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Technics/ナガオカ/東洋化成がレコードの魅力伝えるプロジェクト。SL-1200GAEは30分で完売
(2016/4/12 19:51)
アナログレコード人気が再燃する中、6月にターンテーブル「SL-1200GAE」を発売するTechnicsと、レコード針を開発製造しているナガオカ、レコード盤製造の東洋化成の3社が、「レコード再発見プロジェクト」(Record Rediscover Project)を発足。イベントなどで協力し、若い世代も含め、アナログレコードの魅力を幅広い層へ発信していくという。
3社はいずれもヘッドクォーター、製造ラインを日本に置き、メイドインジャパンのオーディオ機器やレコードを世界に届けているという共通点がある。そこで、「Record Rediscover Project」と称して、3社共同で日本の音楽ファン、オーディオファンに向けて「より楽しいオーディオスタイルをサポートしていく」という。
今後は3社が協力してイベントなどを展開していく予定。プロジェクトの専用Webサイトも立ち上げ、ミュージシャンとオーディオ評論家による対談などを通じて、アナログの魅力を紹介するコンテンツも掲載。今後のイベントやニュースなどは、このサイトで案内していくという。
発表会には、ピアニストであり、Technicsのアンバサダーも務めるアリス=紗良・オットさん、ミュージシャンの鈴木慶一さん、オーディオ評論家の和田博已さん、ブロードキャスターのピーター・バラカンさん、 音楽評論家の藤本国彦さんも登壇。アナログレコードの魅力を、それぞれ語った。
アナログレコードに携わる日本の3社が協力
Technicsブランドのアナログターンテーブル「SL-1200GAE(50th Anniversary Edition)」は、6月24日に発売予定で、価格は33万円。世界限定生産1,200台で、日本では300台を販売する。
発表会が行なわれた4月12日の午前10時から予約受付を開始したが、午前10時30分には日本販売分の300台が完売したという。パナソニック コンシューマー・マーケティング・ジャパン本部 テクニクス担当の伊部哲史氏によれば、現在のところ追加生産の予定は無いという。
「SL-1200GAE」は、名機「SL-1200シリーズ」に近いフォルムを採用したアナログターンテーブルで、デザイン面やダイレクトドライブ(DDドライブ)の採用などSL-1200の伝統を踏襲しながらも、新設計のモータの採用や部品の厳選により、さらに安定した回転や振動低減を実現したというモデル。
伊部氏によれば、「Technicsの顔とも言うべきSL-1200シリーズをただ復活させたのではなく、ダイレクトドライブのターンテーブルを“再定義”するものとして開発した。ほぼ全ての部品が新規の金型で作られており、ターンテーブルの回転で問題となる回転ムラ(コギング)を全て解決した。レコードに刻み込まれた、音楽が生まれる感動的な瞬間をそのまま再生できるプレーヤー」だという。
プロジェクトのカートリッジには、ナガオカの「MP-500」が選ばれた。手がけた、ナガオカの技術アドバイザー・寺村等氏は、「自分がやった仕事が評価された時はいつでも嬉しいもの。ナガオカで最高級のカートリッジでもあり、心から嬉しいと思っています。特性は20kHzくらいまでフラットに伸びており、ナチュラルなサウンド。ジャンルを問わず、レコードに詰まっている情報を限りなく引き出せる」と語る。
日本で唯一、 レコードを製造している東洋化成のレコード事業部 カッティングエンジニアの西谷俊介氏は、「レコードの製造においては、ラッカー盤とそこからプレスされたレコード盤など、製造の過程で若干音の違いがある。東洋化成では自社工場で一貫して生産しているため、最終的なレコードの仕上がりを想定した上で音作りができるのが強み。“なぜこの溝から音が出るのだろう”という、感動的な衝撃を、若い世代を含めてより多くの人達と共有していきたい」と、意気込みを語った。
アナログレコードにはウイスキーが合う!?
アリス=紗良・オットさんは、「ウイスキーが好きで、ジャズバーに行ってLPを聴きながら飲みます。ノスタルジックな音が好きですね。聴いていて、音に“酔う”感覚。それがウイスキーと良く合うんです」と、お酒とからめてアナログレコードの魅力を紹介。
Technicsの製品は、一体型コンポ「OTTAVA SC-C500」を例に挙げながら、「とてもクオリティが高くて、私が目指している音楽を、きちんと皆さんに届けられる製品になっている」と賞賛した。
ムーンライダーズを現在休止中、はちみつぱいでの活動を再開しているミュージシャンの鈴木慶一さんは、同じくはちみつぱいの盟友でもある、オーディオ評論家の和田博已さんと共に登壇。
アメリカのロックバンド、グレイトフル・デッドや、はちみつぱいのレコードをかけながら、当時を振り返った。和田さんは、「レコードは当時の空気を閉じ込めてあるという感じがヒシヒシとする。その年代、その年代、テクノロジーと寄り添っている」という。オーディオ評論家として「SL-1200GAE」については、「(SL-1200が)リニューアルして登場したが、10倍以上、遥かに性能がアップしての再登場。コギング問題を解決するなど、この価格では世界最高のプレーヤーに仕上がっていると思う」と、高く評価した。
鈴木さんはミュージシャンとしての立場から、「我々はいつも、(スタジオでは)ビットレートやサンプリングレートが常に高い状態で音楽を聴いている。家で確認する場合も同じ。(リスナーが音楽を楽しむ場合も)それに近い音で楽しめれば、それがベストだと思う」と、音楽を楽しむ上での、オーディオ機器の再生能力の重要性を語った。
1年間、アナログレコードしかかけないラジオ番組を続けてきたピーター・バラカンさんは、「ラジオではコンプレッサを通ってしまうのでリスナーに音の違いがわかるか不安もあった。しかし、“やっぱりアナログは音が良いですね”という反響がとても大きかった。イベントでも、CDとハイレゾ、アナログの聴き比べをすると、アナログが何故か一番良い音がする」と、これまでの経験談を披露。
同時に、「アナログは今、にわかにブームという感じになっている。ブームになると廃れてしまうので、必要以上に煽るつもりはありません。しかし、アナログレコードに触ったこともないという若い人たちが、こういう風に丁寧にレコードと接する事で、聴き方も丁寧になると実感してくれるかもしれない。そんな若い人が増えたら、きっと素敵な事だと思う」と言う。
藤本さんは、ビートルズのレイン(SP盤/ペイパーバック・ライターのB面)を再生した上で、「モノラルだが、CDと比べると音圧がまったく違う。特にベースが凄い。これに慣れてしまうとCDが聴けなくなってしまう(笑)」と、アナログならではの聴きどころを紹介した。