ニコン、レンズ交換式小型カメラ「Nikon 1」発表
-新マウント「Nikon 1でNo.1を」。フルHD動画対応
Nikon 1シリーズ |
ニコンは21日、レンズ交換式のデジタルカメラ「Nikon 1 J1」と「Nikon 1 V1」を発表した。新レンズマウント「Nikon 1(ワン)マウント」を採用。さらに、新開発の「スーパーハイスピードAF CMOSセンサー」、画像処理エンジン「EXPEED 3」を採用したのが特徴。10月20日より順次発売する。価格はオープンプライス。
店頭予想価格はV1ボディが89,000円前後、V1薄型レンズキット(1 NIKKOR 10mm f/2.8付き)が10万5,000円前後。J1ボディが51,000円前後、J1標準ズームキット(1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6付き)が7万円前後、ダブルズームキット(1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6、VR 30-110mm f/3.8-5.6付き)が9万円前後、数量限定のJ1ダブルズームピンクが93,000円前後。
カラーバリエーションとして、J1は、ホワイト、ブラック、シルバー、レッドと数量限定のピンクを、V1はブラックとホワイトを用意する。
Nikon 1のロゴマーク |
両モデルとも、新しいNikon 1マウントを採用したレンズ交換式デジタルカメラ。同社伝統のFマウント用レンズを取り付けられるマウントアダプタも用意している。V1は電子ビューファインダーを本体に内蔵。J1はフラッシュを内蔵している。撮像素子を含め、ほとんどの機能はJ1/V1で共通している。なお、ミラーレスのデジタルカメラだが、ニコンでは「レンズ交換式アドバンストカメラ」と呼んでいる。
撮像素子のサイズは13.2×8.8mmの、新しい「ニコンCXフォーマット」を採用。画素数は2モデルとも有効1,010万画素。実撮影画角は、レンズ焦点距離の約2.7倍となる。静止画はJPEG、RAW(12bit)の撮影ができ、同時撮影も可能。記録媒体はSD/SDHC/SDXCに対応する。ISO感度は100~3200までの1段ステップで、ISO 6400相当の撮影も可能。
Nikon 1 V1のブラックモデル | Nikon 1 J1のカラーバリエーション | 撮像素子は新しい「ニコンCXフォーマット」を採用 |
動画は1,920×1,080ドット/60i、1,920×1,080ドット/30p、1,280×720ドット/60pが選択でき、最高ビットレートは24Mbps。ファイル形式はMOVで、圧縮方式はMPEG-4 AVC/H.264を採用している。スローモーション動画も撮影可能で、640×240ドット/30p、320×120ドット/30p。
シャッターボタンを押すと、静止画とその前後の僅かな時間を高解像度のスローモーション動画として記録し、0.4倍速のスローモーション動画と静止画を合わせた形で再生する「モーションスナップショットモード」では1,920×1,080/60pで記録できる。同モードでは4種類のBGMも付与できる。
撮影機能として他にも、シャッターボタンを押すと前後20枚を30コマ/秒で撮影。その中から1枚をベストショットとしてカメラが選ぶ「スマートフォトセレクター」や、撮影シーンや好みに合わせて仕上がりを選択・調整できる「ピクチャーコントロール」にも対応する。
V1のホワイトモデル | V1を上から見たところ | V1のレンズを外したところ。新しい「Nikon 1マウント」を採用している |
V1の背面。液晶ディスプレイは3型 | 1マウント用レンズの「1 NIKKOR VR 10-100mm F4.5-5.6 PD-ZOOM」。ズームレバーにより3段階に速度可変するパワードライブズーム機構を採用している |
付属ソフトとして、自動動画編集ソフト「Short Movie Creator」を同梱。撮影した静止画、動画から、映像効果と音楽を選ぶだけでオリジナルショートムービーが作れるというもので、編集したムービーを保存することも可能。画像管理ソフトの「ViewNX 2」とも連携しており、静止画と動画を一括で管理・編集できる。
外形寸法と重量(バッテリ・ボディキャップ・SDカード含む/本体のみ)は、J1が約106×29.8×61mm(幅×奥行き×高さ)、約277g/約234g。V1が、約113×43.5×76mm(同)で、約383g/約294g。
■位相差とコントラストのハイブリットAF
AFに特徴があり、動体への追従性に優れた位相差AFと、低輝度に強いコントラストAFの両方を備えた「アドバンストハイブリットAFシステム」を搭載。位相差AFは、レンズ交換式カメラでは世界初という、「撮像面位相差AF」を採用している。2つのAFは、撮影環境によって自動的に使い分けられる。また、マウントアダプタを介してFマウントレンズを接続した場合は位相差AFが使われる。動画撮影中のAFも可能。
位相差AF搭載のレンズ交換式デジタルカメラとして、世界最多となる73点のAFフォーカスポイント数を実現。連写機能では、AF追従で世界最速という約10コマ/秒の高速連写を実現。AF固定時には約60コマ/秒で撮影でき、こちらも世界最速を謳う。
Nikon 1 J1のブラックモデル | レンズを外したところ | 上から見たところ |
底面。三脚穴を備えている | 沈胴機構を採用する「1 NIKKOR VR 10-30mm F3.5-5.6」 |
J1の数量限定ピンクと、シルバーカラーモデル |
■V1はEVFも搭載
両モデルとも3型のTFT液晶ディスプレイを背面に装備。解像度が異なり、J1は約46万画素、V1は約92万画素。保護ガラスと液晶パネルの間に空気層が無いエアギャップレス構造を採用し、薄型化と屋外での視認性向上を実現したとする。
V1に内蔵しているEVFは液晶で、解像度は約144万ドット(SVGA)。視野率約100%で、被写体の動きと撮影者の目の動きの相互作用で、虹色のようなノイズが発生するカラーブレーク現象が起きない、カラーフィルタ方式を採用。動く被写体でも忠実に表示できるという。
■レンズ関連
Nikon 1 マウント用の交換レンズも発表されている。レンズブランドの名前は「1 NIKKOR」(ワン ニッコール)。
ラインナップは「1 NIKKOR VR 10-30mm f/3.5-5.6」(12月発売/25,200円)、「1 NIKKOR VR 30-110mm f/3.8-5.6」(10月20日発売/31,500円)。「1 NIKKOR 10mm f/2.8」(10月20日発売/31,500円)、「1 NIKKOR VR 10-100mm f/4.5-5.6 PD-ZOOM」(99,750円)の4本。いずれもJ1/V1に装着した場合の実撮影画角は、レンズ焦点距離の約2.7倍となる。
10倍ズームレンズの「VR 10-100mm f/4.5-5.6 PD-ZOOM」は、動画撮影にも対応したレンズ内手ブレ補正機構(VR)を搭載するほか、サイドにビデオカメラのようなズーム用スイッチを装備。ズームレバーにより3段階に速度可変するパワードライブズーム機構を採用し、動画撮影にも適したレンズとなっている。
「VR 10-30mm」と「VR 30-110mm」も、レンズ内手ブレ補正機能を搭載し、動画撮影時にも同機能が利用できる。
別売のマウントアダプタ「FT1」(12月発売/23,310円)を介して、Fマウントレンズも装着可能。AF-Sレンズの場合、FマウントでもAF動作が可能で、動画撮影中にも使用できる。
別売のマウントアダプタ「FT1」 | FマウントレンズとFT1に取り付けたところ | FマウントレンズをV1に装着したところ |
ほかにも、アクセサリ接続用ポートを備えた「V1」用アクセサリとして、スピードライト「SB-N5」(10月20日発売/17,850円)、GPSユニット「GP-N100」(10月20日発売/13,650円)などを用意する。
スピードライト「SB-N5」 | 発表会場には他のカラーバリエーションモデルも参考展示された | 2機種にはどちらも、画像処理エンジン「EXPEED 3」が搭載されている |
会場ではレンズラインナップも参考展示された | 動画撮影向けというアクセサリーを装着したところ。デザインモックだという |
■Nikon 1でNo.1
ニコンの木村眞琴社長 |
ニコンの木村眞琴社長は、同社の歴史を振り返りながら「カメラとは一体なんなのかを自身に問いかけてきた。事実を記録として残すだけでなく、記憶まで残したいという欲求を叶える道具であり、特別な製品だと思っている。約1世紀のあいだ光学技術をベースに数多くのノウハウと知見を蓄積したニコンだからこそ作れるカメラを作りたい。単なるテクノロジー優先のデジタル機器ではなく、インターフェイスも含めた、人々の思いを具現化するカメラを作りたいと考えてきた」と、Nikon 1にかける想いを語る。
さらに、コンセプトとして「撮れないものを撮れるようにするという基本的な方針のもと、従来の一眼レフやコンパクトといったカテゴリを超えて、デジタルの特性を活かし、新しい映像表現を実現するというコンセプトに基づくもの」と説明した。
映像カンパニープレジデントの岡本恭幸常務執行役員は、開発の背景について「他社さんのミラーレスカメラの対抗として開発したのではまったくなく、かなり前から開発に着手した。開発にあたっては、ミラーを取って小さくするだけでいいのか? 一眼レフに近すぎてはダメ、少しでも新しい事を……と常に考えていた。他社さんがミラーレスを出さなくても、ニコンが発売していたカメラ」と説明。
市場投入のタイミングについては、「コンパクトとは違う大きな市場ができかけており、一眼の趣味層が確実に拡大していると判断した。また、他社さんのミラーレス発売後のリアクションをよく分析できた。ミラーレスは国内で注目を浴びていたが、グローバルで見ると一眼レフ全体の1割程度の市場規模だった。それが現在では国内市場の約半分、欧米をはじめ、グローバルでもジワジワ広がっており、ニコンにとって良い時期と判断した」という。
ニコンイメージングジャパンの五代厚司社長は、ターゲット層として、既存一眼レフのユーザー向けには、軽量なシステムとして訴求する「買い増しニーズ」を、コンパクトデジカメのユーザーには、手軽に・簡単に、本格的な撮影が楽しみたいという「ステップアップニーズ」を、両方満たすカメラとして訴求していくと説明。さらに、「ニコンブランドのイメージ領域を拡大させ、革新的、親しみというイメージを持っていただけるようにしたい。そして幅広いお客様に支持されるブランドに進化していきたい。私どものゴールはNo.1。既にそのポジションを確固たるものにしている既存のデジタル一眼レフのNo.1にとどまらず、レンズ交換式小型カメラでもNo.1を目指す。“Nikon 1でNo.1”これが我々の目指すところ」と語った。
(2011年 9月 21日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]