2011年7月前で、できるだけ早期に運用開始」



 総務相の諮問機関である情報通信審議会は2日、「デジタル・コンテンツの流通の促進等に関する検討委員会第56回」を開催。地上デジタル放送の著作権保護方式(エンフォースメント)の見直しについて、新方式(技術開示方式)の技術方式/運用規定の策定目標を「年内」と決定した。

地デジ新エンフォースメントの具体的なプロセス。4の(1)に「年内に」の文言を付記

 今回の委員会では、1年近くに渡り議論を進めてきた、地上デジタル放送の著作権保護方式(エンフォースメント)の見直しや、コンテンツの取引市場について、7月中旬の情報通信審議会に提出する中間答申(案)を確認。議論を交わした。その中で、現行のB-CASに並ぶ方式として検討を続けてきた、新しい「技術開示方式」の技術規格策定目標を「年内」と記載し、答申案に盛り込むこととした。

 新方式は、現行のB-CAS方式の放送を継続しながら、「選択肢の多様性」と「保護の仕組みの透明性」を前提に導入。ソフトウェア/チップ化して機器に著作権保護機能などを組み込むもので、その技術仕様を“開示”し、ライセンス発行/管理機関により、ルールを順守する機器メーカーや半導体メーカーなどに提供する。

 導入へのスケジュールは、「技術方式・運用規定の策定」→「ライセンス発行・管理機関の設置」→「放送局送信設備改修/受信機開発、製造」→「運用開始」となる。今回は最初の「技術方式・運用方式の策定」について年内策定と定められ、ARIBにおいて新方式に関する標準規格を見直すとともに、Dpaでは見直された技術方式に沿った運用規定の策定を図る。また、その後の段階についても関係各社が協力することを確認。実際の運用開始については「2011年7月24日のデジタル全面移行の時期までに、できるだけ早期」としている。

新方式におけるライセンス発行・管理機関の全体相関図

 新方式は民放連などが以前検討しながらも、2007年12月に導入見送りとなった方式などを参考にし、これらの経験を生かして早期の導入を図るという。なお、現行のB-CAS方式も併存するが、こちらもカードの小型化や事前実装(機器出荷時に実装し、設定の手間を省く)などの改善が並行して行なわれる。B-CASについては民間ベースで順次作業を進めていく。

 委員会の主査を務める慶応義塾大学の村井純教授は、技術検討WGの検討結果をもとに年内という目標を報告。各委員に意見を聞いたが、反対の委員はおらず、「その後も、早期に受信機を手にできるように進んでいくといいと思う(長田委員)」など、早期の運用開始を求める声が多く出た。

 放送事業者の代表は、新しいライセンス発行機関の透明性や、放送局送信設備の改修など、今後のスケジュールについて言及。「(新方式で)短期間で開発していただけるメーカーはあるのか? 誰も搭載してくれないのでは意味がないので、協力していきたい。また、放送局、送信設備の改修は放送事業者の責務だが、民放127社、NHKは54局で、どの程度の改修が必要なのか。コストと期間が問題になる。この改修にかかわるメーカーは2~3社だが、この意義をどれだけ理解して短期間でやっていけるか問題。技術/運用規定の決定後にも、課題はあると認識してほしい。その中で2011年7月よりどこまで早くできるか(福田委員)」とする。

 他の放送事業者も、「年内の目標で推進していきたい。関係者の協力をお願いしたい(関委員)」、「技術方式やライセンス期間の準備までは、“いろいろやることがあって大変”。一方の設備改修の段階は、“単純だけど、タフな世界”。とにかく早期に技術方式や契約要件を作る(藤沢委員)」と言及。また、「制度(法制度による不公平利用への対応)の整備もしないと、後々に禍根を残すことになる(福田委員)」との意見も出た。

 そのほかも、「B-CASには独禁法違反の可能性がある。新しいライセンス機関ついてもその可能性がある。関連法規を考慮すると(中間答申に)記載したほうがいいのではないか」などの意見が出た。また、同委員会の役割について、「コンテンツのマーケットをどう広げるのか、という話になにも至っていない。フランスのJAPAN EXPOでは15万人ぐらい来場するが、目的はアニメとか戦隊ものとか、ゴスロリとか。日本のコンテンツを買いたいと思っている人たちに対し、どうやっていくのかという戦略がどこにもない。コンテンツ立国を本当に考えないと(堀委員)」との提案も出た。

 中間答申案は、7月6日の情報通信政策部会で諮られ、7月10日の情報通信審議会に提出される。


(2009年 7月 2日)

[AV Watch編集部 臼田勤哉]