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新たなソニーへ。電子ペーパーリモコンなど新規事業紹介
若手の事業経験を重視。事業部にとらわれず成長を
(2015/7/6 21:08)
ソニーは6日、若手の開発者を中心に新規事業の創出をめざす「Seed Acceleration Program(SAP)」などについての説明会を開催。同プログラムから誕生したスマートDIYキット「MESH」(5,980円~)や、柄が変わる電子ペーパー時計「FES Watch」(29,800円)、電子ペーパーを用いた学習リモコン「HUIS REMOTE CONTOLLOER」などの商品を披露するとともに、同社の新事業創出の今後について解説した。
ソニーの新規事業創出部は、2014年4月に平井一夫社長直轄のプロジェクトとして始動。それ以前も社内の有志が手弁当で進めてきたプロジェクトや新規事業はあったが、そうした動きを後押しし、若手の開発者などを中心に、新たな事業創出やオープンイノベーションの加速、若手の事業経験の研鑽などを目的に、社内のプログラムとして整備されたものがSAPだ。
さらに、7月1日にはクラウドファンディングとEコマース機能を備えたサイト「First Flight」(ファーストフライト)を立ち上げ。事業化初期段階のプロジェクトに対し、リアルな市場ニーズの検証や、消費者とのダイレクトな対話を通じた開発・商品改善、タイムリーで規模に最適化された販売などの機会を提供する。
電子ペーパーを用いた学習リモコン「HUIS REMOTE CONTOLLOER」は、このFirst Flightの第1弾商品として1,000万円を超える出資を集め、製品化へ進んでいる。
ソニー新規事業創出部の小田島伸至担当部長は、新規事業創出部の約1年間の活動の振り返りや、今後の活動について紹介した。
ソニーの新規事業拡大については、「個人の事業化能力」、「共創力(巻き込む力)」、「ベンチャースピリッツ」という、開発/企画者の個人の属性とともに、チャレンジを促すカルチャーとインフラや、スピード、新しい事業領域の受け皿などが必要と判断。そのために、社長直轄のプロジェクトと位置づけ、2回のオーディションを通過することで、フルタイムの新規事業に取り組めるSAPにまとめあげたという。
また、ソニー本社1階にCreative Loungeを開設。開発機材などを揃えるとともに、スタッフや外部のパートナーが作業との連携に役立てている。また、7月7日~10日までの18時~20時までMESH、FES Watch、HUIS REMOTE CONTROLLERのタッチ&トライイベントを実施。プロジェクトメンバーと会話しながら、それぞれの製品を試すことができるという。
製品開発とともに重視している点が、開発担当者に、最初から最後まで「End to Endの事業経験を積ませる」ということ。SAPで、オーディションを通過したプロジェクトについては、企画担当者が統括課長というポジションで、製品全体をリードしていく形となる。
すでに一般販売がスタートしている、「MESH」や電子ペーパー腕時計「FES Watch」、クラウドファンディングがスタートしたリモコン「HUIS」の企画者もそれぞれ統括課長というポジションになる。
今後の新規事業の展開について、小田島部長は「まずはユーザーに刺さる(受け入れられる)ものを作るのが最優先。経営層に相談し、拡販できるものができれば、そういう体制を取る。また、製品が誰にも刺さらなければ、(プロジェクト)を畳むか、あるいは小規模でも支持されれば届け続けるかどうかを、判断していく。案件数にはこだわらず、いい案件があればピックアップする」とした。
ソニー単体ではなく、外部のパートナーと協力する場合もあり、投資会社のWiLと組んだ小型スマートロック製品「Qrio Smart Lock」などがその一例で、「一番重視しているのがスピード」と語った。また、事業化のポイントについては、「一番は『人』、個人の事業化能力。2番目は、案件のユニークネス。ビジネスモデルを描けているか」とした。
「ファッションのデジタル化」など新たな事業領域を狙う
FES Watchのリーダーを努める杉上雄紀氏は、「ファッションエンタテインメント」として「FES Watch」を紹介。ファッションでは、洋服の組み合わせなど、無限に近いデザインからお気に入りを選ぶことができるが、FES Watchの狙いは「ファッションのデジタル化」なのだという。FES WatchはFirst Flight上で予約販売を行なっており、価格は29,800円。
「電子ペーパーを紙ではなく、布地として捉えてファッションアイテムとして使う。その実現に向けての第1歩がFES Watch。時計全体の柄が、文字盤だけでなく、ベルトまで変わる。24種類のバリエーションがあり、24個の時計を持っているかのように使える。会社ではフォーマル、仕事終わったらカジュアルにとか。デジタルといっても、スマホ連携機能は入れていない。テクノロジを『身につける喜び』を高めるために使いたい」と語った。
スマートDIYキット「MESH」(5,980円~)のリーダー萩原丈博氏は、「誰もが発明家になれるキット」とMESH紹介。LEDや加速度センサーなど、単一の目的をもったBluetoothモジュールが複数あり、それらを連携させることで一つの目的が達成する「回路」を作るキットだ。
リモコンを反転すると、電灯が点滅したり、モジュールを回転させると、ライトをつけながらスピーカーを鳴らしたりといった電子機器の連携操作を実現する電子回路をモジュールとタブレット内のアプリで、実現するもの。「夏休みの自由研究や学園祭のお化け屋敷とかでも使って欲しい」とした。
電子ペーパー学習リモコン「HUIS」を担当する八木隆典氏は、「自分の必要なボタンだけまとめられるリモコン」としてHUISを開発。家の中には多くのリモコンが存在するが、その必要な機能を集約して、シンプルなリモコンを実現。スマートフォンではなく、あえて専用のデバイスを用意することで、「すぐ使える」を目指しているとした。HUISについての詳細は西田宗千佳氏のインタビューで紹介している。