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ティアック、DSDネイティブのポータブルプレーヤー「HA-P90SD」12月発売。約7万円

 ティアックは、DSDなどのハイレゾ楽曲をネイティブ再生できるポータブルオーディオプレーヤー「HA-P90SD」を12月に発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は7万円前後。東京・中野サンプラザで10月25日に開幕した「秋のヘッドフォン祭 2014」内の記者発表会で明らかにした。ヘッドフォン祭は26日まで開催し、入場は無料。

HA-P90SD(RED)

 「HA-P90SD」は、microSDカードに収めたDSDを含むハイレゾ楽曲が再生可能なポータブルオーディオプレーヤー。10月17日の「オーディオ・ホームシアター展 2014」(音展)で参考展示されていたが、正式に発表された。ヘッドフォン祭のティアックブース内に試聴機も用意している。本体カラーはBLACKとREDの2種類。ストレージメモリは内蔵せず、microSD/SDHC/SDXCカード(最大128GB)内のファイルを再生できる。

HA-P90SDのREDとBLACK

 DSDはネイティブ再生で、最高5.6MHzまで対応。そのほか、リニアPCMやFLACは最高192kHz/24bit、AACは64~320kbps、MP3は32~320kbps、WMAは48~384kbpsの再生をサポート。なお、FLACの176.4kHzと192kHzの再生は、ファームウェアアップデートにより対応する。対応タグはMP3 ID3やWMA/FLAC、DSDIFF EmChunk、DSF ID3v2.3。楽曲管理は、曲名別、アルバム別、アーティスト別、ジャンル別、プレイリスト別、favorites。

BLACK
RED

 プッシュプル回路とオペアンプによるディスクリート構成のヘッドフォンアンプを内蔵し、他のプレーヤーのヘッドフォンアンプとしても利用可能。PCやスマートフォンのUSB DACとしても利用できる。ヘッドフォン出力はアンバランスで、ステレオミニを1系統備える。

 DACチップはTI/バーブラウンのPCM1795を搭載。オペアンプもバーブラウンのOPA1602 SoundPLUSを採用する。出力は170mW×2ch(32Ω時)。出力インは、4段階のアッテネータと2段階のゲイン調整で、合わせて8段階で調整でき、様々な能率のヘッドフォンで使用可能。ヘッドフォンの対応インピーダンスは8~600Ω。

DACチップはPCM1795
プッシュプル回路構成で、オペアンプはOPA1602
170mW×2ch(32Ω)の大出力が可能
ゲイン調整などの出力設定
回路の高音質化への取り組み
様々な接続機器に対応

 組み込みのOSを採用した軽快な動作も特徴。アナログ・デバイセズのBlackfinプロセッサ「BF606」を搭載し、省電力化とハイスペックを両立させたという。マスタークロックは44.1kHz系と48kHz系それぞれの水晶発振器を搭載。

DSDネイティブ再生に対応。Blackfin BF606を搭載する
再生対応ファイル
上部にステレオミニのヘッドフォン出力と、デジタル/アナログ兼用の入力を装備。スイッチで切り替えて使用。側面に、microSDカードスロットや、メニュー操作用のジョグダイヤル、ホールドスイッチなどを備える

 USB DAC機能を備え、端子はパソコン接続用のUSB-Aと、iOS/Android端末向けのマイクロUSBを装備。DSD 5.6/2.8MHzや、PCM 192kHz/24bitに対応。USB接続時はアシンクロナス(非同期)モードにより、ジッタを抑えた再生が行なえる。Windows/iOS/Android端末とUSB接続してハイレゾ再生できるアプリ「TEAC HR Audio Player」を無償で利用可能。

 光デジタル入力と同軸デジタル入力、アナログ入力は兼用で3.5mm。デジタル出力を持たないプレーヤーとも連携可能。スイッチで切り替えて使用する。光/同軸デジタル入力と同軸デジタル出力もPCM 192kHz/24bitに対応するほか、同軸デジタル出力からDSD 2.8MHz信号のDoP(DSD over PCM)出力にも、今後のファームウェアアップデートで対応予定。

上部のボリュームやゲイン調整部など
側面のレバーで曲送りなどが可能
下部にUSBを装備

 ディスプレイは2.7型の単色有機ELで、日本語表示も対応。タッチ操作には非対応。なお、無線LANやBluetoothは搭載しない。容量3,460mAhのリチウムイオンバッテリを内蔵し、連続再生時間は、iOS端末との接続時が約7時間、microSDからのDSDネイティブ再生は約6時間)。オートパワーセーブ機能も備える。充電はACアダプタ(急速充電対応)またはUSB経由で行なえる。

 周波数特性は10Hz~80kHz、SN比は105dB以上(Low GAIN、100mW、32Ω時)、全高調波歪み率は0.004%(同)。筺体はアルミ製で、高い堅牢性を実現。大型ボリュームなどを搭載。外形寸法は123×69.6×21.5mm(縦×横×厚さ)、重量は280g。

特徴のまとめ
BLACKの背面
REDの背面
BLACKとREDを並べたところ
同軸デジタルからのDSD DoP出力も対応予定
主な仕様

業務機のノウハウでDSDポータブル再生を実現。「家でスピーカー」の利用も

ティアックの吉田穣氏

 25日のヘッドフォン祭の中で行なわれた発表会では、ティアックが初となるハイレゾポータブルプレーヤーを製品化するまでに至った経緯などを、音響機器事業部 コンシューマーオーディオビジネスユニット 企画・販売促進課の吉田穣氏が説明した。

 同社業務用機器のTASCAMブランドでは早くからDSDに取り組んでおり、2001年のレコーダ「DS-D98」や、「DV-RA1000」などの製品で対応。「DA-3000」も多くの制作現場で使われている。また、コンシューマ向け機器でも、ティアックブランドのUD-501やPD-501HRなどを皮切りにDSD対応を進め、小型モデルなども展開している。こうしたDSD機器を手掛けてきたことノウハウが、ポータブルでネイティブ再生対応できる「HA-P90SD」の製品化につながったという。

TASCAM/ティアックブランドのDSD対応製品の歴史

 吉田氏はポータブルでDSD対応を実現した「キモ」の一つとして、アナログ・デバイセズのBlackfinプロセッサ採用を挙げた。同社製品では初搭載とのことで、組み込みOSとの組み合わせによる軽快な操作を可能にし、起動時に自動でプレイリストを作成する機能も利用できる。「操作時に待たされるようなタイムラグのイライラが無い」としている。

 また、USB DAC機能などで他の様々な機器と接続できることから、外ではヘッドフォンで聴いて、家に帰ったらスピーカーから聴くといった利用を提案している。

(中林暁)