ニュース

伸縮ディスプレイが高画素・大型化、“縦型動画自動切り出し技術”も。NHK技研公開

「縦型動画自動切り出し技術」のデモ。左が元のニュース動画、右が同技術で制作した縦型ニュース動画

NHK放送技術研究所(技研)は、最新の研究成果を一般に公開する「技研公開2025」を、5月29日から6月1日まで、東京・世田谷にあるNHK放送技術研究所で行なう。その開幕に先駆けてメディア向け内覧会が実施され、このなかで放送用ニュース映像をスマホ視聴に適した縦型に変換する「縦型動画自動切り出し技術」が紹介された。

スマホの普及により、縦型動画の視聴機会が増えていることを受け、技研では放送用の映像から縦型動画を効率的に制作するための技術を研究。編集者が放送用ニュース映像から表現したい制作意図を保持しつつ、スマホでも見やすくなるように縦型動画を切り出したときの制作手法を参考に、自動切り出し方法をアルゴリズム化した。

このアルゴリズムでは、まずAIを使って映像に映っている人やモノを解析。これをもとにアルゴリズムで、元の放送用ニュース映像の制作意図を保持したまま縦型動画として切り抜く領域を自動で決定する。

またプロのカメラマンが行なうような自然なパンニングや、画面分割表示など、さまざまな映像表現を使った縦型動画の編集を簡単に行なえるソフトウェアも開発。上述の自動切り出しアルゴリズムと組み合わせることで、制作にかかる手間や時間を抑えて効率的に縦型動画を作成できるという。

今回展示されている技術では、テロップの自動生成・挿入には対応していないため、文字情報は編集者が追加する必要がある。担当者によれば、縦型ニュース動画の制作本数が増えていくことで理想的なテロップの挿入位置や文字数などをAI学習させられるため、今年度中には対応したいとのこと。

今後はさまざまな映像表現を含めた縦型動画自動変換技術を年度内に完成させ、制作の現場と連携しながら早期の導入を目指すとしている。

伸縮ディスプレイは画素数増加

ディフォーマブルディスプレイ

会場では、ゴムの基板上にLEDと伸縮性に優れた液体金属配線を使った折り曲げ可能なディフォーマブルディスプレイも展示。2024年の技研公開でも展示されていたが、昨年比で画素数が最大5倍になるなど大型化・高画素化が行なわれている。今後はマイクロLEDの採用なども検討しているといい、「将来的には一般的なTVサイズを目指したい(担当者)」とのこと。

ディフォーマブルディスプレイを伸縮させるデモも

またARグラスや触覚・香りを再現できるデバイスを使ったイマーシブメディア体験のデモ、ユーザーが映像内を自由に動き回って、その位置や視点の向きに応じた映像や音を表示する技術のデモなども実施。

「肉足袋」

そのほか環境に配慮した段ボールパネルを使ったセット、マイクロプラスチックを排除したファンデーション、時代劇の撮影などで演者の足を守る“肉足袋”、放送中の大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」でも使われているゴム素材のラバーシートを使った「こけら葺き屋根」の実物の展示、JOAKさぐり式鉱石ラジオなど、放送100年を記念したNHK放送博物館所蔵品の展示なども行なわれている。

「技研公開2025」の会場住所は東京都世田谷区砧1-10-11。入場は無料で、開場時間は10時~17時。入場は終了30分前まで。今年のテーマは「広がる つながる 夢中にさせる」で、18件の研究成果が展示されている。

ARグラスを使ったコンテンツ体験デモ
ARグラス装着者の視界には、離れた場所の友人の映像が表示されるほか、指先の操作で動画の早送り/巻き戻し、拍手といったリアクションの共有などができる
触覚と香りが体験できる3Dコンテンツのデモも
パリオリンピック・パラリンピックで使用された段ボールパネルのセット
プラスチックフリーファンデーション。パリオリンピックで導入された後、一般番組や一部の報道番組でも使用が始まっているという
大河ドラマ「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」でも使用されているというラバーシート製のこけら葺き屋根セット
放送100年にまつわる展示も