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AWA、TVCMで新たな音楽体験訴求。Apple対抗で急遽CM投下

「聞いてもらう」重視で再び音楽を。無料期間も対価

 定額制音楽配信サービス「AWA」は29日、新CMの発表とともに、5月27日スタート以来の実績や今後の成長戦略を発表した。AWA初となるテレビCMは6月30日から放送。音楽は大沢伸一とVERBALがタッグを組み、「革命的な音楽体験AWAの登場感を表現している」という。

AWA株式会社 代表取締役社長の藤田 晋氏(左)と代表取締役会長の松浦 勝人氏(右)

 ストリーミング音楽配信サービスは6月にLINE Musicがスタートしたほか、グローバルでは6月30日に米AppleがApple Musicをスタート予定。AWAの藤田晋社長は、「各社が参入して、盛り上がったほうがいい。どれにしようか選べる環境が望ましい。ただし、ネットサービスを提供する立場としては、先行者有利で、早くユーザーを集めてしまいたい、というのが本音。急いでテレビCMやっています(笑)」と語り、Apple Musicのスタートを意識してのTVCM投入であることを示唆した。

AWA Music 「誕生篇」30秒

 AWAは定額制のストリーミング音楽配信サービスで、エイベックス・デジタルとサイバーエージェントが共同出資したAWAが運営。数百万曲のライブラリをラインナップした、プレイリスト型のサービスが特徴で、好みのジャンルや気分にあわせたプレイリストを選んで楽しめ、作成する事もできる。iOS/Android向けにアプリを提供、月額360円(税込)のLiteと、オンデマンド視聴対応で月額1,080円(税込)のPremiumの2つのプランを用意。サービス開始から3カ月間はPremiumプランが無料/登録不要で利用できる。楽曲数については、年内に500万曲、2016年末までに1,000万曲目指す。

 CM発表とともに、機能強化ロードマップも紹介。ユーザーが聞いている曲やお気に入りプレイリストをFacebookやLINE、Twitterなどのソーシャルメディア上でシェアできる「ソーシャル機能」を6月下旬追加。ジャンルごとに人気プレイリストを作成しているユーザーのランキング「プレイリスターランキング」は8月上旬にスタート予定。また、通信環境の無い環境でも利用できる「オフライン再生モード」やiTunes転送曲などのローカル音源再生にも対応する。

機能公開済み
Apple TV対応
(AirPlay利用)
公開済み
SNS連携
Facebook/Twitter
Line
6月下旬
指定アーティストの
楽曲一覧から再生
7月中旬
直近入荷曲ランキング7月中旬
プレイリスター
ランキング
8月上旬
オフラインモード8月上旬
ローカルキャッシュ8月上旬
ローカル音源再生8月上旬
Favoriteユーザー
一覧表示
8月上旬
新着プレイリスト一覧8月上旬
他デバイス対応9月~

プレイリストを軸にレコメンドを進化

 29日のCM発表会には、AWA株式会社 代表取締役会長の松浦 勝人氏(エイベックス・グループ・ホールディングスCEO)と、代表取締役社長の藤田 晋氏(サイバーエージェント代表取締役社長)が登壇し、AWAの戦略を説明。また、小室 哲哉や大沢伸一、田中 知之、☆Taku Takahashi、IMALUなどのゲストが登壇し、AWAの魅力を紹介した。

 松浦会長は、ビデオコメントで、「音楽市場は右肩下がりで、一方で海外ではストリーミング配信サービスが伸びている。我々も色々研究し、日本でも展開する。我々以外にもAppleやGoogleなどのサービスも始まるが、そういったサービスがトータルで数千万規模になれば、音楽市場の右肩下がりから脱却できるのではないか。また、音楽の聞き方も変わってくる」とした。藤田社長は、「松浦会長から『やりたい』と言われ、それに乗っかった形。我々に求められているのは技術力やインタラクションなど。スマホの登場以来数年の変化で新しいサービスを実現できると考えた。最初から高いレベル、高いクオリティでスタートできた」と語った。なお、AWAの語源については「特に意味は無い。あえて意味を持たせないように、日本発なのかどこから来たのかわからないようなものにしたかった(藤田社長)」という。

 AWAの特徴として、両氏が強調したのがプレイリストとレコメンド。松浦会長は、「今のAWAはプレイリストを軸に考えている。選曲しつづけていると自分が知っているもので止まってしまう。受動的に聞きながらもその人の特性にあわせて曲を出してあげるレコメンドが重要」と説明。藤田社長も「レコメンドは最も力を入れないといけないことの一つ。日本人の思考を分析するためにはビックデータをこれから蓄積し、1~2年掛けてレコメンドの精度を上げていく」とした。

AWAではプレイリストをサービスの軸に据える

 レコメンドにより、「アーティストにとっての、知ってもらう、届いていなかった人に届く、を実現したい。スマホは生活に密着しているメディアで、音楽を身近に届けるには理想的」と藤田社長は説明。また、松浦会長は、「これから新しい音楽の作り方や発表の仕方が出てくるかもしれない。AWAから出たヒットや、AWA発のアーティストをつくり出せるような影響力有るサービスにしたい」と意気込みを語った。

 なお、AWAの収益配分の仕組みについては、楽曲利用料として、有料プラン収入のうち一定割合を権利者に支払っている他、無料トライアル期間中も固定の再生・単価に従い支払を行なっているという。また、著作権使用料も、著作権管理団体を通じて、支払っているとしている。

音楽から離れていた人にこそ「AWA」

 発表会では、小室哲哉や大沢伸一、田中 知之、☆Taku Takahashi、IMALUなどのゲストが登壇し、AWAの魅力を紹介した。

左から、田中 知之、大沢伸一、IMALU、小室哲哉、☆Taku Takahashi

 小室氏は、「AWAの登場により、『買ってもらう』から、『聞いてもらう』の原点に帰るのは大きい。多くの人がYouTubeで検索して聞いているが、AWAは音楽に特化し、きちんとした音になる。作り手としては、すこし襟を正せるという意味でいいな、と思っている」とコメント。また、「プレイリストもあるけど、チャートもある。1位とか10位とかランキングに入れば嬉しいし、聞かれている実感が得られる。今は入っていないけど(笑)、もう一度近づきたい」とランキング入りへの意欲を見せた。

 大沢伸一氏は、「この15~6年でネット時代に音楽がデータになり、便利になった。ただ、功罪もあって、音楽に係る行為。買いに行く、再生するとかが、あまりに便利になりすぎて悩んでいた。プレイリストを共有してみんなで音楽の造詣を深めるとか、そういう方向になってほしい」とコメント。AWAへの作り手としてのアプローチは、「もちろんAWAの中でしか聞けない曲とかもやってみたいですが、どっちかいうとユーザーとして楽しみたい」と語った。

 2万数千枚ものレコードを所有しているという田中 知之氏は、「音楽とともに、集める、所有する楽しさ、ということで自分は活動してきた。当初はAWAは所有を否定する立場なのか? って思っていたが、自分で使ってみたら、AWAの特徴であるプレイリストは、僕らみたいなプロじゃなくても、一般の人でも楽しめる。自分がプレイリストを作ることで、愛情や自分の楽しみに感じる。所有と同じような感覚がある。デジタルで少し遠くなってしまった音楽が再び身近になるのでは」と歓迎コメントを寄せた。

 ☆Taku Takahashi氏も「音楽業界が不況というけど、音楽自体が不況なわけではない。AWAは、今までと違った方法で音楽を楽しめるし、こういうサービスが日本から発信されているのは楽しみ」と語った。

 ゲストや松浦会長、藤田社長によるプレイリストも公開され、各人がそれぞれの拘りを紹介した。

ゲストと会長/社長によるプレイリスト

 日本でのサービス開始日程は明らかにされていないが、近日展開が見込まれる「Apple Music」への対応について、藤田社長は「各社が参入して、盛り上がったほうがいい。どれにしようか選べる環境が望ましい。ただし、ネットサービスを提供する立場としては先行者有利で早くユーザーを集めてしまいたい、というのが本音。急いでテレビCMやっています(笑)」と説明。松浦会長も、「かなり前から用意して、AWAがスタートした。来るとは思っていたが、こんなタイミングとは思っていなかった。早いなと思っています」とした。

 また、松浦会長は、CDと配信のバランスについて「CDを買うのは音楽が好きな人、音楽に時間を費やす人だけになる。その傾向はどんどん強くなるはず。だから、CD売上が今後下がる」と予測した。

 一方で、定額を活かしたAWAの狙いについても強調した。

「ただし、音楽を聞いている人が減っているわけではない。あるいは、最近は新しい情報に触れようとしなかった人や、青春時代に聞いていた曲をまた聞いてみようという人を作るということ。定額のAWAで、『音楽から離れていた人たち』が、音楽に帰ってくる。それを期待している」

(臼田勤哉)