クリプトン、10万円を切るHRシリーズの電源ボックス
-5万円以下の製品も。切り売り電源ケーブルも刷新
電源ボックスの「PB-HR700」 |
クリプトンは、ハイビット・ハイサンプリングデータを再生するオーディオ環境での利用を想定したオーディオ用アクセサリ「クリプトンHR(High Resolution)」シリーズの新製品として、電源ボックスの「PB-HR700」を9月上旬に発売する。価格は99,750円。
また、HDシリーズではないが、価格を抑えた電源ボックス「PB-222」と「PB-111」を9月上旬に発売。価格は「PB-222」が49,350円、「PB-111」が39,900円。
さらに、HRシリーズの切り売り型電源ケーブルの新製品として、従来のケーブルにメッシュを加えた「PC-HR1000M/30」(5.0SQ 30m巻き)、「PC-HR500M/50」(3.5SQ 50m巻き)も9月上旬に発売。1mあたりの価格は「PC-HR1000M/30」が11,025円、「PC-HR500M/50」が8,190円。
■電源ボックス「PB-HR700」
同社は2011年に、HRシリーズの電源ボックス上位モデルとして「PB-HR1000」(157,500円)を発売している。新製品の「PB-HR700」は、その性能や仕様を踏襲しつつ、コストを抑え、10万円を切る価格を実現した姉妹機となる。
電源ボックスの「PB-HR700」 | 上にあるのが上位モデル「PB-HR1000」 |
大きな特徴は、三菱ガス化学の「ネオフェード」という素材をベースに、クリプトンと三菱ガス化学がオーディオ用素材として共同開発した「ネオフェード カーボンマトリックス3層材」を使っている事。
ネオフェードは構造体の共振を抑え、振動エネルギーを効率良く吸収して熱エネルギーに変える効果がある。これを、2枚のCFRP(カーボン繊維強化プラスチック)の板で上下から挟んで3層構造としたもの。振動を素早く減衰させるだけでなく、あくまで自然に減衰させられるという。この素材を、コンセントと筐体下部の固定用緩衝材として採用。HR1000と比べると使っている部分は少ないが、「キモとなる部分に使っており、音を汚し、なまらせる不要振動をスムーズに吸収させる」という。
さらに、ネオフェード カーボンマトリックス3層材とステンレスを組み合わせたインシュレータも装備している。
基本構造も、HR1000で採用した「電源フィルタ2回路構成」を踏襲。コンセントは6個口で、左2個はパワーアンプ、パソコンなどの「大電流機器・高ノイズ機器」接続用、右4個はDVD/CDプレーヤー、プリアンプ、DACなどの「小電流機器」接続用。大電流機器・高ノイズ機器と、小電流機器とを分離接続する事で、機器間の相互影響を大幅に軽減している。
コンセントはレビトン製のホスピタルグレード |
なお、HR1000では、内部に「バスタレイド」と呼ばれる電磁干渉抑制体を用いて、電波を吸い取るようなノイズ抑制を行なっているが、HR700では使われていない。しかし、大電流機器・高ノイズ機器と、小電流機器用のコンセントを物理的に離して設置することで、相互の影響を低減させている。
コンセントはレビトン製のホスピタルグレード。筺体はステンレス製。ACインレットはロジュウムメッキ仕上げ。外形寸法は300×125×80mm(幅×奥行き×高さ)で、重量は約3kg。
■電源ボックス「PB-222」/「PB-111」
それぞれ、「PB-200」と「PB-100」の後継モデル。HRシリーズで採用されている、「電源フィルタ2回路構成」を採用。ノイズ成分が多いPCやパワーアンプなどの大電流用コンセントと、ノイズ影響を受けやすいCD、DAC、DVD、プリアンプの小電流用コンセントに分離。機器間のノイズ干渉を抑えている。
なお、大電流用コンセントは両機種とも2口、小電流用はPB-222が4口、PB-111が2口となる。それ以外の仕様は共通。
上がPB-111、下がPB-222 | PB-111 | PB-222 |
クリプトンの試聴ルームにおいて、同社従来品「PB-500」と、新製品の「PB-HR700」と「PB-222」を聴き比べてみると、HR700/PB-222ではSN比や音像の立体感がアップ。さらに低域の解像度や沈み込みも向上するのが実感できた。PB-222とHR700では、HR700の方が静寂さや低域の沈み込みがより深くなる |
家庭内でのいろいろな飛び込みノイズ削除に効果があるという、磁気飽和度の高い特殊磁性体「センダスト・トロイダルチョークコイル」のノイズフィルタ回路を装備。カットオフ周波数100kHzで不要ノイズをライン電源から排除し、電源のピュア化を実現するという。
コンセントは、試聴の繰り返しで吟味したというパーツを採用。配線材はOFC単線。PB-222のACインレットはロジウムメッキ、PB-111はニッケルメッキ。表面パネルは鉄。上位モデルのネオフェードやバスタレイドは使われていない。
外形寸法は300×126×80mm(幅×奥行き×高さ)で共通。重量はPB-222が約2.4kg、PB-111が約2.3kg。
■切り売り型電源ケーブルをマイナーチェンジ
クリプトンは昨年、電源ケーブル市場に本格参入し、5.0sqの「PC-HR1000」と、3.5sqの「PC-HR500」という2種類をHRシリーズとして投入している。長さは2m。同時に、切り売りモデルも投入していたが、切り売りモデルには単品売りとは異なり、外側のメッシュがついていなかった。
新しい切り売りの「PC-HR1000M/30」(5.0SQ 30m巻き)と、「PC-HR500M/50」(3.5SQ 50m巻き)は、単品と同じメッシュを備えたもの。「メッシュの有無でも音が変化するので、メッシュ付きで自由な長さのケーブルが欲しいというニーズに応えた」という。
単品の電源ケーブル | 単品と同じようにメッシュ付きで切り売りタイプが登場した |
一般的なケーブル(左)との比較。介在の絹は繊維が細かい |
その他のケーブルとしての仕様は従来品と同じ。最大の特徴は、介在に絹(シルク)を使っている事。絹の静電気に強く(帯電しにくい)、柔軟性と弾性を併せ持った特性に注目。電源ケーブルに電流が流れると発生する、超微小振動を吸収し、絶縁体やシースに採用した制振剤入りポリオレフィンなどと合わせて、振動減衰効果を高めたという。
導体にはPCOCC-Aを採用。単結晶銅素材のPCOCC-Hをアニール(焼き純し)処理したもので、導体として仕上がった段階では6Nを上回る純度があるという。これは、結晶粒界のない単結晶素材からアニール処理することで、不純物が入り込む余地が無いためだという。アニール処理されたPCOCC-Aは、導線結晶境界面のバラつきがほとんど無く、音の濁りなどが改善されるという。
(2012年 8月 22日)
[AV Watch編集部 山崎健太郎]