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ドローンの映像も見られるHMD。ブラザーの新「エアスカウター」7月下旬発売

 ブラザー販売は、業務用ヘッドマウントディスプレイ「AiRScouter(エアスカウター)」の新モデル2機種を7月下旬より順次発売する。業務モデル「WD-200A」と医療モデル「WD-250A」を用意し、価格はオープンプライスで、業務モデルの想定価格は25万円で7月下旬発売。医療モデルはOEMパートナーへの販売となり、発売時期は10月下旬。

装着例

ドローンから目を離さず操縦とカメラ確認が可能に

 エアスカウターは、光源からの映像を前面のミラー部に投写することで、目の前にカラー映像が浮かんで見えるヘッドマウントディスプレイ。ディスプレイ部とケーブル接続されたコントローラ部で構成する。教育やトレーニング、医療機器のサブモニター、セキュリティ・メンテナンス業務などでの使用を想定。

 さらに、ドローンの操作時に使うという用途も提案。HMDを介して片目でドローンのカメラ映像を確認しながら飛ばすことができるため、1人でもドローンの飛行位置とカメラ映像を確認できるという利点がある。HMDでは画面を見ながら作業ができ、情報を確認する際に大きく視線を動かす必要がないため、作業効率の向上やミス防止につながるという点が特徴。ミラー部は用途に応じて反射型と半透過型を交換して使い分けられる。

業務モデル「WD-200A」
主な用途の例
ドローンを飛ばすときのカメラ映像確認にも利用可能

 2012年6月より発売した従来モデルの業務用「エアスカウター」からの変更として両機種とも、1,280×720ドットの液晶パネルを採用(従来は800×600ドット)。独自の光学設計を採用し、明るくシャープな720p映像を表示可能としている。また、装着者や用途などに合わせて、映像の奥行きを30cmから5mまで変えられる焦点距離調整機能も搭載。装着していない目で見ている対象物と、映像の距離を同程度まで近づけることにより、目の疲れを抑えられるという。1m先で見る場合は13型相当の映像表示が行なえ、5mの場合は63型相当としている。ドローン操作時は遠方にピントを合わせる利用方法になる。ピント調整はダイヤル式。

ディスプレイ部とコントローラ部で構成
パネルは1,280×720ドットの液晶
コントローラ部
映像の見え方の例
ダイヤルで焦点距離を調整する

 装着方法は、従来のメガネ型から、ヘッドバンド型に変更。外れにくく自然な装着感を実現し、通常のメガネをかけたまま装着することも可能。フレキシブルなアームも採用し、作業姿勢に合わせて最適なポジションにディスプレイを固定できる。

 インターフェイスは、従来はDVIだったが、HDMIを装備(HDCP対応)することで対応機器を拡大。医療用は、コンポジット(RCA)入力にも対応するほか、医療機器の4:3映像をトリミングして16:9に拡大表示することも可能。さらに、電源についても、医療電気機器で採用されているIEC 60601-1規格のAC電源に対応する。ディスプレイとしての基本仕様は業務/医療モデル共通。

 コントローラ部にバッテリやHDMI入力を装備。MHL対応スマートフォンなどとの接続もできる。内蔵バッテリの連続使用時間は、業務モデルが約2時間、医療モデルが約4時間。USB充電にも対応し、モバイルバッテリなどで充電しながら使うことも可能。

ヘッドバンドで装着し、フレキシブルなアーム部を装備
HDMI入力を装備。USB給電も可能
スマートフォンを含む様々な機器と接続可能

 ヘッドディスプレイの外形寸法は182.9×28.8×266mm(幅×奥行×高さ)で、重量は約145g(ケーブル含む)。コントロールボックスの外形寸法は84×115×28.8mm(同)で、内蔵バッテリを含む重量は業務モデルが約190g、医療モデルが約200g。

 両モデルは、7月15日~17日に東京ビッグサイトで開催される保健・医療・福祉向けの展示会「国際モダンホスピタルショウ2015」に出展される。

3年間で3万台の販売を目指す

 '12年に発売した従来モデルは国内の工場や医療現場など様々な用途に使われているが、本格導入にまでは至っておらず、欧米では主にテストマーケティングとしての導入となっているという。

東京大学医学部付属病院 22世紀医療センターの花房則男氏

 今回の新モデルは、医療モデルの開発において、東京大学医学部付属病院 22世紀医療センターの花房則男氏と共同で研究。血液透析において、必須となる血管に針を通す作業について、患者によっては針を刺すのが困難なケースがあることから、その場合はエコーの映像を見ながら針を刺すという。その場合、従来のモニターを使った映像確認では、患者の腕とモニターを交互に見なければならなかったが、HMDを使うことで視線移動をせずに処置できるという利点がある。

 従来モデルはDVI入力だったため、コンポジット端子を持つ機器と接続できない点や、バッテリが外付けとなっていた。対策としては超音波装置にアダプタやバッテリを貼り付けるという方法をとっていたが、こうした外付けを必要とせず、ダイレクトに映像入力や電源接続ができる機器が必要だったという。

 花房氏がエアスカウターを選んだ理由として「解像度の高さ」を挙げていたが、新モデルではさらに高精細化したことで視認性を向上。透析室のスタッフにアンケートを行なったところ、改善を実感したという声が多かった。一方で「画面の大きさ」に対して満足度が低かったことから、前述した4:3映像の16:9トリミング機能によって、映像を拡大して表示可能にしたという。

花房氏が現場でHMDを使っている例
従来モデルからの改善点
業務用モデルはパナソニックの群馬大泉工場で一部のラインに採用されており、今後拡大予定だという

 ブラザー工業の松本勇美夫常務執行役員は、他社HMDとの差別化について「使いやすい」、「見やすい」、「繋がりやすい」の3点を強調。カメラやセンサーなどの機能を付けずにあえてシンプル化して、フレキシブルなアームなどを採用したことで「業務用/単眼として最も使いやすいものを目指す」として、ディスプレイに特化した用途で提案していく。また、HDMIケーブル1本で接続できる点を活かし、今後はプリンタなど同社製品との連携で商品価値を高めることも計画していくという。

 今回紹介した医療機器での活用を含む活用で、発売後の3年間に、国内では13,000台、グローバルでは3万台の販売を見込む。前述したドローンでの活用は建設業界を想定したもので、老朽化した橋や道路をチェックするという用途があり、実際にそうした相談も受けているという。また、米欧を中心とした海外にも今年から来年にかけて出荷予定。

「使いやすい」、「見やすい」、「繋がりやすい」を追求
グローバルの出荷台数目標
ブラザーグループ製品との連携を図る

(中林暁)