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タイムドメインの新たなスピーカーシステム。アルミ削り出しで27万円の「i-SIDE」
(2016/5/23 00:00)
タイムドメインラボは、波形再生を重視したタイムドメイン(時間領域)理論に基づいた新オーディオシステム「i-SIDE」を6月1日に発売する。アンプとステレオスピーカーのセットで、価格は27万円。
スピーカー部「SQS-13」は、天面に3.9cm径フルレンジユニットを搭載した四角柱の筐体。「リキュールのパッケージをイメージした」という。アンプ部「SQA-13」はアナログRCA入力を1系統備え、出力は5W×2ch。いずれもアルミブロックからの削り出しで剛性を高めるとともに、つなぎ目を無くして振動の輻射を防ぐほか、モノとしてのデザイン性を追求している。
スピーカーユニットは、内部にある1本のシャフトで下から支える「ワンレグ構造」。振動の伝達経路を1つに絞ることで振動の大きさ、到達時間、伝播速度、周波数の分布の変化を抑え、振動を制御しやすくしたという。この振動特性に合わせて内部に制振材を挿入している。なお、スピーカーのデザインは、四隅が角ばった「Type S」と、丸まった「Type R」の2種類がある。音質的にはType Rが有利としている。
開発にあたり、大阪電気通信大学との共同研究「サウンドプロジェクト」で得られた研究成果も反映。振動の減衰と、伝播していくパラメータを元に、吸音材を入れる場所などを選定している。
「タイムドメイン理論」は、周波数領域に着目した従来の再生方法に加え、「時間領域(タイムドメイン)の再現性」に着目したもの。音が発生する際に起きる振動の発生から消滅までの時間的な過程を再現する。原音の波形を忠実に再現し、原音に限りなく近づけるのを主目的としている。
同理論を提唱する由井啓之社長のタイムドメインから'08年に独立し、製品のチューンアップや修理、カスタムメイド、新製品開発を行なっているのがタイムドメインラボ。同理論は他社にもライセンスされ、9社が卵型や円柱型をしたスピーカーを製品化している。
タイムドメインラボの林勲代表取締役は、「理論を正しく理解し応用すれば、必ずしも卵型や円筒形である必要はない」としており、新たなデザインを目指して作ったのが今回の「i-SIDE」。タイムドメインラボとして最初のスピーカーシステムとなる(ユニット単体などはこれまでも製品化した)。ライセンスされた他社製品よりも同理論に忠実な製品であることが高音質化につながっているという。なお、製品名に含む「i」は縦長のスピーカの形を表したもので、スピーカー/アンプ単体の型番に付く「13」は、アルミの元素番号。
外形寸法と重量は、スピーカー部が54×54×264mm(幅×奥行き×高さ)、約1.2kg。アンプ部は112×122×53mm(同)、約1.3kg。スピーカーケーブルは、スピーカー本体からの直出しとなっている。電源はACアダプタを使用する。
ノイズを発生し、スピーカーの“クセを改善する”アプリも
i-SIDEの製品化に合わせて、「サウンドリセッター」という無料のiOS用アプリも発表。i-SIDEに音を入力するだけで「スピーカーのクセが改善される」というもので、スピーカーのエージングにも使えるという。「試聴用に貸し出したセットが戻ってくると、音がおかしいことがある」というのが開発のきっかけとしており、京都産業大学の学生と共同開発した。
このアプリでは、ホワイトノイズとピンクノイズを繰り返して出し、周波数などに偏りが無いようにスピーカーを駆動させる。ノイズを再生する時間をあらかじめ設定することも可能。
野村ケンジ氏がi-SIDEの活用法など提案。アナログプレーヤーとの組み合わせも
i-SIDEの製品発表会では、オーディオビジュアルライターの野村ケンジ氏が、i-SIDEの特徴や使い方などを紹介するトークセッションも行なわれた。
野村氏は、i-SIDEの音を一言で表すと「“濁りの無い音”」と表現。心地よく聴こえる理由として、「ユニットの余計な振動を排除し、コーンの動きだけで音楽表現するというタイムドメイン理論が製品に活きている」と説明した。
i-SIDEの良さを活かす音源としては、「バイオリンのソロがあっているのでは。アコースティックな小編成の演奏と相性が良い」とした。また、「低音がもっと欲しいという人は、サブウーファを足すというやり方もある。部屋のサイズなどに合わせて楽しめる」とした。
野村氏は「デザインの通り、i-SIDEは木造家屋よりもコンクリート打ちっぱなしで響くくらいの環境がゆったりした音になり、聴き心地が良い。製品イメージ通りな環境で聴くといいのでは」とした。さらに、アナログレコードプレーヤーとの組み合わせも提案。「フォノイコライザをプリアンプとして使うなど、“手前”に何を置くかでも面白くなる」とした。