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“唸る声”など多彩な表現の「VOCALOID4」発表。ルカのV4版も発売、浅川悠さん登場
(2014/11/21 07:45)
ヤマハは20日、歌声合成ソフト「VOCALOID(ボーカロイド)」の最新バージョン「VOCALOID4」(V4)を発表。楽曲制作ソフトの「VOCALOID4 Editor」や、Cubaseシリーズ用の歌声編集ソフト「VOCALOID4 Editor for Cubase」、歌声ライブラリの「VOCALOID4 Library VY1V4」を12月下旬より発売する。価格はオープンプライスで、店頭予想価格は各1万円前後。対応OSは、VOCALOID4 Editorが Windows 7/8/8.1で、VOCALOID4 Editor for CubaseはWindows 7/8/8.1に加え、Mac OS X 10.8/10.9もサポートする。
既存のVOCALOID3ユーザー向けの優待販売も実施。「VOCALOID3 Editor」、「VOCALOID3 Editor for Cubase」、「VOCALOID3 Library VY1V3」のユーザーは、各5,400円(税込)でVOCALOID STOREにてアップグレードできる。さらに、11月10日以降に 「VOCALOID3 Editor」や「VOCALOID3 Editor for Cubase」を購入したユーザーは、無料でアップグレード可能。無料アップグレードには領収証などが必要で、詳細はvocaloid.comのサイトで案内する。
うなるような「グロウル」と、2つの歌声をブレンドできる「クロスシンセシス」などを追加
VOCALOIDは、同社が開発した音声合成ソフトで、'04年に初代バージョン、'07年に2世代目の「VOCALOID 2」、'11年に3世代目の「VOCALOID 3」が登場。エディタソフトと組み合わせてボーカルを作成できる歌声ライブラリとして、初音ミク(クリプトン・フューチャー・メディア)や、がくっぽいど(インターネット)、東北ずん子(AHS)などのソフトが発売されている。
20日に渋谷PARCO内の「2.5D スタジオ」において発表会が行なわれ、VOCALOIDの生みの親であるヤマハの剣持秀紀氏が新モデルについて説明。発売は12月下旬だが、「クリスマス前には買える」という。
「VOCALOID 4」のポイントとして、剣持氏は「表現力」と「使いやすさ」を挙げた。その要素となる2つの大きな機能は、「グロウル(Growl)」と「クロスシンセシス(Cross-Synthesis)」。グロウルは、のどを震わせて唸るような声を表現するもので、ブルースやロックなどのほか、メタルなどに特徴的な歌唱表現に役立てられるという。
クロスシンセシスは、2つの歌声ライブラリをブレンドして、新たな音色を作り出すことができる機能。同じシンガー(初音ミクや巡音ルカなど)で、2つの異なるトーンの歌声(SOFTとDARKなど)のデータがある場合、これまでは1つの編集画面で両方の歌声を織り交ぜることはできなかった(一度書き出してから再度読み込むなど)が、これをブレンドして編集可能になった。ブレンド具合を時系列で調節できるため、例えば、やさしい歌声から、力強い歌い方へなだらかに変えるといったことが簡単にできるようになる。
なお、VOCALOID4では、従来バージョン「VOCALOID3」の歌声ライブラリも連携可能だが、グロウルはVOCALOID4のみで、クロスシンセシスはVOCALOID3の歌声ライブラリも利用可能。なお、VOCALOID2のライブラリは両機能には対応しない。
このほかの機能強化として、「ピッチレンダリング」にも対応。ピッチやビブラートの掛かり具合が、実際に聴く前に視覚的に分かるグラフを描画できるようになり、作業の効率化が図れる。また、ロボットボイスのようなエフェクトの音声を作る際に、一度オーディオデータに書き出すことなく、簡単に変えられる「ピッチスナップモード」も用意。音のつながりを、なめらかではなく階段状にする、いわゆる「ケロケロボイス」も作りやすくなる。
このほか、Cubaseと連携するエディタの「VOCALOID4 Editor for Cubase」(ボカキュー)では、MIDIキーボードなどの外部MIDI機器から入力されたMIDI情報をリアルタイムでVOCALOIDの編集画面に反映。また、演奏に合わせて発声させることも可能で、キーボードなどで演奏するように鳴らしながら「VOCALOID」のシーケンスデータを作成できる。なお、この機能で発音できる音声は歌声ライブラリの種類によって異なる。日本語の歌声ライブラリの場合は「ア行」と「ラ行」から選択する。
上記の「ピッチレンダリング」と「リアルタイム入力」の2つの機能は、VOCALOID3/2ライブラリでも利用できる(VOCALOID2ライブラリはVOCALOID3へのインポートが必要)。
なお、ボカキューのパッケージ版には、「Cubase 7」 のコンパクトバージョン「Cubase AI」も同梱。歌声制作だけでなく、作曲/録音/編集/ミックスもできる「Cubase AI」との組み合わせにより、購入したその日から音楽制作を始められる。なお、ダウンロード版にはCubase AIは付属しない。
VOCALOID4のフル機能を活用できる歌声ライブラリの第1弾「VOCALOID4 Library VY1V4」は、女性歌手の声のデータベースを収録。従来のVOCALOID3の歌声ライブラリである「VY1V3」をもとに、VOCALOID4におけるスタンダードな女性声を目指して開発されており、クリアな滑舌と力強く伸びのあるロングトーン、スムーズな発声により、あらゆるジャンルを歌いこなすという。
VOCALOID4の新機能である「グロウル」と「クロスシンセシス」の性能を活かせる「Normal」、「Soft」、「Power」、「Natural」の4つライブラリを同梱。これらを組み合わせて歌声の表現を広げることができる。パッケージイラストは、イラストレーターの「坂本ヒメミ」氏を起用している。
巡音ルカV4版が発売決定。浅川悠さん「思い入れの強い作品」
ゲストとして、「初音ミク」の開発者であるクリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏や、「東北ずん子」などの歌声ライブラリを展開するAHSの尾形友秀社長が登壇。ニコニコ生放送とUstreamでの生中継も行なわれた。
クリプトン・フューチャー・メディアの佐々木渉氏は、同社のVOCALOID4対応ライブラリ第1弾として、「巡音ルカV4X」を2015年2月下旬に発売すると発表。価格は税込17,280円。
上記のVOCALOID4の機能に最適化してるほか、独自の新機能として、音符一つ一つに声の表情(強い/弱い/囁きなど)を設定できるという「Voice Color」や、フレーズの語尾に吐息を加える「Voice Release」、子音の長さを伸ばして滑舌をコントロールする「子音拡張機能」なども搭載する。さらに、11月28日より同社サイトで新情報を順次追加予定としている。また、初音ミクや鏡音リンなど他のライブラリも順次VOCALOID4で対応していく方針を示した。
巡音ルカのサンプリング音声を担当した声優・浅川悠さんもゲストとして登場。今回の「巡音ルカV4X」収録は、従来バージョンの10倍ほどの収録を重ねているとのことで、ある時はJポップシンガーのように発声したり、浅川さんからの提案でバリエーションを加えるなど、様々な“息の成分”を録ったとのこと。
現在も収録を続けているという浅川さんは「声優冥利に尽きます。セクシーだけど可愛く、など相反するものをオーダーされたり、役者としての技術や引き出しを試されているような気分。一緒に作ってる感じがして、今回は特に思い入れが強くなりました」と笑顔でコメントした。
AHSは、現在VOCALOID2のライブラリとして展開している「猫村いろは」「ボカロ小学生 歌愛ユキ」、「ボカロ先生 氷山キヨテル」、「SF-A2 開発コード miki」の4製品を、VOCALOID4対応版として2015年発売に向けて開発を進めていることを発表した。
さらに、VOCALOID3向けに提供している「結月ゆかり」のVOCALOID4対応版として、ウィスパー系ボイスを収録した「穏」(おん)を開発中であることも明かした。こちらは2015年第1四半期に発売予定としている。