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映画を残す「国立映画アーカイブ」4月1日設置。フィルムセンターを格上げ

 東京国立近代美術館フィルムセンターは、2018年4月に独立行政法人国立美術館の映画専門機関「国立映画アーカイブ」として新たな位置づけで設置される。「映画を残す、映画を活かす。」をミッションに、映画文化振興のためのナショナルセンターとして機能強化していく。

国立映画アーカイブが4月1日スタート。左から東京国立近代美術館フィルムセンター主幹のとちぎあきら氏、先付け映像を担当した山村浩二氏、ロゴデザイナーの鈴木一誌氏、東京国立近代美術館長 神代浩氏、独立行政法人国立美術館理事長 柳原正樹氏

 東京 京橋のフィルムセンターは、これまでは東京国立近代美術館の映画部門と位置付けられていたが、4月からは他の国立美術館と同格の機関に改組。映画の収集や保存、公開、活用といった基本的な役割に変更はないが、国の映画文化振興のためのナショナルセンターとして、アーカイブの拡大や映画文化の発信などの役割を担っていく。

東京 京橋のフィルムセンターが4月から国立映画アーカイブの本拠地に

 国立映画アーカイブの館長には現フィルムセンター特定研究員の岡島尚志氏が就任予定。アドバイザーとして、日本映画製作者連盟会長の岡田裕介氏、俳優・映画監督の奥田瑛二氏、映画監督の河瀬直美氏、日本映画製作者協会代表理事の新藤次郎氏、イマジカ・ロボット ホールディングス代表取締役会長の長瀬文男氏、東京藝術大学名誉教授の堀越謙三氏、俳優の松坂慶子氏、映画監督の山田洋次氏が運営に助言する体制を構築する。

 また民間からの資金活用も新体制の特徴としており、長瀬映像文化財団が大口の寄付を行なっている。そのため、現フィルムセンター内2階の大ホールは、4月から「長瀬記念ホール OZU」と改称される。OZUは小津安二郎監督に由来するものだが、小津監督の親族から許諾を得ての利用とのこと。

 フィルムセンターは、東京 京橋の本館のほか、神奈川県相模原市に相模原分館が設置されており、2017年3月時点では、映画フィルム79,509本(日本映画70,164本)、映画関連の和書が41,600冊、洋書4,700冊、シナリオ44,000冊、さらに劇場パンフレットなどを収めている。

相模原分館

 この中には、映画フィルムの重要文化財「紅葉狩」(1899年。35mm可燃性デュープネガ)、「史劇 楠公訣別」(1921年。35mm可燃性オリジナルネガ)、「小林富次郎葬儀」(1910年。35mm可燃性オリジナルネガ及び上映用ポジ)も含まれている。

 こうした収集・保存は、国立映画アーカイブの新体制後も強化。加えて、映画による国際交流拠点機能や文化芸術振興拠点機能なども強化し、収集/保存と公開/活用を一体的的に行なえるようにする。

 東京国立近代美術館フィルムセンター主幹のとちぎあきら氏は、「映画に関するあらゆる資料を集めることが目標。日本映画が軸になるが、できる限り集めていく。過去の日本映画の多くがなくなってしまっているが、この反省と教訓から資料を保存していくのことが使命。デジタルデータの映画でも、製作者はそれが残るか不安を抱えている。つまり、現在も過去、も常に保存に課題を抱えている。映画が『いまここにある』、ことは決して当たり前のことではなく、映画に関わった人は常に強く意識している。しかし、保存されていても活用の道筋がなければ無いも同然。適切な保存に支えられた映画や資料の活用をもっと探していく必要がある。国立映画アーカイブは『映画を残す、映画を活かす。』を掲げる」とその意義を語った。

 フィルムは、製作会社との交渉により収集・調達。フィルムだけでなく、デジタルメディアの収集も始めている。また、新作を随時収集できるような仕組みも検討しているという。

 2018年度は「国立映画アーカイブ開館記念」の特集上映を実施。「映画を残す、映画を活かす。」の同アーカイブのミッションと同名の特集を4月10日~22日に実施し、黒澤明撮影映像と「生きものの記録」、「彼岸花」撮影風景と「彼岸花」、「日活トーキーステージ建設とジャズ娘誕生」などの作品を上映。10月には米、仏、独、日の無声映画の特集なども予定している。また、海外における黒澤明作品のポスター展なども行なう。こども映画館の巡回上映も強化していく方針。

 国立映画アーカイブの開設にあたり、デザイナーの鈴木一誌氏が新たなロゴをデザイン。先付け映像(アーカイブ映像の冒頭に挿入する映像)はアニメーション作家・絵本作家の山村浩二氏が担当している。

ロゴ

 発表会場ではDCP(デジタルシネマ用の上映ファイル)と35mmフィルム、16mmフィルムのそれぞれの方式で先付け映像を上映し、雰囲気の違いなどが紹介された。

先付け映像