ヤマハ、AirPlay対応7.1ch AVアンプ「RX-V773」

-センターの音像を上下に調整。音場補正も強化


AVアンプ「RX-V773」

 ヤマハは、ネットワークプレーヤー機能を備え、AirPlayにも対応したAVアンプ「RX-V773」を6月下旬に発売する。価格は92,400円。カラーはブラック(B)とゴールド(M)の2色展開。

 定格出力95W/ch(20Hz~20kHz/2ch駆動/6Ω)、130W/ch(1kHz/1ch駆動/6Ω)、最大出力160W/ch(1kHz/1ch駆動/6Ω)の7.1chアンプ。DLNA 1.5に準拠したネットワークプレーヤー機能を内蔵しており、PCやネットワークHDDなどに保存した音楽ファイルが再生可能。MP3/WAV/FLAC/WMA/AAC(MPEG-4)をサポート。FLACは24bit/96kHzまで対応する。USB端子も備え、USBメモリ内の楽曲再生も可能。インターネットラジオも聴取できる。

 また、AirPlayにも対応。iPhoneやiPadなどのiOSデバイスや、PCのiTunesから、ワイヤレスで音楽再生ができる。

 前面USB端子に接続したiPhone/iPod/iPadから、デジタルで音声を伝送し、高音質再生する事も可能。接続したiPhone/iPod/iPadの充電も行なえる。対応機種はiPod、nano(第2~6世代)、touch、iPhone 3G/3GS/4/4S、iPad(第1~2世代)。

ブラックモデルゴールドモデル背面

 従来モデル「RX-V771」から継承している機能として、VPS(バーチャル・プレゼンス・スピーカー)機能を装備。前方上方に設置するプレゼンス・スピーカー(フロントハイ)を仮想的に創成するもので、フロント・プレゼンス・スピーカーの設置が必須だったシネマDSP <3Dモード>を、7.1chや5.1ch構成のシステムでも手軽に利用できる。

 新モデルではさらに、VPSと「ダイアログリフト」という機能が組み合わせて利用できるようになった。これは、セリフなど、センターの音像を持ち上げられるもの。例えばスクリーンの下にセンタースピーカーを設置していても、スクリーンの中央まで引き上げ、画面から声が出ているようなサラウンドが楽しめる。高さは5段階で調整でき、新モデルでは1~5段階が均等な間隔で上昇・下降するようになっており、より理想的なポイントに調整できるという。

 視聴環境最適化システムの「YPAO」は、部屋の初期反射音を厳密に制御する高精度な「YPAO-R.S.C.」(Reflected Sound Control)に強化。上位モデル「AVENTAGE」(アベンタージュ)シリーズで採用されているもので、部屋の壁や床から発生する不規則な初期反射音を、デジタル音場処理技術で補正する機能だが、「R.S.C.」では初期反射音の制御精度をさらに向上させている。また、どのように補正されたかという周波数カーブも、従来モデルより簡単に表示できるようになっている。

YPAO-R.S.C.で補正後の周波数カーブを確認しているところ各種メニュー画面はグラフィカルでわかりやすいダイアログリフトでセンターの音像を上下している調整メニュー

 アンプとしての全体的な音質強化点として、具体的にどこに投入しているかは明らかにされていないが「ある部分にカスタムパーツを投入する事で、fレンジや解像度、情報量が向上している」という。DACはバーブラウンの24bit/192kHz対応モデルを採用する。


天面V773の背面。前モデルと比べると、独自のDockポートが無くなり、AirPlay対応や、ビデオボードが新規設計のボードになった事などにより、若干端子レイアウトが変わっている前モデルV771の背面。Dockポートがある

 スマートフォンやタブレット向けのコントロールアプリ「AV CONTROLLER」も無償で提供。同じLAN内にあるAVアンプをコントロールするもので、電源ON/OFF、ボリューム調整、ミュートなどの基本操作に加え、ネットラジオの選局やPC内のファイル再生、入力ソース切り換え、再生中の曲のタイトル名/アルバム名/アーティスト名表示なども可能。DSPモードの切り換え、SCENEモードの切り換えもでき、スマートフォンやタブレットをアンプのリモコンのように使える。「AV CONTROLLER」内のプレーヤー機能を使えば、Androidスマートフォン/タブレット内の音楽ファイルをワイヤレス再生する事もできる。

 ドルビーTrueHDやDTS-HD Master AudioなどのHDオーディオのデコードが可能。同社AVアンプの特徴である「シネマDSP」もHDオーディオに対応。マルチチャンネルリニアPCMだけでなく、ドルビーTrueHDやDTS-HD Master Audioなどの音声フォーマットに対し、シネマDSPをかけて再生できる。また、シネマDSPは、従来の「シネマDSP-plus」に、“高さ”方向の音場データを加え、立体的なサラウンド空間を実現する「シネマDSP <3Dモード>」に対応。シネマDSPプログラム数は17(音場プログラム数は合計38)。

 HDMIは6入力、2出力装備。4K映像のパススルーや、HD/SD映像を4K相当に変換するアップスケーリング機能も搭載。HDMI CECにも対応する。音声入力端子は光デジタル×2、同軸デジタル×2、アナログ音声×5(Phono入力×1含む)。音声出力はアナログ音声×3(ヘッドフォン×1含む)、7.2chプリアウトも備えている。映像入力は、コンポーネント×2、D端子×1、コンポジット×5。映像出力はコンポーネント×1、コンポジット×2。USBとEthernet端子も備えている。

 省電力機能としてECOモードを搭載。通常使用時の消費電力を抑えるもので、トランスから出力される電力そのものを抑制。これにより、どのような機能を利用している場合でも、約20%程度の消費電力を抑えられるという。ながら視聴やBGMユースなど、長時間使用する場合に特に効果があるとしている。通常時の消費電力は220W。待機時の消費電力は0.1W以下(HDMIコントロール/スタンバイスルーOFF時)。HDMIコントロール/スタンバイスルーON時では3W。

 外形寸法は435×368×171mm(幅×奥行き×高さ)。重量は10.8kg。



■前モデルと比較試聴する

比較試聴もしてみた

 2chの音楽再生で従来モデル「RX-V771」と比較すると、低域の沈み込みが一段深く、押し出しも強くなったのが確認できる。同様に高域も伸びやかで、ピアノと女性ヴォーカルのみといったシンプルな楽曲では、ヴォーカルの口の開閉など、細かな描写力が向上。背後のサーッというようなレコーディング現場の静かなノイズも含め、微細な信号の表現がより明確になっている。こうした傾向は、サラウンドでも同様だ。

 また、新機能である「ダイアログリフト」も、センタースピーカーとスクリーンやテレビが離れている場合は効果的な機能。画面から声が出ているように感じられるまで音像を持ち上げると、画面とサラウンドの一体感が高まるのが実感できた。


(2012年 5月 16日)

[AV Watch編集部 山崎健太郎]