デノン、ネットワーク/4K対応の9ch AVアンプ「AVR-4520」

-4ポートハブ、MHL/InstaPrevueやDTS:Neo 11.2ch対応


AVR-4520

 デノンは、AVアンプの新モデル「AVR-4520」を10月中旬に発売する。価格は346,500円。カラーはブラック。

 DLNA/AirPlayなどのネットワーク再生機能も備えた9ch AVアンプ。セパレートのパワーアンプ「AVC-A1HD」の設計思想を継承した9chディスクリート・モノラル・コンストラクションによりチャンネル間のクロストークを抑えているほか、パワートランジスタ「Denon High Current Transistor(DHCT)」などの高品質パーツを投入している。定格出力は150W×9ch(8Ω)、最大出力は220W×9ch(6Ω)。

 ネットワーク再生機能も搭載。AirPlayやDLNA 1.5をサポートし、24bit/192kHzのWAVやFLACのほか、Apple Losslessファイルも再生できる。曲間で再生が途切れないギャップレス再生にも対応し、クラシックなども快適に再生できるという。そのほか、インターネットラジオの聴取や、写真共有サイトFlickrへのアクセスも可能。USBメモリ内の楽曲再生や、iPhone/iPodのデジタル接続も行なえる。


カラーはブラック
前面カバーオープン時
4ポートのスイッチングハブを搭載

 新たに、4ポートのEthernetスイッチングハブを搭載。パソコンやNAS(LAN HDD)など3つまでの機器をこのハブに接続でき、ネットワーク再生においても最短の信号伝送を実現するとしている。AVアンプが電源OFFの状態でもハブを機能させるネットワークスタンバイ機能も備える。ただし、同機能利用時は待機時消費電力が通常スタンバイよりも大きくなる。

 スマートフォン用アプリ「Denon Remote App」の最新バージョンに対応。iPhoneやAndroidスマートフォンでAVアンプの操作のほか、PCやLAN HDD内の音楽ファイル、インターネットラジオのブラウジングなどが行なえる。メイン画面のショートカットキーで、好みの機能を最大8個までカスタマイズできる。

 HDMIは入力を7系統(うち前面1系統)、出力を3系統装備。MHLに対応し、スマートフォンなど対応端末の映像をテレビなどに接続して大画面で再生でき、スマートフォン給電なども行なえる。InstaPrevueにも対応。複数のHDMI機器から入力された映像信号をプレビュー画面で同時に確認して選択できる。視聴中のHDMI映像の中に、もう一つHDMI映像を表示するPinP(子画面表示)も可能。付属リモコンにもInstaPrevue専用キーを搭載した。

 映像モードにおいて、新たに「ストリーミングモード」も搭載。インターネット動画など解像度の低いコンテンツに最適化したモードで、スタンダード(ビデオソース)、ムービー(フィルムソース)、ビビッド(ゲーム/静止画)、カスタムモードから選べる。

 4K映像にも対応。アナログビデオ信号やHDMIのSD/HD映像信号を3,840×2,160ドットまでアップスケーリングできるほか、4K映像入力信号のパススルーも可能。4K映像にGUIをオーバーレイ表示することもできる。これらを総称して「4Kディスプレイにフル対応」としている。4Kアップスケーリングに対応した新世代のIPスケーラーはHD映像へのスケーリングでも効果を発揮するという。

MHLに対応InstaPrevueにも対応InstaPrevue用のボタンをリモコンの中央部に備える
「4Kディスプレイフル対応」を謳うアップスケーリング時の対応解像度の一覧HDMIマルチゾーンに対応

 3系統のHDMI出力のうち2系統はメインゾーン用、1系統はマルチゾーン用。メインゾーンの2系統は前述の4Kアップスケーリング/パススルーやARC、CECに対応。マルチゾーン用も4Kパススルーに対応する。マルチゾーンを利用して、メインで再生中のソースと別のソースも出力したり、同じソースを解像度を変えて表示することも可能。そのほか、ステレオ信号をZone2/3にも同時に出力する「オール・ゾーン・ステレオ・モード」も搭載。メインゾーンとのタイムラグが発生しないため、複数の部屋で聴いた場合でも他の部屋の音とズレて聴こえることがないという。 

 「Denon Link HD」端子を装備。デノンのBlu-rayプレーヤー「DBT-3313UD」に搭載している端子で、形状は同軸端子。AVアンプのDACを動作させるマスタークロックをプレーヤー側に供給し、同一のクロックで動作させることで、ジッタの少ないデジタル音声伝送が可能となるという。また、Denon Link HD以外の接続でも「ハイブリッドPLLクロックジッターリデューサー」でジッタを低減。HDMIだけでなく、光、同軸デジタル音声接続、アナログ音声接続でもそれぞれに最適化したジッタ低減が行なえるという。

Denon Link HDの概要(従来のDenon Link 4thとの比較)Denon Link HDのON/OFFによるジッターの違い「ハイブリッドPLLクロックジッターリデューサー」利用時の、他社製品とのジッター比較

 パワートランジスタには、大電流タイプの「Denon High Current Transistor(DHCT)」を採用。放熱性の向上を図り急激な温度上昇を抑え、高温でも安定した動作を実現したという。整流ダイオードには大電流対応のショットキーダイオードを並列で使用。ブロックコンデンサはカスタム品で、オーディオ用にチューニングした50mm径の大容量コンデンサ(22,000μF)を使用している。

大電流タイプのDHCTを採用電源部の特徴22,000μFのブロックコンデンサを搭載

 独自の「D.D.S.C.(Dynamic Discrete Surround Circuit)」は、32bit処理の「D.D.S.C.-HD32」に進化。サラウンド再生に必要な信号処理回路をひとつひとつのブロックに独立させ、専用回路でディスクリート化している。サラウンド回路の中核となるDSPには、400MIPSの32bit浮動小数点DSP(アナログ・デバイセズ製)を3個搭載する。



■ 隣の部屋へのサブウーファ音漏れを防ぐAudyssey新機能など

 CDなどのデジタル化された音声信号を元のアナログ波形に近づけるため、32bitの高精度処理を行なう「AL32 Processsing Multi Channel」を新開発。残響音などの微小な音の再生能力を高めており、従来のPCM信号だけでなく、ドルビーデジタルやDTSといったビットストリーム信号の拡張にも対応した。

 上記のAL32プロセッシング回路で32bit化された信号を処理するDACには、32bit/192kHz対応のTI/バーブラウン「PCM1795」を搭載。全11.2ch(別途パワーアンプ追加時)でディファレンシャル駆動し、ノイズの少ないDA変換を実現するという。

 サラウンドフォーマットは、従来のAudyssey DSXやドルビープロロジックIIzなどに加え、新たにDTSNeo:Xに対応し、別途パワーアンプの追加で最大11.2chのサラウンド再生に対応。内蔵アンプのチャンネル割り当てを自由に行なえるという「カスタム・アンプ・アサインモード」も新たに搭載した。そのほか、セリフ部分を聴きやすくする「ダイアローグエンハンサー」や、ソフト収録時のLFEチャンネルの遅延による位相ズレを補正する「低音の位相補正」(Base Sync)も搭載。0~16msecの範囲で設定できる。外付けパワーアンプ利用時に、内蔵パワーアンプへの信号入力をカットしてプリアンプへの影響を軽減する「アドバンスド・プリアンプ・モード」も採用する。

 Audysseyの音質補正機能では、隣の部屋などに低音の音漏れが発生するのを抑制する新機能「Audyssey LFC」や、劇場にも採用されているという試聴環境への詳細なチューニングを実現するインストーラプログラムに対応した「Audyssey MultEQ Pro」に対応。そのほか、スピーカーの初期設定を自動で行なう「Audyssey MultEQ XT」や、2台のサブウーファ接続時に、それぞれのサブウーファの音場を独立して補正して相互干渉を自動制御する「Audyssey Sub EQ HT」、音の大小をリアルタイムに調整する「Audyssey Dynamic Volume」、小さな音量でも自然なサラウンド感を実現する「Audyssey Dynamic EQ」も搭載。

新開発の「AL32 Processsing Multi Channel」機能32bit DACを3基搭載隣の部屋へのサブウーファ音漏れを防ぐAudyssey LFC

 その他の機能として、SACDの信号をPCMに変換して再生可能な「DSD→PCMコンバージョン機能」を搭載。なお、この機能はSACD専用のため、DSDファイルをネットワーク経由で再生することはできない。圧縮音源を原音に近い状態に復元するという「コンプレストオーディオリストアラー」も備える。

 HDMI以外の入力端子はコンポーネント×3、コンポジット×4、アナログ音声×7、光デジタル音声×2、同軸デジタル音声×2、Phono×1、7.1ch EXT×1。出力はコンポーネント×2(モニター/Zone各1)、コンポジット×3(モニター/Rec/Zone各1)、アナログ音声×3(Rec×1、Zone×2)、11.2chプリアウト×1、ヘッドフォン×1など。Ethernet×4やDCトリガー、リモート入/出力、USB×2も装備。

内部構造

 本体構造は、左右ヒートシンクをフットの上に配置して、大型パワートランスをベースプレートを介して 高剛性のシャーシに固定。これによって、内部/外部の振動(鳴き)を吸収して画質向上と音の透明感/定位の向上を図っている。

 GUIも改善。アイコン表示を大きくしたほか、メニュー階層を浅くしてわかりやすくした。エントリーユーザー向けのウィザード機能は「セットアップアシスタント」(従来はセットアップウィザード)という名称に変更。ヘルプメニューも充実させ、「取扱説明書を見ずに使えるものを目指した」としている。ネットワーク接続時の診断メニューも用意している。

 FMチューナも搭載。消費電力は780W(待機時0.1W、CECスタンバイ時0.5W、ネットワークスタンバイ時5.1W)。外形寸法は434×422.7×194.5mm(幅×奥行き×高さ)、重量は16.5kg。セットアップマイクなどが付属する。付属リモコン「RC-1165」は、モーションセンサーによりバックライトが自動で点灯する機能を装備。また、LED発光部を2個に増やし、上下左右の動作範囲を拡大している。マクロキーを4つ装備している。

背面端子部GUIの一例付属リモコン

http://www.denon.jp/jp/News/Pages/News-Details.aspx?NewsType=news&NewsId=190&Year=
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(2012年 9月 14日)

[AV Watch編集部 中林暁]