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30K360度カメラ&半球スクリーンで没入映像体験。NHK技研公開
2025年5月27日 19:34
NHKは、放送にまつわる最新の研究成果を一般公開する「技研公開2025」を、5月29日から6月1日の期間で、東京・世田谷にあるNHK放送技術研究所にて開催する。開催時間は10時から17時まで。入場は無料。開催に先駆け、27日にマスコミ向けに見学会を実施した。
今年のテーマは「広がる つながる 夢中にさせる」。放送メディアの未来ビジョンとして計画している「Future Vision 2030-2040」に基づいた研究成果18件を展示する。ここでは、イマーシブメディアに関連する展示をレポートする。
30K360度カメラ&半球表示装置の没入映像体験
勧告ITU-R BT.2123に規定される画素数30Kで、360度映像を撮影できるカメラを開発。カメラの実機と合わせ、カメラで撮影した映像を実際に体験できるブースを用意している。
映像の体験スペースには、半球型のスクリーンが用意されており、画素数15K対応のプロジェクターで投影。120Hzでフレーム毎に投影映像を斜めに半画素ずらすことで、60Hz時に30Kの映像を実現しているとのこと。これを半球型のスクリーンに投影することで、ヘッドマウントディスプレイなどのデバイスを使わずに360度映像の没入感を体験できる。
カメラは、6台の要素カメラで構成された五角柱型の360度カメラとなっており、どの方向も高い解像度で撮影できるという。今後は、2027年度までにさらにコンパクトで実用的な30K360度撮影システムの開発を目指しているとのこと。
シーン適応型カメラ
画面内の明るさや動きに合わせて、局所的に撮影モードを制御し、広視野な映像を高品質に撮影できるというカメラ。展示されたカメラは、4K解像度の撮影が可能で、4×4画素の微少エリアごとに異なる解像度やフレームレート、露光時間を設定できるイメージセンサーを搭載する。
これに加えて、被写体の特徴解析とイメージセンサーへのフィードバック制御をリアルタイムに処理する技術を組み合わせることで、撮影を可能にしている。
展示の撮影では、基本モードをベースに、速い動きの被写体に対しては水平・垂直解像度1/2でフレームレート4倍の「高速モード」、明るいところに露光時間1/4の「高輝度モード」、暗いところに露光時間2倍の「低輝度モード」が割り当てられて撮影されており、画面では一定の明るさで、動きの速い物体も滑らかな動きで撮影された映像が映し出されていた。
今後は、試作カメラの放送現場での活用や、2028年頃までに広視野撮影に対応した高品質かつ高解像度のカメラ開発を目指すという。
湾曲イメージセンサー
小型で高画質な広視野カメラの実現を目指し、湾曲できるイメージセンサーも展示。従来の板状のセンサーではなく、センサー自体を凹面状に湾曲させるとこで、広視野撮影時の周辺ぼやけを改善する収差補正方式のカメラと、凸状に湾曲させたセンサーとカメラにより、一度にパノラマ映像を撮影できる多眼撮影方式の2種類が用意されている。
収差補正方式のセンサーは、シリコンイメージセンサーを0.01mmまで薄くすることで曲げられるようになったという。今回はセンサーをカラー化するとともに、前述の凹面状にすることでレンズ収差による映像周辺部のぼやけを改善している。
多眼撮影方式では、収差補正方式とは逆にセンサーを凸面状に配置。筒型のカメラに横一列に複数のレンズを搭載することで、一度の撮影でパノラマ画像が得られる。
ともに、2027年までに広視野撮影が可能な技術を確立し、2030年頃までに実用化を目指すという。