レビュー

アンテナ不要でBS4K、動画配信も。Android TV「ドコモテレビターミナル02」の魅力

NTTドコモが2月13日に発売を開始した「ドコモテレビターミナル02」は、そのシンプルすぎるネーミングとは裏腹に、実に多彩な顔を持つ。外付け型Android TVであり、ドコモ携帯電話契約者以外でも使え、極めつけは「ひかりTV for docomo」を通じたBS4K放送への対応。BSアンテナが無くても番組を見たり、録画できる。約1.7万円で買える多用途STBを、4Kテレビと接続して実力に迫ってみた。

「ドコモテレビターミナル02」を、パナソニックの43型4Kテレビ「TH-43GX855」と接続。動画サービスなどを楽しんだ

「誰でも買えるAndroid TV」として有力な選択肢

携帯電話会社は近年、○○Payをはじめとしたコード決済、通販、健康サポートなどに代表されるように、事業の多角化を図っている。映像関連分野もまさにそうで、ドコモであればdTV、dアニメストア、dTVチャンネル、DAZN for docomo、Disney DELUXE、ひかりTV for docomoという、実に6つもの配信サービスを抱えている。

これらドコモ発の映像配信サービスを、家庭のテレビに接続してワンストップで楽しめる端末、それが「ドコモテレビターミナル02」の位置付けだ。なお仕様書・説明書での型番は「TT02」。

「ドコモテレビターミナル02」本体。黒い穴の部分がLEDとなっており、動作状態に応じて緑・赤に点灯する

「02」と付くことからも分かるように、シリーズ製品としては2世代目。先代モデル「ドコモテレビターミナル(TT01)」は2018年1月に発売している。TT01は併売されているが、TT02のみ“BS4Kデジタル放送”をサポートしているのが決定的に違う。同放送に興味があれば、TT02の一択となるだろう。

TT02は、ドコモオンラインショップでは17,424円で販売中。また月500円でのレンタルプランも用意されている。

まずはハードウェアとしてのTT02をチェックしていこう。本体サイズはギリギリ手のひらに乗るくらい。具体的な寸法は約135×135×30mm(幅×奥行き×高さ)で、重量が約278g。

本体正面側にはLEDが1つ内蔵されており、動作ステータスを示す。背面側には映像出力用のHDMI 2.0b、ギガビット対応のLAN端子(1000BASE-T)、吸気口、ペアリング用ボタンなどがある。電源はACアダプター式。

USB関連は背面にUSB 3.0端子、右側面にUSB 2.0端子が1つずつ。録画用HDD(別売)はUSB 3.0端子に接続するのだが、必ずしもHDDがUSB 3.0対応ではなくても良さそうだ。筆者が試した限り、USB 2.0接続の2.5型HDDであってもBS4K放送を録画できていた。一方のUSB 2.0端子はマウスなどの接続が想定されている。

背面の端子類
右側面にはUSB 2.0端子
底面
天面にはドコモのロゴが刻印

付属のリモコンは、音声入力用マイクや、放送波切替用ボタン、チャンネル選択対応の数字キーを搭載。本体との通信はBluetoothで行なうが、赤外線送信機能もしっかりあるため、TT02と組み合わせるテレビの電源オン/オフや音量調整がこのリモコンから行なえる。

ボタン豊富なリモコン
放送波の切り替えキーも

そしてOSには「Android TV 9」が採用されている。NetflixやDAZNなど、様々な事業者が提供するサービスやアプリについても、Android TV向けであれば広く利用できる。ドコモ系映像サービス6種を使っていなくても、あるいはauやソフトバンクの契約者であっても、Android TV目当てにTT02を利用する価値は十分あるだろう。

やや気になったのは、画面のメッセージ周りだ。UIが遅いなどではなく、例えばメッセージ通りにBluetoothリモコンのペアリング作業をすると、説明と異なるダイアログが挟まれたりした。

また、確かにネットワーク接続しているのに接続できず「接続を確認してください」と出たシーンでは、接続を見直さずに結局「再試行」ボタンを押しただけで接続できたということがあった。大きなトラブルではないが、混乱したタイミングが2、3あったことは念のため記しておく。

おもな付属品

NTT系光回線×IPv6パススルーの組み合わせでアンテナレスBS4Kを実現

ここからはTT02最大の注目ポイントである「アンテナ不要での地上波・BS放送視聴」機能について詳しく見ていこう。

TT02自体はここまで紹介してきたように、比較的オーソドックスなハードウェア構成のSTBである。ただその他一般製品と決定的に違うのは「ひかりTV for docomo」に対応しており、同サービス用のアプリをプリインストールしている点だ。

TT02のホーム画面。利用にあたってはdアカウントでのログインが必須。画面右上にはdポイントの残高が表示されている
ホーム画面下部にはAndroid TV対応アプリが各種並んでいる。この中で中核となるのが「ひかりTV for docomo」アプリ。これを使わないのはもったいない

ひかりTV for docomoは2018年9月にサービスを開始した。大抵のスマホ・タブレットでアプリさえインストールすれば見られるNetflixやHuluとは異なり、あくまで“光ファイバー回線と専用STBの組み合わせ”を前提としたサービスである。

相対的に導入ハードルは高いが、その分というべきか、視聴できるコンテンツ数は豊富だ。特に地上波・BS、あるいはCSの専門チャンネルなど各種テレビ放送をリアルタイム視聴できるサービスは貴重。また専用STBで受信した放送を“転送”し、手持ちのスマートフォンを使って外出先で楽しむ、いわゆる「リモート視聴」にも対応する。

そして、ひかりTV for docomoで重要なのが光ファイバー回線。放送波の受信に相当する部分を光ファイバー回線経由で行なうため、例えば自宅でひかりTV for docomoを楽しむ場合でも、放送受信用のアンテナ線を宅内に引き込む必要がない。賃貸住宅で自由なアンテナ工事ができない等、アンテナ設置を巡る悩みは多岐に渡るだけに、この「アンテナ不要」に魅力を感じる人は多いだろう。

TT02初回セットアップ時に表示される画面。回線接続の形態がよくわかる

ひかりTV for docomoを使うための要件をもう少し整理しておくと、まずNTT系の光ファイバー回線。NTT東日本・西日本が直接提供する「フレッツ光」のほか、「ドコモ光」などに代表される“光コラボ”型の契約形態も含まれる。

また回線とは別に、IPv6対応ルーターを用意し、設定画面において「IPv6パススルー(ブリッジ)」機能をオンにすることも条件。これによってTT02がひかりTV for docomoのサーバーと直結するような格好となる訳だ。なおルーターとTT02の接続には、無線(Wi-Fi)ではなく有線が推奨されている。回線負荷を考えれば、やむなしだろう。

今回のレビュー執筆にあたっては、筆者宅に引いてあるIPv6 IPoE系回線「エキサイトMEC光」(ルーター機能非搭載のONUを利用)、そしてIPv6対応ルーターとしてバッファローの「WRM-D2133HP」を用いたが、問題なくひかりTV for docomoを利用することができた。

「WRM-D2133HP」の回線設定画面。このルーターでは「IPv6ブリッジを許可する」をオンにしておかないとひかりTV for docomoが使えない

興味深かったのはTT02のセットアップ過程で、光ファイバー回線の「お客さまID(ご契約ID)」の入力が必要だったこと。回線サービスの利用者情報変更時などに必要なIDなのだが、まさか端末設定時にまで求められるとは知らず、ちょっと驚いてしまった。ただ筆者の環境では「自動取得」が効いたので、それほど不便はなかった。

TT02のセットアップにあたっては、光ファイバー回線の「お客さまID(ご契約ID)」を登録する(スキップも可能)

アプリ「ひかりTV for docomo」でテレビ放送をリアルタイムで楽しむ

ここからはひかりTV for docomoアプリの使い勝手を紹介していきたい。今回はパナソニックの43型テレビ「TH-43GX855」と接続して使っている。

パナソニック製43型テレビ「TH-43GX855」とTT02を組み合わせて使用した。このテレビは“地震に強い”吸着機能付き転倒防止スタンドを備えているのも特徴

テレビ放送を見たい場合は、ひかりTV for docomoのアプリを必ず起動する必要がある。Android TVのメニューから選んでもいいし、またリモコンの「地デジ」「BS」ボタンを押せば、それらのチャンネルがダイレクトに立ち上がる。

ひかりTV for docomoアプリを利用中。映像視聴中にリモコンの方向キーなどを押すと、選局のメニューが表示された
番組表

「BS4K」についても専用のリモコンボタンがあるので、手軽に視聴できる。解像感はさすがの一言。特に自然の風景、都市遠景などは、普段見慣れたフルHDとは格段の違いを感じる。

放送波+専用アンテナ線ではなく、IPベースでの動画視聴となるため、使ってみるまでは動画の安定性、画質などには不安もあった。ただ約1週間試用した範囲では、決定的な破綻を感じるような場面はなかった。

BS4K放送は、さすがの美しさ

とはいえ傾向として、ひかりTV for docomoアプリを起動した直後は、ややビットレートが低いことはある模様。一度画質が安定すれば、あとは頻繁にチャンネルをザッピングしても画質の落ち込みを感じることは少ない。チャンネル切り替え時の待ち時間も、ごく一般的なテレビと同レベルだと感じた。

また、時間帯に応じた画質の“ぶれ”についても、それほど実感することがなかった。光ファイバー回線の場合、夜19時~24時くらいになると、混雑によって極度に通信速度が落ちるケースが多いが、我が家も例外ではない。当該時間帯ではスピードテストの結果が2~3Mbpsに落ち込むことがあった。個人的には「IPoE系の回線だからネットの混雑の影響を受けづらい」という特徴は、もはや過去の話だと考えている。

しかし、そうした時間帯にTT02でひかりTV for docomoのBS4K放送を視聴しても、画質が特段悪くなるような場面には遭遇しなかった。恐らくは、これがIPv6パススルー環境でサービスに接続することの恩恵なのだろう。

なお、TT02で視聴できるBS4KチャンネルはNHK BS4K、BS日テレ4K、BS朝日4K、BS-TBS 4K、BSテレ東4K、BSフジ4Kの6つのみ。いわゆる“右旋”系だけで、ザ・シネマ4K(有料)などは対象外となっている。今年12月にはWOWOWが4K放送をスタートさせるので、その頃までに拡張されるといいのだが、果たして……? (ちなみにJ SPORTSの4K放送はBSではなくCS)。

このほか、BS4K放送とは異なるが、「ひかりTVチャンネル4K」でも番組表ベースの4K放送が行なわれている。

【お詫びと訂正】記事初出時、“左旋系”と記載しておりましたが“右旋系”の誤りでした。お詫びして訂正します。(3月25日16時)

BS4K放送用の番組表もしっかりある。現在視聴できるチャンネルはNHKのほか、民放キー局系を合わせた合計6チャンネル

4K番組だって録画できる!

TT02では、市販のHDDをUSB接続すると、番組の録画も可能になる。2番組を同時録画し、さらにもう1番組を視聴できるので、スペック的にも十分だ。なおHDDは初回接続時にTT02専用にフォーマットし直すことになる。

録画用に1TB HDDを接続した。4K番組であればおよそ80時間程度録画できる

番組の録画予約は、番組表から行なうごく一般的な方式。連続ドラマなどを一度に予約するための繰り返し機能も備える。このあたり、特にクセもない。

番組表から番組詳細を表示。録画予約もここから行なう
録画設定画面。4K番組ももちろん録画できる

録画番組の再生もいたって普通。リモコンには早送り/巻戻しのほかに秒スキップボタン(データ放送用カラーボタンを転用)もあるのが嬉しい。ただ、プログレスバーを30分とか1時間の単位でゴソッと動かす操作がないため、2時間番組の最後の方を見たい時は不便だった。また最近のVODでは早送りや巻き戻しにあたってサムネイルを出してくれるケースもあるが、TT02における録画番組再生ではさすがにムリなようだ。

録画番組の一覧
録画番組を再生

なお3月9日には、ソニーが発売するPC向けの動画視聴アプリ「PC TV Plus」においてTT02への対応が発表された。これにより同一LAN内にあるTT02からPC TV Plusへ録画番組をダビングしたり、あるいは放送中のチャンネルをPC TV Plusからライブ視聴することができるという。

外出先からライブ視聴&録画番組再生OK。4K番組には非対応

最近のテレビ録画対応機器ではほぼ当たり前になりつつある「リモート視聴」にもTT02は対応している。TT02が接続されている同一ネットワーク内からスマホ・タブレットで視聴するのはもちろん、外出先からモバイル回線経由でも可能だ。

リモート視聴には「ドコモテレビターミナル」アプリ(iOS/Android対応)を用いる。初回はTT02とスマホを同一LANに接続し、アプリ側でペアリング設定を済ませる。かつてであれば、こうした設定の場面で原因不明のトラブルに見舞われることも多かったが、今回はそうしたこともなくカンタンに完了した。技術的成熟が進んだということなのだろう。

スマホアプリからリモート視聴のペアリング設定を行なう
設定状態はTT02の設定画面からも確認できる

外出先からの再生も実にスムーズだ。最終的には回線の速度・安定度に依存するのは間違いないが、少なくともスマホで一般的な5~6インチ前後のディスプレイで視聴するのに全く問題ないレベルが確保されていた。TT02が設置されていない自宅別室において、Wi-Fiで視聴するようなシチュエーションでも快適だろう。

リモート視聴は、原則的には、放送中番組のライブ視聴(リアルタイム視聴)、録画済み番組の再生どちらにも対応する。ただ例外はあり、特に4K番組には基本的に対応していないのは痛い。宅内・宅外を問わず、ライブ視聴・録画番組再生のどちらも、スマホからは視聴できないとみてよい。もちろん現在主流のスマホ画面のピクセル数を考えれば、4Kをフルに表示しきるのは困難ではあるが。

NHKをリモート視聴。下の方をよく見ると「宅外利用中」と表記されている
BS4K放送については、基本的にリアルタイム視聴できない。メニューから選べはするのだが。録画番組の再生も同様に不可

ただ、このあたりの警告メッセージの出し方は気になる。アプリ内で表示されるチャンネル一覧にBS4Kが並んでいるのに、いざタップすると「お使いの環境では、このコンテンツは視聴できません」と出るのみ。また4K番組が間違いなく録画されているのに、スマートフォンから録画一覧を見ると4K番組だけ非表示になっていたりもする。このあたりはアプリの作り込みで改善できる部分のはずなので、今後に期待したい。

4Kチューナー非搭載テレビ所有者や、アンテナ工事に悩む人にオススメ

以上、TT02の使用感について、ひかりTV for docomoを軸に紹介した。筆者の試用期間は1週間程度で、朝起きてTT02を起動してニュースを見、録画しておいたクイズ番組を昼休みに楽しみ、出かけ先ではリモート視聴を試すなどかなりガッツリ使い込んだつもりだが、率直に「イマドキのHDDレコーダーそのものだな」と感じた。DVDプレーヤーとしては使えないが、録画再生機能とともに、映像配信サービスを積極的に楽しみたい人には十分だろう。

チューナー&レコーダーとして確かに便利。ただ、あえてひかりTV for docomoに手を出さず、単純にAndroid TVとして使うのもアリ

恐らく最もフィットするユーザー層は、BS4Kチューナー非搭載の4Kテレビを購入した──4K放送スタート前の2018年前半くらいまでにテレビを新調した、あるいは“ジェネリック”などと呼ばれる完全チューナーレスな大画面格安テレビを買った方々ではないだろうか。特に後者は録画機能などが相当限られているため、ひかりTV for docomoがとにかく効果的なはずだ。ただ古めのテレビなどの場合は、HDCPなど著作権保護規格への対応確認もしておきたい。

TT02は、明るさをより豊かに表現できるHDR(ハイダイナミックレンジ)のHDR10やHLGに対応。さらに、アップデートでDolby Visionもサポートする。今回使ったパナソニックTH-43GX855など、これらのHDR方式をサポートするテレビと組み合わせて4K/HDR対応の動画サービスを視聴すれば、4K解像度だけでなく明るさの表現においてもTT02の特徴を活かせるのもポイントだ。

コスト面はどうだろうか。TT02の価格は17,424円。ひかりTV for docomoの月額料金は3,500円が基本。ドコモの携帯電話回線利用者は2年契約で月額2,500円のプランもある(更新月以外に解約する場合の違約金は3,500円)。その他、家の回線状況によっては、光ファイバーの利用料金なども多少考慮する必要がある。

ひかりTV for docomoでは、地デジ・BSや、BS4K以外に、「ザ・シネマ」、「日本映画専門チャンネル」、「アニマックス」、「日テレジータス」などCSでおなじみの専門チャンネルが見られる。

ひかりTV独自のVODサービスに加え、dTV(単独契約時の月額料金は500円)とdTVチャンネル(同780円)も基本料金だけで視聴できる。視聴可能コンテンツ数は極めて多い。

ひかりTV for docomoは1契約に対して1台のドコモテレビターミナルを割り当てる方式のため、一軒家において複数のテレビでBS4K放送を見たい場合には不向きだ。コンテンツ数・視聴台数・料金のバランスを鑑みて、チョイスすることになる。

一方で「どうしてもアンテナ工事ができないけど、BS4Kを見たい」なら、TT02はまず最初に検討すべき候補だろう。

冒頭でも少々触れたが「単純にAndroid TV端末が欲しい」という人にもオススメしたい。4K対応で、YouTubeが見られ、Chromecastとしても運用できる。価格こそ1万円台後半だが、有線LAN端子は付いているし、リモコンはキー数が多いので一覧性が高く、マイクも内蔵する。決して最安とは言えないが、ドコモブランドの安心感があるのもまた事実だ。

昨今は新型コロナウイルス(COVID-19)の影響もあって、自宅で余暇を過ごしたい人も多いかもしれない。とても諸手を挙げて歓迎できる状況ではないとはいえ、映像視聴、特に定額制のものは「超・高コストパフォーマンスで、かつ自宅で楽しめるレジャー」ではある。生活と経済のバランスをとりつつ、TT02のような端末を上手に活用するのも良い選択といえそうだ。

森田秀一

1976年埼玉県生まれ。学生時代から趣味でパソコンに親しむ。大学卒業後の1999年に文具メーカーへ就職。営業職を経験した後、インプレスのWebニュースサイトで記者職に従事した。2003年ごろからフリーランスライターとしての活動を本格化。主に「INTERNET Watch」「AV Watch」「ケータイ Watch」で、ネット、動画配信、携帯電話などの取材レポートを執筆する。近著は「動画配信ビジネス調査報告書 2017」「ウェアラブルビジネス調査報告書 2016」(インプレス総合研究所)。