レビュー
驚異の2,970円、でも実力派!? 激安TWS「SHO-U D1」を聴く
2023年2月2日 08:00
「イヤフォン」と言えば「完全ワイヤレスイヤフォン」を連想する人が多くなっている昨今。多様な製品が登場し、マニア向けの3万円、4万円、5万円といった高級機が登場する一方で、驚くほど低価格なモデルも登場。5,000円以下は当たり前、3,000円以下、凄いところでは1,000円以下の製品も存在する。ここまでくると、本当に利益が出ているのか心配になるほどだ。
製品数も膨大で、混沌としている“激安TWS市場”。TWS入門としては気軽に買えるので、「1個買ってみようかな」と思う人も多いかもしれないが、これだけ数があるとどれを選んでいいかわからない。そんな中、ちょっと気になる製品が登場した。「SHO-U」(ショー・ユー)ブランドのTWS「SHO-U D1」というモデルだ。価格はなんと2,970円。
SHO-Uというブランド自体は初耳だ。それもそのはず、手掛けているのは、あの高級オーディオブランドのAstell&Kernなどを扱っているPC/オーディオ総合代理店であるアユートであり、アユートのオリジナルブランドが「SHO-U」だという。これが低価格でも注目の理由だ。
TWS「SHO-U D1」
ブランド第一弾のTWS「SHO-U D1」のスペックを見ていこう。8mm径のダイナミックドライバーを搭載しており、ハウジングは非常にコンパクト。小さいので、いろいろな人の耳にフィットしそうだ。
小さいだけでなく、片側約3.4gと軽量なのも特徴。TWSは落下が怖いという人もいるが、軽量だと、イヤフォンの自重で耳から抜け落ちにくいという利点がある。また、長時間装着してもストレスが少ないというのもポイントだろう。
低価格なTWSは、ブラックのみの製品も多いが、SHO-U D1はブラック、ミントと、2色のカラーバリエーションがある。イヤーピースはS/M/Lの3サイズ。ブラックモデルのイヤーピースは当然黒だが、凄いのはミントモデルのイヤーピースが、ちゃんと本体と同じミントカラーな事。激安TWSとして、こういう細かなところにもこだわっているのはエライ。
3,000円を切るモデルだが、Bluetooth 5.2に準拠。プロファイルはHSP、HFP、A2DP、AVRCPをサポート。コーデックはSBCに加え、AACにも対応しているのも立派だ。IPX4相当の生活防水にも対応している。
バッテリーの持続時間は、イヤフォン本体で約4時間、充電ケース併用で最大12時間と、より高価なTWSと比較してもスペック面は充実している。こんなスペックのTWSが、3,000円以下で買えるというのは恐ろしい時代になったものだ。
マイクも搭載しているので、通話にも使える。片耳だけスマホと接続する事もできるので、リモートワーク中に片耳で使うといったスタイルも可能だ。
音を聴いてみる
耳穴にフィットしたサイズのイヤーピースを選び、装着してみると、筐体がコンパクトなので装着しやすい。大きなTWSだと、“耳穴手前の空間にミッチリ物体が詰まっている”感覚に襲われるものだが、このくらい筐体が小さいと、さほど圧迫感を感じない。前述のように片側約3.4gと軽量なのも手伝い、気軽に使える印象だ。
パッケージから出した直後は、やや“モコモコ”っとした音だったが、時折充電を交えながら2日ほど鳴らし続けていると、いい感じに音がクリアになり、落ち着いてきた。
2,970円という価格と、8mm径のユニットという事で、正直あまり期待していなかったのだが、音を出してみると驚く。まずビックリしたのは低音の“重さ”だ。「藤田恵美/camomile Best Audio」の「Best OF My Love」を再生し、1分過ぎからのアコースティックベースが「ズゴーン」と地鳴りのように沈む。
ぶっちゃけ、低価格なイヤフォンの低音は、“低音っぽく聴こえる膨らませた中低域”である事が多く、悪く言うと「ブオンブオン」と膨張して、音楽全体が不明瞭でこもった音になる事が多い。
しかし、SHO-U D1の低域はしっかり芯がある。“なんちゃって低音”ではなく、「ズン」という重さが感じられる低音なのだ。これは正直驚いた。8mmというユニットサイズや、小型筐体から想像できない迫力のあるサウンドだ。
「Vaundy/恋風邪にのせて」を聴くと、ベースラインやVaundyのセクシーな声の低音部分がグッと迫ってくる。低域の響きも豊かなので、スカスカした安っぽい音になっていないのもポイントが高い。
また、これだけ低域がパワフルだと、中高域がそれに負けてしまう事がよくあるが、SHO-U D1ではドライバー駆動のレスポンスが良いため、中高域が低域に埋もれず、明瞭さが維持されている。なかなか良く出来たTWSだ。
確かに、数万円する高級TWSと比べると、音場がやや狭く、音が中央に集まりがちで、もう少し広がりが欲しい。低域に重さがあるのは良いが、その低音が生み出す響きがやや多めなので、そこをもう少し締めてタイトにしてくれると、重い低域の描写がより鮮明に聴こえるようになるのに……といったような、細かな注文をつけたくなる。
だが、「でもこれって2,970円だよな」と思い出すと、注文をつけるより、「この値段でこの音が出せれば十分では」という気持ちになる。細かい事を考えず、気軽に購入できる価格で、迫力のある美味しい音で音楽や映画が楽しめるTWSとしては、これはこれで“アリ”だ。例えば中高生が買う最初のTWSにも良いだろうし、既に有線イヤフォンを楽しんでいるポータブルオーディオファンのサブ機にも使える、意外にも本格的なTWSだ。
音質以外では、充電ケースのサイズが小さいところも良い。このサイズだと、ズボンのポケットだけでなく、ワイシャツの胸ポケットや、ジャケットの内ポケットにも入れやすい。前述のようにイヤフォン本体も小さいので、フィッティングも良く、遮音性も良好。耳が小さめな女性にも使いやすいだろう。
また、2,970円という価格が生む“気軽さ”も実感する。どんなに気をつけていても、TWSは小さいので床に落ちてしまったり、充電ケースも小さいので「あれ? どこに仕舞ったっけ?」と迷子になる事がある。
これが数万円のTWSだと、洒落にならないので「え、ひょっとして無くした!?」と、引き出しや上着のポケットを慌てて探し回る事になるのだが、この価格だと「まあ慌てなくてもいいかな」という精神的な余裕が生まれる。「安いから粗末に扱っていい」という話ではないのだが、高価なTWSだと、落としただけで精神的ダメージが大きいので、屋外で使う製品の場合“気軽に買い直せる価格である事”も、魅力の1つだと感じた。
実はTWS以外にも製品がある
実はSHO-Uブランドの第一弾製品はイヤフォンだけではない。
USB充電器として、最大33W充電ができる「SHO-U33」(1,980円)、最大65Wの「SHO-U65」(3,960円)、さらにワイヤレス充電にも対応する5,000mAhのモバイルバッテリー「SHO-U PH2」(3,960円)もラインナップしている。
要するにSHO-Uは、ポータブルオーディオに限らず“スマホなどと組み合わせて使うと便利な製品”を集めた、トータルブランドというわけだ。
USB充電器のSHO-U33とSHO-U65は、どちらもエネルギー効率の優れる話題の化合物半導体GaN(窒化ガリウム)を採用しているので、高出力だが小型・軽量。ポートは、USB Power Delivery 3.0対応のUSB-Cポートと、Quick Charge 3.0/2.0対応USB-Aポートを用意。スマホやタブレットなどを充電できる。
より小さなSHO-U33は、2ポート同時使用の場合、合計20W出力であるため、スマホ2台同時充電はできるが、スマホとノートPCの同時充電はできない。SHO-U65は合計63W出力なので、その範囲で収まれば、スマホやノートPCの同時充電も可能だ。選び方としては、ノートPCの充電をするかどうかで決めても良いだろう。
なお、SHO-U65の電源プラグは折り畳めるので、例えば出張などに持っていく時も便利だ。
今回は、Astell&KernのDAP「A&ultima SP3000」をSHO-U65で充電してみた。SP3000の再生時間は約10時間(FLAC/44.1KHz/16bit/Vol.80/LCD Off時)だが、1日使ってバッテリー残量が65%の状態から、SHO-U65を使って充電開始。ちょうど1時間で99%まで充電できた。このスピードであれば、朝起きて「あ、DAP充電してなかった」という時でも、朝食や出かける支度をしているあいだに十分に充電できるだろう。
モバイルバッテリーの「SHO-U PH2」は、5,000mAhと大容量だが、薄さ10mmとコンパクトなのが特徴。さらに、上に乗せた対応スマホなどをワイヤレスで充電できるのも特徴。マグネットも搭載しているので、対応スマホであれば吸い付くようにピタッと固定され、そのまま充電できる。出先でいちいちケーブルを出して……とやらなくて良いのは便利だ。スマホのケースに貼り付けることで磁力の効果を高める、薄型の金属製リング「ユニバーサルリング」も同梱している。
スマホへのワイヤレス充電は最大15W。また、USB-Cコネクタも備えており、そこに付属のUSB-Cケーブルを接続して使えば、USB Power DeliveryやQuick Chargeでの最大20W出力でのデバイス充電も可能。気軽に充電する時はワイヤレスで、素早く充電したい時は有線でと使い分けができる。
便利なのは、背面にスタンド用のリングを備えている事。傾斜をつけた状態でバッテリーを固定でき、そこにスマホを設置できる。要するに、ワイヤレスモバイルバッテリー兼スマホスタンドとして使えるわけだ。旅先のホテルや、移動中の新幹線の中などでも重宝するだろう。側面にLEDのインジケーターを備えているので、バッテリー残量の確認も可能だ。
また、最近話題の“スティック型USB DACアンプ”をスマホと接続して使う場合も、SHO-U PH2は便利だ。DACアンプをスマホのUSB-C端子に接続すると、多くの機種がUSBバスパワーで動作するため、スマホの内蔵バッテリーを消費してしまう。スマホの充電をしたいが、USB端子はUSB DACアンプで使われている……そんな時でも、ワイヤレス充電であれば、バッテリーの心配をせずに、スマホ + USB DACアンプで、ポータブルオーディオを楽しめるというわけだ。
コスパの良さが光るSHO-U
「とりあえずTWSを使ってみたい」という人も、手に取りやすい2,970円のSHO-U D1は、TWS入門にピッタリだろう。音質もさることながら、ケーブルから解き放たれる開放感は、一度味わうと有線には戻れない便利さがある。
それにしても、この価格でちゃんとしたTWSが買えるというのは、消費者にとっては良い時代になったものだ。
他のUSB充電器やモバイルバッテリーも、TWSに負けず劣らずリーズナブルな価格だが、トレンドの機能はしっかり盛り込んでおり、特にワイヤレスモバイルバッテリーのSHO-U PH2は機能も豊富で満足度が高い。TWSも含め、SHO-Uはコストパフォーマンスの面で、注目のブランドと言えるだろう。
(協力:アユート)