ニュース
京セラが挑む“セラミック圧電スーパーツイーター”クラファン開始。ユーザーの声が開発チームに
2025年7月24日 18:29
京セラが開発中の、セラミックスとフィルムを組み合わせたアドオン型スーパーツイーター開発品のクラウドファンディングが、 GREEN FUNDINGでスタートした。数量限定だが、20% OFFの176,000円や、10% OFFの198,000円などの支援プランを用意。目標支援額は500,000円。製品は12月上旬から順次発送開始予定となっている。
2023年11月に月刊stereoとの共同企画で、オーディオ評論家の山之内正氏と、月刊stereo吉野編集長の対談形式でピュアオーディオユーザー向けに有料の試聴会を実施。来場者から発売を待ち望む声が多くあった。それから約1年半の時を経て、「ユーザーが本当に価値を認めてくれるのか、ユーザーの声が聞きたい」と、製品化前の開発品の販売するプロジェクトがスタートした。
支援者は、製品化前の製品を手にするだけでなく、特典として、今後企画する本開発チームとのワークショップへの参加ができる。「製品化に向けて自身の声を直接京セラに届ける機会を計画している」とのこと。
1980年代に、京セラは本格的なオーディオ機器を製造販売。さらに、ファインセラミック技術の圧電性という特性を使用して、古くは、圧電体と金属板を組み合わせた警告音を鳴らす圧電ブザーを作っていたこともある。
その後、圧電技術を応用してインクジェットプリンタのインク吐出駆動デバイス(プリントヘッド)や、自動車部品向けの燃料噴射インジェクター用のピエゾ素子を製造販売。それらの製品開発で培った圧電材料や設計技術をベースに、圧電素子とフィルム、フレームを最適に組み合わせることで、圧電素子の振動がフィルムへ伝わり、面全体が振動して音を増幅する構造を開発。現在は、圧電セラミックの技術を新しい分野に広げることを目指して圧電スピーカーに挑戦している。
圧電体は、電気を加えるとたわみや振動が発生するファインセラミックスの特性を応用したデバイス。開発しているスーパーツイーターは、セラミック圧電フィルムドライバーユニットというもので、圧電技術には、京セラの圧電セラミックスの材料技術や設計製造技術により積層圧電体を形成。さらに、金属フレームにフィルムを組み合わせた京セラ独自構造により、音圧を平坦化しバランスの良い音を作り出すという。
金属フレームのサイズが小さいほど、高周波の音を再生しやすくなるが、小さすぎると可聴域の音が損なわれる。反対に、フレームのサイズを大きくすると可聴域の音が再生しやすくなるが、高周波域の指向性にも影響を与え、制御するのが難しくなってくる。そこで、高周波の再生能力と、より均一な音場を得られる指向性のバランスを最適化したサイズを設計した。
一般的なダイナミックスピーカーのピストン運動による発音と異なり、素子がたわむことで複雑な振動モードが発生する多点音源で、超高域まで広い指向性を確保。ユニット単体で測定すると、100kHz付近の超高域まで目立ったエネルギーの低下がなく、左右それぞれ90度の範囲まで音圧の低下が少ないのが特徴。
一般的な指向性が鋭いツイーター、スーパーツイーターに比べて指向性が広い傾向にある。そのため、リスニング位置による音色の変化が少なく、立体的なステージ再現にも効果を発揮するという。
一方、インピーダンス特性が通常のスピーカーと全く異なり専用アンプが必要となりハンドリングが難しい課題があった。そこで、アンプ内蔵型とし、ハイパスフィルタ切り替え式にして、低消費電力であること、ノイズレスを考え、電池駆動という構造のアドオン型スーパーツイーターシステムとして開発。様々なメインスピーカーとの組み合わせがし易くなっている。電池は単3アルカリ乾電池×4本を使用する。
なお、2023年の試聴会時からの変更として、圧電ユニットのフロント側に京セラ製の剛性の高いセラミック製フレームを設け、バック部は樹脂製のエンクロージャーとした圧電スーパーツイーターモジュールの構造としている。
本体部には、フロント側上面にボリューム、底面に電池BOX、リアパネルには信号入力のRCAプラグ、電源スイッチ(バックライトオン/オフ付き)、ハイパスフィルタ切り替えスイッチを配置。ハイパスフィルタのカットオフ周波数は3段階(23kHz/34kHz/45kHz)で切り替えられる。
筐体デザインにもこだわり、無垢材のオーダーメイド家具工房アクロージュファニチャーの岸邦明氏がデザイン。黒檀の代用材としてベースやギターのネックや指板に使われるウエンジをドライバー部、アンプが内蔵された本体部はウォールナットの無垢材を採用し、音とデザインの融合に挑んでいる。
なお、この取組みについては、月刊stereo2025年8月号(音楽之友社、2025年7月19日発行)にもタイアップ記事として掲載されている。月刊stereoのバックナンバー2023年11月号、2024年1月号でも特集。試聴会のダイジェスト映像は月刊stereoのYouTubeサイトで掲載されている。
クラウドファンディングページでは、山之内氏が試聴した際の「スピーカーにもっとしなやかさや表現力、奥行きがほしい、という場合に、このスーパーツイーターは強力なアイテムになりそうですね。このスーパーツイーターを追加すると、楽器の質感が厚く深く感じられるようになったのは、倍音を忠実に再現することによって本来の音に近づいたためだと思います。使い勝手は色々と改良の余地がありますが。音的には新たな可能性を感じます」というコメントも掲載。
月刊Stereoの吉野俊介編集長も、「明らかに音像がスピーカーより上まで空間が広がって、それによって楽器群がほぐれるというか、見通しが良くなった感じがしました。その結果、低音も高音もヌケがよくなって音楽の活力が増す感じがします。今までスーパーツイーターを色々と試しましたが、最終的には不要と感じ外していたんですが、試しに長期間試用したところ、自然体でどんなタイプの曲でも効果を発揮してくれました」と評価。
さらに吉野編集長は、進化した開発品について、「あらためて2023年の試作機と聞き比べた。圧電スーパーツイーターモジュールの改良が功を奏したのか、音の広がり感が増し、さらに各可聴帯の音にも芯が増したような力強さが感じられた。メインスピーカーの元々の音自体はそのままに高域と低域のレンジ感の拡大に加え、全体の音域に潤い感や滑らかさが付加される傾向だ。あえて大ボリュームにしても鋭さはなく、クリアで柔らかな質感は維持される。そして左右に大きくずれても効果が感じられるのが素晴らしくもあり不思議だ。この心地よさはクセになる。オフにすると音楽が寂しく感じられてしまう」と、コメントしている。