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「REGZAは我々が今後も開発」。東芝'16年度事業計画。サザエさんCM継続

 東芝は18日、2016年度事業計画を発表。2016年度の売上高は4兆9,000億円、営業利益は1,200億円、当期純利益は400億円を目指すとした。

代表執行役社長の室町正志氏

 室町正志社長は、「2016年度は全事業部門での黒字化を目指す。営業利益1,200億円はボトムライン。また、2016年度は信頼回復に向けた第1歩であり、財務体質の強化に優先的に取り組む1年になる」と語った。なお、2016年度の売上高には、売却を予定しているパソコンおよび家電事業の売上高は含まれておらず、2015年度見通しの6兆2,000億円からは大幅に減少する。

2016年度は全事業部門での黒字化を目指すという
営業利益1,200億円がボトムライン
東芝本社

 また、2018年度には、売上高で5兆5,000億円、営業利益で2,700億円、当期純利益で1,000億円を目指す。「2018年度の目標は慎重に見ており、2016年度の動きによって、見通しを変えたい。実現性を確保することが大切だが、さらなる高い数値を目指したい」と述べた。

 さらに、「東芝には、人と、地球の、明日のために。をスローガンにしているが、具体的な商品名、技術名を特定して、○○の東芝といえるところにまでは及んでいない。今後、考えていきたい」と語った。

 中でも、エネルギー、社会インフラ、ストレージの3つを注力事業領域と位置づけ、2016年4月から、電力システム社と社会インフラシステム社の一部の再編により、エネルギー事業を担当する「エネルギーシステムソリューション社」、コミュニティ・ソリューション社と社会インフラシステム社の再編により、社会インフラ事業を担当する「インフラシステムソリューション社」、セミコンダクター&ストレージ社の名称変更により、ストレージ事業を担当する「ストレージ&デバイスソリューション社」と、成長をICTで後押し、効率的な事業運営を行なう「インダストリアルICTソリューション社」の4つのカンパニーに再編。現在の7カンパニーから、4カンパニーへと削減する。

事業運営体制を見直す

 さらに、新生東芝へのロードマップとして、2015年度末までを「企業としての存続」、2016年度を「資本市場への復帰」を最重点課題に位置づけ、2018年度には「収益基盤の確立」、2020年度には、成長軌道への回帰、強固な経営基盤、揺るぎない信頼による「永続的発展」を目指す姿勢を明らかにした。

新生東芝へのロードマップ

 室町社長は、「東芝が失った信頼や信用などは、一朝一夕で取り返せるものではない。そして、その時期が見通せるものでもない。東芝を再び永続的な発展を遂げられる企業へと再生したいと考えている。今年度は様々な構造改革や資金施策を打ってきたが、2016年度は、全事業の黒字化、財務基盤の建て直しを図る。新生東芝への確実な一歩を踏み出したい」とした。

 あわせて、特設注意市場銘柄の指定解除に向けて、指定から1年を経過する2016年9月には内部管理体制確認書を提出する予定であり、それに向けた準備を進める考えも明らかにした。

特設注意市場銘柄の指定解除に向けた流れ

 なお、今回の事業計画の発表によって、室町社長の役目が一段落するのかといった質問に対しては、「一段落というには時期尚早。進退については指名委員会に委ねられているので私からは語れない」(室町社長)とした。

家電事業を美的集団への事業譲渡。映像事業はグループ内で継続

 家電事業については、3月17日に公表したように、美的集団への事業譲渡に関する基本合意書を締結。東芝ライフスタイルの株式の過半を譲渡する。従業員および国内外拠点は維持する方向で協議。さらに、東芝ストアを含む販売網との取引は継続する。今月末までに最終合意し、クロージングはそこから3カ月以内に行なうことを予定しているという。

美的に家電事業を譲渡へ。REGZAはグループ内で継続

 また、テレビなどの映像事業は、家電事業譲渡後も東芝グループ内で事業を継続するとした。「REGZAは、我々が、今後も開発、販売をしていく。モデル数を絞って製品を開発していくことになる」と語った。

 室町社長は、「家電事業は、東芝を支えてきた事業であり、ブランドイメージでも重要な財産であった。その過半を委譲することは忸怩たる想いがあるが、構造改革の一環としてこれを断行する。ただ、譲渡後も、一定の資本を持つこと、そして、美的集団も東芝ブランドの維持は明言している。さらに、当社が得意としてきた東南アジア市場においても、美的集団が東芝ブランドを引き続き採用していくという理解をしている」。

 「家電事業は、収益性が悪かったため、新製品開発の資源投入が十分にできなかったことは反省材料である。だが、今後は、外部資金が導入されること、美的集団が持つコンプレッサやエアコンも競争力がある。新たな家電製品を市場に提供できるように進めていきたい」と語ったほか、「東芝ストアについても、商流を維持する方向であり、東芝のブランドは、国内市場で維持できると考えている。だが、白物家電のCMはほぼ終息する。しかし、東芝全体のイメージ戦略は、理解してもらいたいと考えており、人気アニメのサザエさんでのテレビCMは継続していく」と述べた。

 パソコン事業については、「他社との再編を検討中である」とする一方、4月1日付けで、東芝クライアントソリューション株式会社を発足。さらに、ODMへの生産委託を中止。不適切会計処理問題の温床となったBuy-Sell取引をゼロにする方針を示した。

パソコン事業の改革

 また、パソコン事業部門において予定していた1,300人の人員削減を達成。海外BtoC事業を計画通り、終息したことも明らかにした。

 さらに、2016年度も、計画通りに、パソコン事業における販売台数、販売拠点を絞り込んでいくことになるという。

 「構造改革は計画通り進捗しており、パソコン事業は、2016年度の黒字体質に一定のめどがつきはじめている」としたほか、「他社との再編については、集中して交渉している。だが、方向性は一致しているものの、様々な条件について集約ができていない。期待としては、少なくとも2016年度第1四半期までに決着をつけたいと考えて、交渉をしているところである」と述べた。

東芝メディカルシステムズをキヤノンに約6,655億円で売却

 一方、東芝メディカルシステムズをキヤノンに約6,655億円で売却したことについては、「東芝メディカルシステムズの企業価値、顧客価値の最大化とともに、東芝の財務体質の強化を実現することが売却理由。2015年度売却益に認識した場合、連結税引前損益として5,900億円を計上する」とした。

 「その他の保有株式の売却で2,000億円となり、さらに、家電事業の売却や、保有株式の追加売却、青梅工場の売却といったように、さらなる資金強化策を実行中であり、2016年度までの2年間で、1兆円以上の資金を創出することができる」と語った。

 東芝グループの人員対策については、1万840人の削減計画に対して、それを上回る1万3,820人の人員削減見込みとなり、2014年度末には21万7,000人だった社員数は、2015年度末で20万2,000人に削減。さらに、2016年度末には、パソコン事業や家電事業の売却などにより、1万9,000人を削減。18万3,000人にまで削減する。東芝本体単独では、2017年4月入社の事務系、技術系の新卒採用の中止も発表した。

 また、緊急対策では、業績連動型賞与については、執行役は昨年に引き続き不支給。役職者は年間2.5カ月、一般者は年間2カ月を一律減額する。報酬および給与については、執行役は報酬返上を継続、役職者は課長級で2月からは月額1万円、4月からは月額3万円とする。時間外勤務手当の見直しや、出張旅費日当見直しで25%の減額などを行なう。

2016年度の3つの注力事業領域

 また、2016年度の3つの注力事業領域についても説明した。

 エネルギーシステムソリューション社では、原子力事業を注力成長領域に位置づける一方、火力、再生可能エネルギー、送変電・スマートメーターシステムは、安定収益領域に位置づけ、2016年度には売上高1兆7,100億円、営業利益520億円を目指す。

注力事業領域のエネルギーシステムソリューション社

 そのうち原子力事業の売上高で8,700億円を見込む。「豊富な納入実績と最先端技術を武器に着実な成長により、グローバルトップを目指す」とした一方で、「福島第一原発の安定維持、廃止措置計画に対して、グループをあげて貢献していく」と述べた。2018年度には売上高で1兆9,400億円、そのうち原子力事業の売上高は1兆200億円とした。

 インフラシステムソリューション社では、安定収益で持続的成長を目指すとし、昇降機事業、空調事業、水事業、電池事業を注力成長領域に位置づけた。

注力事業領域のインフラシステムソリューション社

 「ビル・施設、水事業は海外事業強化を成長エンジンとし、国内基盤事業は収益力の強化により、安定的キャッシュの創出を目指す」という。

 2016年度の売上高は1兆3,300億円、営業利益は510億円。2018年度の売上高は1兆4,100億円を目指す。

 ストレージ&デバイスソリューション社では、メモリを核に収益の柱を目指す考えを示し、情報化社会のインフラづくりに貢献することを目指すという。

注力事業領域のストレージ&デバイスソリューション社

 売上高は2016年度に1兆4,300億円を、2015年度見通しの1兆5,600億円から落ち込むが、営業利益は320億円と黒字回復を目指す。メモリ事業の売上高は7,400億円を目標に掲げている。また、2018年度の売上高は1兆6,800億円を目指し、そのうち、メモリでは9,500億円を目指す。

 メモリは、2016年度前半は売価ダウンの影響を受けるものの、物量は伸張。後半から需給バランスが回復することで収益が改善すると予測。さらに、2017年度以降はSSDなどの拡大により、売上高の拡大が見込めるという。課題事業であるディスクリート/システムLSI、HDDは構造改革を進め、2016年度の黒字化を目指すとともに、その後の収益安定化を目指すことになるという。

 メモリにおいては、3次元の「BiCS Flash」化を推進。積層化による大容量化を進め、2016年上期には、BiCS3をサンプル出荷。2016年第1四半期での新第2棟建屋の竣工、2017年度の次期新棟の建設などを通じて、BiCSへの生産切り替えを進める。

 「サンディスクとの強固なパートナー関係は継続する。さらに、ナノインプリントの採用により、将来的なコスト削減にもつながる」とした。

ストレージ事業の核はメモリ
メモリ事業中期計画

 なお、コンプライアンスの徹底、再発防止策とその定着を図ることを目的にした改善計画・状況報告書についても言及。「歴代社長が達成困難な損益改善を求めた背景には、会社存続への強い危機感、社内外の評価へのこだわりがあったこと、CFOや財務部門が防止できなかったのは、トップの意向に従うとの姿勢から、会計上の線引きを明確にせずに黙認したこと、内部監査部門などでの監査視点軽視したことなどが背景にあった」とし、「新たに財務、管理会計指揮命令系統の見直しや、常勤監査委員の設置、会計コンプライアンス委員会の設置に加え、社長直下に広報・IR部を設置したり、傘下に情報開示推進室を設置したりといったことにより、情報開示・発信機能の強化していく。また、コーポレート横断機能を移管し、カンパニーの自主自律化を図る」と述べた。

(大河原 克行)